4月26日に第10話が放送された時代劇『テバク』。全24話の中の半分もまだ終わっていないが、中盤に入ってから物語が大きく動いてきて、とても面白くなってきた。(写真提供:OSEN)
4月26日に第10話が放送された時代劇『テバク』。全24話の中の半分もまだ終わっていないが、中盤に入ってから物語が大きく動いてきて、とても面白くなってきた。(写真提供:OSEN)
4月26日に第10話が放送された時代劇『テバク』。全24話の中の半分もまだ終わっていないが、中盤に入ってから物語が大きく動いてきて、とても面白くなってきた。果たして、チャン・グンソクは『テバク』を代表作にすることができるだろうか。

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■『テバク』で生まれ変わる

 3月24日にソウル・SBSで行なわれた『テバク』の制作発表会。ここで、とても印象的な言葉があった。

 それは、笑みを浮かべなかったチャン・グンソクが、満を持して発した言葉だ。彼はこう言った。

「『美男<イケメン>ですね』のようなものを追求する俳優にかぎっていたのではないか、という疑念がいつもありました。30歳(数え)になります。今までのものを捨てて、新しいものを身につけられる作品になるのではないか、と思います。」

 淡々とした言い方だったが、チャン・グンソクの表情には思い詰めたような緊迫感があった。

 これは、自分を成功に導いてくれたラブコメとの決別宣言ではなかったか。

 30代になるからには年齢にふさわしい代表作がほしい、という明確な意思表示ではなかったか。

 さらに言うと、背水の陣で『テバク』に臨んでいる、という決意の表れではなかったのか。

<チャン・グンソクは『テバク』で生まれ変わる!>

 そう思った人も多かったことだろう。私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)もその1人である。


■これは大きなチャンスだ

 3月28日から放送が始まった『テバク』。第10話まで見てきて、惜しいと思うことはいくつもある。ストーリー、キャスティング、撮影日程…。用意周到の制作準備期間を持てなかったのかもしれない。制作費が日本よりずっと少ない韓国の宿命と言ってしまえばそれまでだが…。

 それでも、『テバク』は水準以上の出来を維持している。というより、第9話から見違えるように面白くなってきた。もともとベテランの男優陣の演技は卓越していたが、チャン・グンソクとヨ・ジングがそこに加わって、ストーリーに厚みを加えられるようになった。

 とりわけ、チャン・グンソクの存在感が増してきた。彼だけ特別扱いで髭をつけていないのが気になるが、その点を除けば、チャン・グンソクは間違いなくドラマを引っ張っていける「正真正銘の主役」になった。

 彼も十分にわかっている…こんなチャンスは滅多にない、と。

 果たして、何がチャンスなのか。それは『テバク』というドラマが持つ特殊性に起因している。

 一つは、ドラマの設定が既存の概念を打ち破っていることだ。「王子が捨てられてイカサマ師になり、王に対して国を賭けた一世一代の大勝負を仕掛ける」という物語は、おそらく韓国時代劇でも初めてと言えるほどの壮大なスケールを持っている。

 加えて、チェ・ミンス、チョン・グァンリョル、イ・ジェヨンといった名優がこぞって共演している。チャン・グンソクが過去のラブコメで共演した俳優とはレベルが違いすぎるのだ。そんな中で主役を張れるというのは恵まれすぎている。

 こうしたことを踏まえて、私は「チャンス」と言ったのである。


■視聴率アップが必須条件

 これほどのチャンスを得たのなら、ぜひチャン・グンソクは『テバク』を代表作にしてほしい。

 そうするためには何が必要なのか。

 ここでは3つの条件を挙げたい。

 まずは、視聴率を上げることだ。ドラマの評価は視聴率だけで判断されるものでないことはよく知っているが、それでも視聴率がよくない作品を代表作にすることはできない。

 そういう意味では、かならず15%以上の数字がほしい。第10話の視聴率は8.9%であったが、中盤になって本当に面白くなってきたので、これから数字を上げていくことは大いに可能だろう。

 同時間帯に放送されている地上波3局のドラマでは、『町の弁護士チョ・ドゥルホ』がトップを走っているが、『テバク』が『町の弁護士チョ・ドゥルホ』を抜きさり、さらに15%以上の視聴率を獲得できれば、チャン・グンソクの株は大いに上がる。

 不可能ではない。

 確かにハードルは高いが、後半に向けて面白さが評判になっていけば、数字は確実に上がっていく。

 そして、最終目標として15%突破をめざすのである。


■閉塞した社会の突破口

 2つ目の条件は、社会現象を起こすことだ。

 韓国は、テレビドラマの影響が強く社会に及ぶ国である。過去に、その時代に適したドラマが社会現象を起こし、人々の生活を彩ってきた。

 現在では、まさに『太陽の末裔』が社会現象を起こしている。主役のソン・ジュンギの人気はとどまるところを知らない。この一事をもってしても、ドラマの影響力の大きさを痛感させられる。

 そうしたドラマの系列に『テバク』を仲間入りさせるのである。

 簡単なことではない。

 というより、可能性は極端に少ない。それでも期待が持てるのは、『テバク』が壮大なストーリーという強みを持っているからだ。

 所得格差が広がる一方の韓国社会にあって、一発大逆転を狙うという『テバク』の爽快さは特筆すべきものだ。

 これが受け入れられれば、『テバク』が閉塞した社会の突破口としてブームを巻き起こすことが可能かもしれない。

 大事なことは、あきらめないことだ。制作陣が最後の撮影まで最善を尽くすことを願いたい。


■名優たちを上回る演技を!

 3つ目の条件は、チャン・グンソクの演技が韓国で高い評価を得ることだ。代表作にしようとしたら、この条件が絶対に欠かせない。

もともと、韓国における俳優の評価は、ドラマより映画上位であった。どんなに大ヒットしたドラマでブレークしたとしても、映画で優れた演技を見せないと、俳優としての評価がなかなか上がらないというのが韓国芸能界の掟であった。

 しかし、韓流ブームがアジア各国で起こってから、俳優の立ち位置に変化が現れた。本来なら、映画で成功した俳優はドラマには戻らなかったのだが、今は映画で活躍した名優が次々にドラマの主役に復帰している。そういう意味では、「俳優の評価は映画上位」という掟が通用しなくなってきた。

 これによって「チャン・グンソクに追い風が吹いてきた」と言っても過言ではない。

 ただし、同じ演技の繰り返しではなく、幅広い役を多彩に演じ分けられないと、韓国では俳優の評価が上がってこない。

 つまり、ラブコメだけでは苦しい、ということなのだ。

 その点、『テバク』はチャン・グンソクにとって役柄の幅を広げる絶好の機会になった。しかも、時代劇は評価ポイントが高いジャンルである。

 名優たちに囲まれて主役を担っているチャン・グンソク。チェ・ミンスやチョン・グァンリョルといった共演陣を食ってしまうほど存在感を示せれば、評価は後からいくらでも付いてくる。

 以上のように、『テバク』がチャン・グンソクの代表作になるための3つの条件を挙げた。すべては第11話以降の彼の演技力にかかっている。ぜひ大きな目標に向かって邁進してほしい。


文=康 熙奉(カン ヒボン) 
(ロコレ提供)

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