「かぞくのくに」は、病気治療のために25年ぶりに北朝鮮から一時帰国した兄ソンホ(井浦新)と、彼を迎える妹リエ(安藤サクラ)ら家族の姿を通し、価値観の違いと変わらぬ家族の絆を綴っていく人間ドラマ。ドキュメンタリー「ディア・ピョンヤン」(06)「愛しきソナ」(09)のヤン・ヨンヒ監督の実体験をもとに描いた自身初のフィクション映画である。
この日主演の2人は、公開初日以来のテアトル新宿での登壇となった。映画を見終わったばかりの満員の客席からはたくさんの手が挙がり、「いい映画をありがとうございます」と涙ながらの感想や質問が続いた。主人公リエを演じた安藤サクラは「演じていると、脚本を読んだ時には想像もできなかったような感情が沸き起こってくるシーンがたくさんある現場でした。演じながら兄妹の関係を探っていった感じです」と感慨深く語った。
在日コリアンの家族、北朝鮮への帰国事業を背景に描かれた本作で、北朝鮮から一時帰国する兄ソンホを演じた井浦新は、「撮影に入ったとき、最初に監督に確認したのは『この映画は家族の映画ですよね』ということでした。まず家族があって、その先に不条理とか自由の問題がある。映画の中の家族については、安藤さんとの演技を重ねるうちにどんどん化学反応が起きて、関係性が作られていったと思います」と撮影期間を振り返った。
この日が初めての登壇となる兄ソンホの同級生チョリ役を演じた省吾は、「僕が出演した、同窓会のシーンは役者さんたちが意見を出し合って作っていくようなシーンだったんですが、僕が演じる少し悲しい明るさを持つチョリの空回りに、役者さんたちがうまく反応してくださった。ただただ感謝しています」と語った。
前2作のドキュメンタリーに続き、自身の家族の物語を描いたヤン・ヨンヒ監督は「脚本を書いている間は、正直自分の当時の感情を思い出すのが難しかった。それが撮影が始まって、2人の演技を見ていると、どんどん当時の感情がよみがえってきて…。脚本にない感情まで演じていて、それが本当に、当時心の奥にあった感情だったので、つい涙が出てしまって。井浦さんに慰めてもらったりも(笑)」と語った。
「撮影から1年くらい経っていて、こういう舞台あいさつで会うと大抵人見知りしちゃうのですが、なぜかこの作品のメンバーとは久しぶりに会ってもすごく居心地がいいんです」という安藤サクラの言葉どおり、リラックスした雰囲気で話が尽きない4人のトークは、観客からラストシーンの演技についての質問を受け「ラストシーンは何度も何度もリハーサルをして作りこんだのに、結局全く計算外の展開になったんです。僕にとってもすごく思い入れの深いシーン」と語る井浦に、「監督はいつもこの作品は自分の思いを吐き出したものだって言うんですけど、別れのシーンはもっとなんていうか…『生まれた!! 』って感じだったんですよね」と返した安藤サクラの必死の説明に会場は笑いに包まれ、終始盛り上がりながらの幕となった。
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