半官半民のMBC(写真提供:ロコレ)
半官半民のMBC(写真提供:ロコレ)
韓国は「ドラマ大国」と呼ばれる。その根拠は、放送されるドラマの本数だ。日本と比べても、はるかに数が多いドラマが日常的にテレビで放送されている。その中でも、特に視聴者が多い地上波の3大テレビ局が、KBS、MBC、SBSである。

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■経営スタイルが違う

 もしも、NHKの地上波2チャンネルの中の1つで民間放送のようにCMを流しているとしたら……。

 もしも、政府が出資して民間で運営する半官半民の放送局が日本にあったら……。

 もしも、NHKの受信料を電気料金の徴収と一緒に取られるとしたら……。

 ものすごく違和感があるだろう。

 その「もしも」が実際に行なわれているのが韓国である。

 その韓国では、放送局の経営スタイルがそれぞれ違う。

 KBSは公共放送、MBCは政府が出資して民間で運営する半官半民、SBSは民間放送となっている。

 この3つの放送局はどんな経緯で設立されたのか。そのあたりから韓国の放送局の成り立ちがよくわかる。


■釜山の旅館にこもる理由

 日本では1953年にテレビ放送が始まっているが、韓国は8年遅れて始まった。当時は国営だったKBSが1961年にテレビ放送を始めている。そのKBSは、1973年に特殊法人によって公社化された。

 MBCがテレビ放送を開始したのは1969年だった。当時は純然たる民間放送局だった。それがなぜ政府の干渉を受けたのか。

 実は、当時は他にも東洋放送(TBC)という民間放送局があった。1970年代はKBS、MBC、TBCが3大放送局だったのだ。

 その頃、放送局の有能な社員の仕事の1つが、釜山(プサン)の旅館にこもることであった。

 何のために?

 それは、地理的に近い九州のテレビ放送を受信することだった。

 そのときに見た番組は少しだけ企画を変えて、韓国の放送局で有力なコンテンツに早変わりした。つまり、日本のテレビ番組を模倣することで、韓国はテレビ放送のノウハウを覚えていったのである。

 そんな過去があったとは驚くが、当時の放送局員はワラにもすがる思いで釜山の旅館に逗留したことだろう。


■民間放送局を吸収した影響

 韓国の放送局の様子がガラリと変化したのが1980年だ。その頃はまだ軍事政権だった。その軍事政権はメディアを意のままに操るために、放送局の再編を断行した。仕方なく、TBCはKBSに吸収されてしまい、MBCも株式を軍事政権に握られた。

 こうして民間放送局は消滅し、放送されるのは政府に都合のいいニュースばかりになった。

 1987年に韓国で民主化が達成されると、放送業界にも春がやってきた。1990年に放送法が改正されて、民間放送の開局が可能となった。

 その結果、1991年には完全な民間放送局としてSBSが誕生した。以後、公共放送のKBS、半官半民のMBC、民間のSBSという3大放送局体制となって今に至っている。

 現在のKBSは“KBS1”と“KBS2”の2チャンネル構成だが、それは、かつてTBCを吸収した結果だ。公共放送なのに“KBS2”でCM放送が行なわれているのも、民間放送を取り込んだ名残なのだ。

 しかも、KBSの受信料は電気料金と一緒に徴収される。100%近い徴収率を達成できるのも当然か。

 この現状をNHKはどう見ているのか。

「うらやましい」

 受信料の徴収で苦労しているNHKから、そんなため息が聞こえてきそうだ。


文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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