<W解説>北朝鮮がさりげなく発したメッセージ、2004年以来の日朝首脳会談につながるか?(画像提供:wowkorea)
<W解説>北朝鮮がさりげなく発したメッセージ、2004年以来の日朝首脳会談につながるか?(画像提供:wowkorea)
岸田文雄首相は先月27日、東京都内で開かれた北朝鮮による拉致問題の「国民大集会」に出席し、キム・ジョンウン(金正恩)総書記との首脳会談実現に意欲を示した。拉致問題をめぐって北朝鮮は「解決済み」との主張を繰り返しており、日朝間の公式協議も行われない状況が続いている。

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集会に出席した岸田首相は「2002年以来、1人の拉致被害者の帰国も実現していないことは痛恨の極みだ」とし、「被害者もご家族も高齢となる中、時間的制約のある拉致問題は、ひと時もゆるがせにできない人権問題だ。すべての被害者の1日も早い帰国を実現すべく、全力で果断に取り組んでいく」と述べた。その上で「現在の状況が長引けば長引くほど、日朝間の実りある関係を樹立することは、困難になってしまいかねない。日朝間の懸案を解決し、共に新しい時代を切り開いていく観点から私の決意をあらゆる機会を逃さず伝え続けるとともに、首脳会談を早期に実現すべく、私直轄のハイレベルでの協議を行っていきたい」と述べた。

日朝首脳会談をめぐっては、2002年9月17日、当時の小泉純一郎首相が訪朝し、初めて行われた。当時のキム・ジョンイル(金正日)総書記は拉致を認めて謝罪。拉致被害者5人は生存、横田めぐみさんら8人は死亡したと伝えた。会談で両首脳は「日朝平壌宣言」を交わした。同宣言で両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致し、地域の平和と安定にも寄与することになるとの共通認識を確認した。宣言には国交正常化交渉の再開や日本による植民地支配の謝罪、北朝鮮による核問題解決の約束遵守などが盛り込まれた。

翌月、拉致被害者5人が帰国。そして2004年、小泉氏が再訪朝し、拉致被害者の家族5人が帰国した。

その後、日朝両政府は2014年5月、拉致被害者の再調査と日本の独自制裁の一部解除を柱とする「ストックホルム合意」を発表。合意に基づき北朝鮮は同年7月に再調査を行う「特別調査委員会」を設置した。しかし、2016年1月、北朝鮮は4回目の核実験を行い、2月には「人工衛星」打ち上げと称して事実上の弾道ミサイルを発射。これを受け、日本は制裁を復活させ、一方、北朝鮮は調査の中止と調査委員会の解体を表明した。

日本政府は拉致問題で進展がなければ首脳会談には応じないとの立場に転じたが、安倍晋三元首相は2019年5月、従来の方針を転換し、拉致問題解決の糸口を探るため、金正恩総書記と「条件を付けずに向き合わなければいけない」との考えを表明した。この考えは後任の菅義偉前首相や岸田首相も引き継いだが、北朝鮮は応じる姿勢を見せず、首脳会談は行われない状況が続いている。

実務者レベルでも交渉は途絶えており、北朝鮮のソン・イルホ日朝国交正常化交渉担当大使は昨年9月、両国首脳が国交正常化を目指すと2002年に約束した「日朝平壌宣言」について、日本側が白紙にしたと主張。日朝協議再開への言及を避け、強硬な姿勢を取り続けている。

岸田首相が日朝首脳会談の実現に意欲を示したことを受け、北朝鮮外務省のパク・サンギル次官は談話を発表。先月29日、朝鮮中央通信が伝えた。パク次官は「解決済みの拉致問題を提起しようとしている」と主張。「先の政権のやり方に倣(なら)い、実現不可能な欲望を解決しようとするのなら誤算であり、時間の浪費になる」と主張した。また、日本政府が北朝鮮に対し核放棄を求めていることについては、「わが国の自衛権に関わる問題を議論しようとしている」と批判した。一方、「もし日本が過去にとらわれず、関係改善の活路を模索するのなら両国が会えない理由はない」とも述べた。

めぐみさんの母、横田早紀江さんはパク次官が日朝首脳会談の実現に含みを持たせたことについて、北朝鮮側の「否定的ではないコメントは初めて」と期待感を示した。早紀江さんは「(北朝鮮は)よほど困っているんだろうなと思っているので、これは本当に良いチャンス。日朝交渉をしない限り、目を見て話し合いをしない限り、本当のことがわからないので、ぜひ早くしてほしい」と訴えた。

首脳同士が対面することで状況が変わる可能性は十分にある。北朝鮮側から発せられたメッセージをいかに日朝首脳会談につなげるか、今、重要な局面を迎えている。

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