韓国は先月、日本と台湾、マカオからの観光客について、8月限定でビザなしでの渡航を認め、先月4日から適用が始まった。ソウル市観光協会が先月10~14日に開かれたグローバル観光フェスティバル「ソウルフェスタ2022」の期間に日本人観光客の一時的なノービザ入国を許可してほしいと政府に要請したことがきっかけになった。
韓国政府は当時、すでに百数カ国からのビザなし入国を認めていたが、日本が韓国からのビザなし入国を停止したままであるため、相互主義などを理由に認めていなかった。
とはいえ、もともと日韓間では、人的交流の活性化などを目的に、2006年3月1日から90日以内の滞在であれば相互にビザなしでの往来を認めていた。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年3月にビザ免除の運用を停止し、発行済みビザについても効力を停止していた。
韓国政府は今年6月から、外国人観光客への短期ビザ(90日以内)の発給を再開。これを受け日本の韓国大使館や総領事館にはビザを申請する人の長蛇の列ができたほか、発給まで3~4週間かかる状況となった。観光業界などからはポストコロナ時代の韓国観光ブームの始まりを示すものだとして期待の声が上がった一方、ビザ免除措置の復活を望む声が出た。
聯合ニュースによると、先月1~21日に日本と台湾から韓国を訪れた外国人観光客は1日平均で前月比約97%増加した。今月以降も韓国では、人気グループBTS(防弾少年団)のコンサートや釜山国際映画祭、釜山ワンアジアフェスティバル、ソウル国際トラベルマートなど、大規模なイベントが予定されている。このことからソウル市や釜山市、観光業界は、日本などへのノービザ適用の延長を要請。これを受け文化体育観光部(部は省に相当)は31日、日本と台湾、マカオについてノービザ入国制度を10月31日まで延長することを発表した。
10月15日に釜山で開かれるBTSのコンサート「WORLD EXPO 2030 BUSAN KOREA CONCERT BTS in BUSAN」は、2030年の万博誘致に向けたPRの一環。釜山市は昨年6月、2030年の万博誘致に正式に立候補を表明。「世界の大転換、より良い未来に向かう航海」をテーマに、未来のパラダイムシフトに向けたグローバルなビジョンを提示するとしている。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領も釜山万博開催を主要国政課題の一つに掲げ、誘致活動を政府主導で進めていく方針を示している。誘致に向け、広報活動をさらに強化しようと、誘致委員会はBTSを釜山万博広報大使に委嘱。10月のコンサートはその活動の一環として開かれる。
コンサートの開催が決まるや、会場近くの宿泊施設は開催日前後の宿泊料金を引き上げ、中には1泊500万ウォン(約50万円)近くの料金を設定した宿泊施設もあった。また、宿泊施設側がさらなる価格の上昇が見込めると踏んで、既に完了済みの予約を一方的に取り消し、価格を引き上げた上で再販しているという顧客からの苦情も上がっている。こうしたことから、釜山市は取り締まりに乗り出した。
韓国政府は、ビザなし入国の延長に加え、入国前に受けた新型コロナ検査の陰性証明書の提出義務を今月3日からなくす方針も示した。入国から1日以内のPCR検査義務は継続する。
韓国ではこれまで、すべての入国者を対象に入国前48時間以内のPCR検査などの陰性証明書の提出を義務付けてきた。現在、経済協力開発機構(OECD)加盟38か国のうち、入国前検査を義務付けている国は日本と韓国のみ。日本はワクチンの3回目接種を条件に、今月7日から入国前検査免除することにしており、韓国だけが取り残されることのないよう、提出義務の撤廃を求める声が出ていた。
韓国政府としては、ノービザ入国延長、入国前コロナ検査の義務撤廃と、水際対策を緩和することによりコロナ禍で深刻な影響を受けた観光需要の回復につなげたい考えだ。
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