シャープがサムソンに遅れを取らざるを得なかった理由とは=韓国報道(画像提供:wowkorea)
シャープがサムソンに遅れを取らざるを得なかった理由とは=韓国報道(画像提供:wowkorea)
日本の電子メーカー・シャープが2000年代以降、韓国のサムスン電子との競争で遅れを取るようになった理由は△コスト削減、△技術の流出防止、△ライバル会社の動向確認、△職員の処遇などが不足したためだという診断が出た。

 日本経済新聞は2日(きょう)、2000年代後半にシャープからサムスンに転職したと推定されるエンジニアの竹内薫氏の投稿を引用し、さまざまな側面からシャープがサムスンに遅れを取らざるを得ない理由を調べた。

 転職後、サムスンで首席エンジニア(日本での部長レベル)として働いたと自身を紹介した竹内氏は「サムスンがなぜ強いのか、直接入ってみなければ分からないという考えから転職した」とし、「サムスンは技術に対する関心がはるかに高く、重要だと考えていた。技術者に対する処遇も日本の企業とは天と地の差だった」と回想した。

◇サムスン、徹底した内部セキュリティ・ライバル企業の動向を常に把握
 竹内氏はサムスンでの第一歩を踏み出した後、最も驚いた点は徹底したセキュリティだと説明した。すべてのコンピューターを社外に持ち出せないだけでなく、紙にも金属片が入っていてコピー機が該当の金属を感知できなければコピーさえできなかったという。同じ理由から、書類を社外に持ち出そうと試みると、センサーが金属を感知して警報器が鳴るようになっていたと付け加えた。

 また、職員のスマートフォンには専用のアプリケーションを設置してカメラが作動しないようにし、書類を放置すると警告を受けたと説明した。セキュリティ担当の職員によって随時点検が行われたとも話した。

 竹内氏は逆に、日本の技術は退社者などを通して1990年代から韓国に流出していたと推定した。サムスンとシャープは三重県亀山市にシャープ亀山工場が建設される前から技術交流をしていたが、竹内氏がシャープに在職していた時期にサムスンに出張に行くと、会社(シャープ)の上司が現場でサムスンの職員にさまざまな指導をしているのを目撃したというのだ。また、日本有数の企業出身の技術者もサムスンでよく会ったという。

 竹内氏はライバルの動向を注視していることもサムスンの強みとして挙げた。シャープが根拠もなく“世界一”と主張したのとは異なり、サムスンはライバル企業を徹底的にリサーチしていたということだ。竹内氏は「最大のライバル企業はもちろんLGであり、台湾のイノラックスやAUOなどがリストに含まれていたが、日本企業は1社もなかった」と伝えた。

◇コストを削減し、採用やR&Dは惜しまず
 シャープの液晶パネルがサムスンの製品に後れを取るようになった主な原因の一つとして、高い原価が挙げられた。偏光板、回路材料などの調達費には大きな差がなかったが、材料費などの変動費がシャープが10ドルほど高く、人件費や設備関連費用などの固定費はシャープがサムスンよりも何と2倍近く高かったという指摘だ。これを受け、サムスンはシャープの60~80%の原価でパネルを生産することができたと竹内氏は説明した。

 竹内氏は当時、シャープのある幹部が自社の液晶パネルを「世界で最も競争力がある」と言及したことを思い浮かべ、「これは完全な妄想であり、シャープの液晶パネルは生産費用が高くて収益が出なかった」と批判した。

 パネル生産に投入された人員の規模でも、サムスンとシャープは大きな差を見せた。竹内氏は「サムソンはディスプレーの職員だけでも2万5000人以上であるのに対し、シャープは全国の全ての工場の職員を合わせても5500人水準に過ぎない」と皮肉った。ただ、サムスンの工場労働者の大半が20代女性で、(20代女性の女性を働かせるのは)人件費削減のためという印象を強く受けたという。

 竹内氏はまた、サムスンは研究開発(R&D)だけで2000人近くの人材を投入しており、現場、先行開発、研究所などでそれぞれ1年後、2年後のテーマを追っていたという。液晶の次に備えて有機発光ダイオード(OLED)の開発に着手したり、各部門の要素技術をまとめて一つの商品またはサービスを構成する対応も活発に行われていたということだ。

◇成果主義・社内福祉・積極的な海外人材の誘致などで競争力↑
 竹内氏はその他にも成果中心の企業文化と高水準の社内福祉がサムスンの競争力を高めていると評価した。

 竹内氏は「絶対的成果主義で、役員になれば待遇自体が変わる。車両支援に年俸3000万~4000万円(約2億8900万~3億8500万ウォン)、最上位クラスの場合には億(円)単位の年俸を受け取る。成果を出した人には成果相応のインセンティブもあるので、必死に働く。ただし、成果を上げられなければ『明日から出勤しなくていい』という話を聞く」と説明した。

 竹内氏はまた、「職員はサムソングループ系列のデパートとホテルなどで割引を受けることができ、子供の教育費も大学まで会社が支援する。役員は退職後2年間の所得も保障してくれるが、これは退職後に他社に転職して技術が流出することを防ぐための側面もあると思う」と付け加えた。

 海外技術者に門戸が開かれているのもサムスンの競争力強化に寄与しているという診断だ。サムスンが学費を負担して海外人材が大学の付属語学学校で2か月間韓国語を確実に学べるよう支援し、10人ごとに1人ずつメンターがついて韓国生活に定着できるように便宜を図っているということだ。

 ただ、竹内氏は「今は中国が韓国の人材を抜いている。中国最大のディスプレイ会社であるBOEにはLG出身が、CSOT(華星光電)にはサムスン出身が多い」として、「中国企業で開発を主導している人物が韓国人である事例は珍しくない」と話した。続けて、「韓国政府も日本と同じように技術流出を防ぐために努力しているが、効果は疑わしい」と付け加えた。
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