電気自動車は「補助金」によってその版図が決定される。最大7500ドルの補助金を受けることができる米国消費者がそれをしりぞけて、韓国の現代自動車やキア(起亜)自動車を選ぶことはないだろう。ジョー・バイデン米大統領の訪韓(5月)時、現代自動車のチョン会長は100億ドルを超える投資を約束したが、現地工場が稼働するまでの少なくとも3年間、韓国の電気自動車は足首を縛られた状態だ。「韓国も同様の措置で、国内企業への補助金支給を拡大すべきだ」という主張もあるが、市場規模を考えれば効果はないに等しい。
「インフレ削減法」は、ことし11月の中間選挙をねらってバイデン政権が政治的に収めた勝利であるだけに、法自体を変える可能性は非常に低い。そのため、米財務省が年末までに立てる予定の施行令を綿密に調整する方案が現実的な代案である。苦心している韓国政府は、WTO(世界貿易機関)への提訴案まで検討している。しかしこれは実効性がとぼしい。ドナルド・トランプ前米大統領当時に無力化したWTOの最高裁である上訴機関が3年間「機能停止」の状態であることから、紛争の解決まで数年かかるかもしれないためだ。
それよりも、米韓FTA(自由貿易協定)の手続きを利用するのがまだましだ。インフレ削減法は「米国製と外国製の製品を差別してはならない」というFTA協定に違反しているという点を浮き彫りにさせることができる。紛争解決の過程で、米国陪審員以外に韓国と第三国の陪審員が判決に参加するということも肯定的な要因である。判決を履行しなければ、米国は韓国が受けた被害を賠償するような手続きも同時に準備すべきだ。さらには、今回の措置により共に打撃を受けることになるドイツや日本など他国と共同対応し、国際機関を通じて問題を提起する方案も活用することができる。
自国優先主義的な補助金支給の方法が主要国の間に拡散する場合、輸出に頼っている韓国にとっては災難的な打撃となるしかない。単純に今回の事案ひとつが問題ではなく、今後の通商秩序あるいは貿易環境を考えても韓国政府が積極的に乗り出さなければならない。
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