安倍元首相が自民党内部ではもちろん、日本政界全般で莫大な影響力を行使してきただけに、選挙後も政界内で多くの変化が予想される。特に、彼が一生の課題として推進してきた憲法改正がどうなるのか、また岸田文夫首相が安倍元首相の影から脱することができるのかなどに関心が集まっている。
安倍元首相は8日午前11時30分頃、奈良市で参議院選挙の遊説をしている途中、背後から2発の銃撃を受け、血を流して倒れた。その後、すぐに病院に搬送されて治療を受けたが、出血多量により午後5時3分に死亡した。
安倍元首相の死亡を機に、自民党が今回の参議院選挙でより多くの有権者から同情票を引き出すだろうという分析されている。1980年5月、大平正芳首相が衆参議員選挙を控え、遊説中に急性不整脈で死亡した際、分党の危機にあった自民党が予想を破り圧勝を収めた前例がある。
日本で高位政治家が銃撃されることは歴史的に見ても非常に珍しいことであり、日本国民が受けた衝撃は非常に大きい。このような衝撃は、完全に同情世論に変わるものと予想される。安倍元首相が死亡する前に、すでに彼のインスタグラムアカウントには回復を望むコメントが数千件書き込まれた。現在は数多くの哀悼のコメントが続いている。
安倍元首相が属している自民党はもちろん、公明党、日本維新の会、国民民主党などの主要政党は同日、安倍元首相銃撃のニュースが伝えられた後、すべての選挙遊説活動を中断した状態だ。選挙日程調整の可能性も議論されているが、事前投票は開始されたため延期は難しいものと見られる。岸田首相は「まだ決まっていない」と述べた。
日本が世界的にも銃器法が非常に厳格な国家の一つであることを勘案すれば、今回の銃撃テロは安保上の弱点が露出した事件として記憶されるだろう。これに対する問題意識が、選挙や今後の政界にどのように反映されるかは予測が容易ではない。
まず与野党が「民主主義に対する挑戦であり威嚇」「許せないテロ」と声を合わせており、政界全般で保守化傾向が現れる可能性があるという分析が出ている。日本政界内の強硬派がさらに勢力を伸ばす可能性があるという話だ。中国社会科学院日本研究所総合戦略室の魯肇（ルー・ジャオ）副所長は、グローバルタイムズに「日本の右翼勢力を刺激する恐れがある。 極端主義的な政治的雰囲気が造成され、日本の民族主義がさらに強化されうる」と見通した。
逆に自民党内の「安倍派」が求心点を失い、岸田首相の立場がより強固になるという声もある。安倍元首相に代わる適当な後任者がいないためだ。過去、安倍元首相のように強力な政治的影響力を持っていた田中角栄元首相が1985年に脳梗塞で倒れた時、当時自民党最大派閥だった「田中派」は後継者がおらず分裂した。
岸田首相が安倍元首相の影から抜け出すことになれば、自民党の色もより穏健保守の方に傾く可能性がある。この場合、日韓関係をはじめとする対外関係にも大きな変化が予想される。実例として岸田首相は今年初め、韓国が強く反対した佐渡鉱山のユネスコ世界文化遺産登録推薦を保留しようとしたが、安倍元首相の圧力により推薦に急旋回した。
一部では今回の事件が長期景気低迷と両極化などで根強く定着していた極端主義が水面上に現れた結果だという診断と共に、政界分裂がより一層深化する恐れがあるという意見も出ている。中国の南蛮王は専門家の話として「表面的には自民党が安定的な政権を維持しているように見えるが、実状はそうではない」と指摘した。
安倍元首相が生涯を懸けてきた改憲については、速度が上がる可能性があるという見方が出ている。安倍元首相は平和憲法を改正して自衛隊の存在根拠を明記し、日本を「戦争可能な国家」にする案を生涯の課題として推進してきた。
今回の参議院選挙は、改憲発議が可能な3分の2議席数を安定的に確保できるかを分ける性格が濃かった。同日、安倍元首相が遊説に出たのも、改憲広報のために直接乗り出した側面が強い。これに対し、彼の遺志を受け継ぐべきだという世論が力を得る可能性は高い。自民党が参議院選挙の圧勝で弾みをつけ、改憲まで推し進めることができる。
ただ、これも岸田首相が立場を強化する方向の雰囲気となれば、話は変わってくる。安倍元首相とその軍国主義理念が盛り込まれた軍事・安保政策に対する日本内部の評価は常に分かれてきたためだ。反安倍世論は常に存在している。
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