<W解説>「偏向報道」との批判が絶えない韓国のジャーナリストが世論調査会社設立=公正な調査は行えるか(画像提供:wowkorea)
<W解説>「偏向報道」との批判が絶えない韓国のジャーナリストが世論調査会社設立=公正な調査は行えるか(画像提供:wowkorea)
韓国で、偏向報道をしているとして度々物議を醸してきた人気ラジオ番組の司会者で、ジャーナリストのキム・オジュン(金於俊)氏が世論調査会社を設立したことがわかり、またしても議論を呼んでいる。韓国では世論調査が多数存在し、調査も頻繁に行われる。中には回答者に先入観を与えかねない質問設定で調査している会社もあり、民意を探るはずの調査が、民意をゆがめているとの批判もある。そうした中で、偏向報道論争が絶えない金氏が世論調査を設立したことで、世論調査の信頼性がさらに低下しかねないと危惧する声が上がっている。

タンジ の最新ニュースまとめ

金氏は南東部キョンサンナムド(慶尚南道)チネ市(現・チャンウォン市チネ区)出身の53歳。1998年にインターネットメディアの「タンジ日報」を開設し、ネットにおける政治論客として名をはせた。タンジ日報は大手メディアの問題点を指摘して注目を集め、資産価値は一時、800億ウォン(約75億円)にまで達した。

2016年9月から続く交通放送(TBS)のラジオ番組「キム・オジュンのニュース工場」で番組開始時から司会を務めている。金氏の刺激的で扇動的な発言により、従来にはない時事番組として人気を集めている。先月、時事週刊誌「時事IN」が発表した「2022年大韓民国信頼度調査」で「最も信頼できる番組」に選ばれた。同番組への信頼度は8.5%で、公共放送KBSの「ニュース9」(4.1%)やSBSの「それが知りたい」(2.6%)を上回った。また、金氏は「一番信頼できるジャーナリスト」で2位(5.7%)にランクインした。

しかし、「キム・オジュンのニュース工場」は司会を務める金氏の発言をめぐって偏向性が度々指摘されてきた。先の大統領選では、昨年10月、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、現野党「共に民主党」の候補だったイ・ジェミョン(李在明)氏の名を挙げ、「李在明は一人でここまで来た人物だ。今こそ、あなたたちがちょっと助けてやるべきだ」と発言。李氏の支持を呼び掛けた。

これに、韓国の選挙放送審議委員会は今年3月、大統領選挙期間中に特定候補の支持を表明した司会者にラジオ番組の進行を任せたとして、「キム・オジュンのニュース工場」を放送するTBSに対し、法定制裁の「警告」を議決した。

また、昨年10月には、日本で新型コロナウイルスの感染者が大幅に減少したことについて、自民党政権が月末に行われる衆院選で勝利するためPCR検査数を減らし感染者数を抑制しているとの持論を展開した。さらに金氏は「1か月で感染者が10分の1になるなんてことはない。そんなやり方があれば世界はとっくにコロナを撃退している。政府が詐欺行為を働いてはいけない」とも発言した。

ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領夫妻に対しても度々苦言を呈している。今年5月、尹大統領とキム・ゴンヒ(金建希)夫人が大統領執務室などで過ごす様子を撮影した写真が金夫人のファンクラブを通じて公開され、物議を醸した際には「大統領執務室に夫人が行って写真を撮るのは公私の区別ができていない。写真がファンクラブを通じて公開されるということは、大統領秘書室が機能していないということだ」と懸念を示した。

その金氏は、このほど世論調査会社を設立し、韓国選挙管理委員会傘下の中央選挙世論調査審議委員会に登録したことが分かった。韓国紙の朝鮮日報が伝えた。金氏は自身のユーチューブチャンネルで「(大統領選挙中に)世論調査でガスライティング(偽情報を信じさせるなどして被害者を追い詰める行為)があった。それが選挙に多大な影響を及ぼした。だからメディアや政党などの依頼を受けずに独自調査だけで毎週企画調査を行い、定期リポートを会員に送る」と話した。

しかし、偏向報道論争が絶えなかった金氏が選挙世論調査を設立したことには批判も出ている。時事評論家のユ・チャンソン氏は「特定党派を支持する会社の実施する世論調査が信頼できるか疑問だ」と懸念を示した。また、朝鮮日報は18日付の社説で「世論調査にかこつけた世論操作と民心わい曲は一層ひどくなりそうだ」指摘した。

Copyrights(C)wowkorea.jp 5