アベノミクス、安倍元首相の死亡と共に消えるのか=韓国報道(画像提供:wowkorea)
アベノミクス、安倍元首相の死亡と共に消えるのか=韓国報道(画像提供:wowkorea)
故安倍晋三元首相が生前に繰り広げた「アベノミクス」の結果は大きく2つに要約される。円安と株価上昇だ。しかし、8日、安倍元首相が銃撃を受けて死亡し、正反対の状況が起きた。一時的ではあったが円高が進み、取引序盤に上昇していた証券市場も上げ幅が縮小した。

 安倍元首相の銃撃ニュースが伝えられた8日午前11時40分、135円90銭だった対ドル円相場は急騰し始めた。同日午後1時には1ドル=136.39円まで進んだ円安ドル高は135円97銭へと下落した。安全資産である円に需要が集中したものと分析される。

 株式市場もこの日は上昇でスタートし、午前中に一時1.48%まで急騰した。しかし、安倍元首相の銃撃を受けたというニュースが伝えられると直ちに上昇分が返上され、前日より0.10%上がった2万6517.19で取引を終えた。

◇退任後も続いたアベノミクスの陰
 内閣総理大臣に2度選出され合計8年9か月という歴代最長の在任日数を記録した安倍元首相が死亡し、安倍元首相の遺産であるアベノミクスも終止符を打つことになるのかが注目されている。「いつの政策の話なのか」とも言えるが、2020年に健康上の理由で首相の座を退いたにもかかわらず、安倍元首相の政策は続いた。安倍元首相は自民党内の最大派閥の首長であるだけに、水面下で影響力を行使していたからだ。

 安倍首相は2012年の総選挙を控えて「経済を立て直すためには金をまかなければならない」と述べ、アベノミクスを掲げた。アベノミクスは日本銀行が通貨を発行し、政府も財政を供給すれば(経済)成長がついてくるという“3つの矢”を主軸とする。

 2008年のグローバル金融危機に2011年の東日本大震災まで重なったことで低迷した景気は、アベノミクスの施行後、2012年11月に底をついた日本経済が2018年10月にピークを記録するまで71か月連続で上昇を記録したことで、日本経済はようやく余裕を持ち直した。

 アベノミクスを陣頭指揮した日本銀行の黒田東彦総裁も安倍元首相の意向を引き継いだ。黒田総裁は2013年の総裁任命以後、2017年にもアベノミクスに対する寄与を認められて留任された経緯がある。黒田総裁は安倍元首相が健康上の理由で2020年に首相職を辞任した後、菅義偉元首相、岸田文雄現首相へと政権が2度変わる際にも金融緩和基調に固執した。

◇総裁交代・選挙結果によって“脱アベノミクス”となるか
 そんな黒田総裁の退任が来年4月に控えているという点も、アベノミクスの終了を予告する意見の後押ししている。資金を供給すれば成長は後を追うと主張してきた安倍元首相とは違なり、岸田首相は成長と分配の好循環を強調している。所得再分配に力を注ぎ、資本利益に対しては税金を上げて財政健全性も確保しなければならないという立場だ。岸田首相が来年の黒田総裁退任後には自身と経済運営哲学を共にする人物を日本銀行の総裁として任命するのではないかということだ。

 実際、黒田総裁の後任として取り上げられている人々は“黒田総裁よりはハト派的ではない”という評価だ。黒田総裁を補佐した日本銀行の雨宮正佳副総裁と中曽宏元副総裁が次期総裁候補にいる。特に中曽元副総裁の場合、今年5月に出版した著書で、日本銀行が2%インフレ目標を維持しなければならないかについて、これといった回答を出さなかった。このため、中曽元副総裁が日本銀行の新総裁に就任する場合、黒田総裁との決別を検討することもありうるという観測も出ている。

 10日の参議院選挙の結果によっても、アベノミクスに終止符が打たれる可能性がある。バークレイズ・キャピタル証券の山川哲史氏は「自民党が単独で過半数議席を確保すれば、アベノミクスで円安政策を堅持しなければならないという圧迫感が減少する可能性がある」と展望した。グローバル原材料価格上昇により日本でも10年ぶりにインフレ懸念が大きくなっているうえに、アベノミクスと線を引こうとする岸田首相が率いる現政権に対する信任と解釈されるためだ。

◇アベノミクスに終止符を打とうとすると…日本銀行の債務超過負担
 ただ、今すぐアベノミクスの陰から抜け出すことは容易ではなさそうだ。日本銀行の次期総裁は“毒入り聖杯”と見なされる雰囲気だ。2013年から10年近く続いた金融緩和策から適切に手を引くべきだが、日本銀行に莫大な負担になりかねないからだ。

 まず、金利を上げれば日本銀行は債務超過に陥る危険が大きい。今も日本銀行は長期金利を抑えるために10年物国債を買い入れている。今年6月の1か月間だけでも16兆2038億円分の国債を買い入れ、これは月間基準で史上最高値を記録した。

 問題は昨年上半期には平均0.226%の金利で国債を多く買い入れたが、3月末には0.25%の金利で買い入れたということだ。国債金利が上がれば国債価格が下がるが、すでに日本銀行が途方もなく買い入れた債券価格が下落し、評価損が発生した。

 日本銀行が都市銀行に払わなければならない利子費用が急騰する可能性があるという点も金利引き上げをためらう要素だ。日本銀行の当座預金は2022年3月末に563兆円と1年で40兆円増加し、過去最大規模に増えた。

 当座預金は日本銀行が“銀行の銀行”であるだけに、市中の民間銀行が日本銀行に任せるお金をいう。当座預金残高が563兆円に達する状況で、2%の金利引き上げに乗り出す場合、増える利子費用だけで11兆円を超える。利子費用が自己資本(約10兆円)を超えれば、日本銀行は事実上の債務超過に陥ることになる。参議院予算委員会によると、銀行債務超過が発生しても日本政府が損失補填をすることはできない。

 安倍元首相の“遺産”であるアベノミクスは低成長の泥沼に陥った日本経済を安全資産円の力で引き上げたという評価を受けている。ただ、その過程で政府が供給し、銀行が発行したお金は富裕層にのみ集中するだけで、落水効果はなかったという指摘も痛恨だ。

 3番目の矢である“成長”につながらなかった状況で、アベノミクスは米国発の金利引き上げと原材料上昇などで、これ以上の量的緩和に固執しにくくなった。安倍元首相は死亡したが、アベノミクスの余波が日本政府と日本銀行の政策に悩みを抱かせる姿だ。
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