朝鮮中央通信が報じた正恩氏(手前中央)の国立演劇劇場視察のもよう=(聯合ニュース)
朝鮮中央通信が報じた正恩氏(手前中央)の国立演劇劇場視察のもよう=(聯合ニュース)
【ソウル11日聯合ニュース】金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者に三男の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長が決まったが、北朝鮮メディアは金総書記の公開活動を伝える際、正恩氏の名をたびたび外しており、その意図が注目される。
 朝鮮中央通信は最近、金総書記の国立演劇劇場現地指導(9日午前0時16分報道)、大規模マスゲームと芸術公演「アリラン」観覧(10日午前3時11分)、周永康・中国共産党政治局常務委員との会談(同午後12時50分)を報じた。いずれも正恩氏が同席していたが、報じられた随行者や同席者リストに名前はなかった。
 ただ中央通信は9日午後9時ごろ、正恩氏が国立演劇劇場の視察で随行者らと撮影した写真を配信した。朝鮮中央テレビは同日午後5時ごろ、正恩氏随行の事実には言及せず、写真だけを報じた。労働新聞は9日付紙面1面に同写真を掲載している。
 「アリラン」観覧に関しては、中央通信の報道から約3時間後、北朝鮮内向けのラジオ放送、朝鮮中央放送が、随行者リストに正恩氏の名前を入れ報道した。
 金総書記と周常務委員との会談に関する報道は、その「意図」がより推測し難い。この会談が正恩氏の初の外交舞台だったが、まず報道した中央通信は、会談に同席し周常務委員と握手も交わした正恩氏に一切言及していない。正恩氏同席の事実は、中国国営新華社通信と中国国営放送の中国中央電視台(CCTV)を通じ、外部に伝えられた。
 北朝鮮メディアのこうした報道の形に注目する専門家は多い。具体的な意図はわからないが、北朝鮮特有の政治的伏線が張られているとの見方が支配的だ。
 まず、27歳と年若い正恩氏が、権力闘争を勝ち抜いてきたエリート層を短期間で掌握するためには、金総書記について行動するばかりのイメージを取り払う必要があるとの分析だ。
 朝鮮中央テレビが9日に配信した、正恩氏の国立演劇劇場訪問の写真には金総書記の姿がなく、正恩氏1人がほかの随行者と写っている。対北朝鮮専門家は、「父親の懐から離れた独自の指導力を持つ後継者というイメージづくりを狙ったとみることができる」と指摘する。金総書記に随行してはいるが、単独でも現地指導が可能だと間接的に示す政治的宣伝術の1つだとの説明だ。
 一部では、認知度の低い正恩氏を国内外により迅速にアピールするための「一種のサプライズショー」だとの分析も出ている。金総書記の活動には毎回正恩氏が登場するとの認識を崩し、常に正恩氏の周囲に外部の視線を集めようという意図だとの説だ。東国大学北朝鮮学科の金榕ヒョン(キム・ヨンヒョン)教授は「正恩氏に注目が集まるなか、随行者リストに名前がないと思えば後から写真が出てくれば関心はさらに高まる。後継者決定に速度をつけるうえで、より劇的な効果が必要だったのかも」との見方を示した。
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