いつも教会の仲間と行く江戸川橋にあるスペイン料理の居酒屋風レストランで思うことは、店主ともう少し親しくなれないかということです。三十人ぐらい入る気楽にいけるお店で、料理も美味しくもっと流行ってもいいと思う店なので店主と親しくなりもっと繁盛するよう協力したいと思っています。「料理を頼みワイン片手に仲間内でワイワイ楽しく遊べばいい」のであって、特に店の人と親しくなり協力する必要があるのかと思うかもしれませんが、私は四十年近くサービス業に従事していたので、実力が評価されない人や店があると、余計なおせっかいですが、何とかしてあげたくなってしまう性分です。韓国人のお客を取り込むのであれば秘策があります。
題して、「韓国人を取り込むHOW TO……」
まず二回以上来たら、必ず親しげに話しかけ、相手の存在感を満足させます。韓国人は人見知りせず、人と交わることが好きな性格です。もちろん、親切にしてくれるなら韓国人でなくとも喜びますが、好意を素直に受け入れ自分の身内のように感じ、次からできるだけ多くの人を連れて来ようとします。
二番目に、一緒に来た人に聞こえるようにサービス料理を出します。何も豪華である必要はありません。常連の人の自尊心を満足させれば事足ります。その韓国人は一緒に来た人たちに格好がついたので気を良くし、いつも以上に売り上げに協力するでしょう。エビで鯛を釣るとはこのことです。何分韓国人は見栄っ張りなので懐が寒くてもケチなまねはしません。後で出費がかさみ後悔するにしてもです。
蛇足ですが韓国女性に愛の告白をするときも、同じ理由で人がたくさんいるところの方が効果的です。
●単数形でも複数形の<ウリ>
韓国人は「ウリ」(私たち)という語を単数形でも複数形でも使います。「わが国」と言うところを「ウリナラ」(わが国)、「私の家」を「ウリジプ」(我々の家)と言うのは理解できるとして、日本の女性と話すとき「私の子ども」を「ウリアイ」(我々の子ども)と表現したらどうなるでしょうか。
「私との間でいつ子どもを産んだの」と激怒するでしょう。また、友達に「私の奥さんが……」を「ウリジプサラム」(我々の妻)と言ったらどうなるでしょうか?何で「私があなたの奥さんとそういう関係であることを知ってるの?」と驚いたらどうなりますかね……。
「わが息子」を「ウリアドル」(我々の息子)と言い、日本人が聞いたら「何で我々の息子なの」と訝しく思うことでしょう。
このように韓国人は人に対するとき、ウリ側(私たち側)の人か、そうでないナム側(他人側)の人かという二分法で考える習慣があります。ですから初対面の人にも、根掘り葉掘り相手の個人情報を聞きたがります。
相手が金氏だったらどの血筋の金(本貫)なのか?年は?故郷は?高校は?大学は?両親は?等々。さすがに最近は少なくなりましたが、相手と自分の共通項を探す習慣は健在です。
つまり「ウリ」イコール俺の側なのかどうかを気にします。「ウリ」の側の人には家族同様の深い情をかけ世話をします。逆に「ナム」側の人には距離を置くのです。
上述のレストランの話も、「ウリ」と感じたら身内の店だから何とかしてあげたいという気持ちにかられるのです。レストランの話が出たついでに、関連の話を。
●キムチはただ
韓国人が日本に来て一番驚くのが食堂で漬物(キムチ)のお金を取ることです。「日本人はなんてみみっちいのか」と。韓国の食堂では基本的にキムチなどのお惣菜系はただですし、お代わりも当然のことです。食事をケチるのは韓国人の好みにあいません。少なくとも食べることには気前が良く、食べ残しても日本ほど気にとめません。全て合理的でキッチリしなければ気が済まない日本式にはついていけないのです。
赤坂に「ソルロンタン」(牛の肉、骨を煮込んで作るスープ)だけを扱っている韓国料理店があり、繁盛しています。この店は在日の既存の店とは違い、キムチや十種類ほどのおかずが付け足しで出てきます。もちろん、キムチ、カクテキは食べ放題です。ご飯と肉のスープが千五百円プラス消費税なので、決して安くはありませんが、心置きなくキムチのお代わりができるので、韓国人に大ウケです。いくら食べ放題と言ってもそうそう食べられるものではありませんが、韓国人の心を捉えているだけでなく、ひいきにしている日本人も少なくありません。
●取り皿
もともと韓国には取り皿はありませんでした。最近は日本や西欧にならって、どの家庭でも取り皿を使っており、チゲなどのスープ類も取り皿によそって食べますが、情緒的には「じかバシ」ならぬ自分のスプーンで直接チゲを食べるのが韓国式です。口に出し入れするスプーンをチゲの入った器に入れるのは非衛生かもしれませんが、取り皿は他人と距離を置いた仲間の行為として受け止められました。今は死語になりつつあると思われますが、日本にも「同じ釜の飯を食う」という仲間内の情がありました。
●割り勘
日本に来た韓国人が驚くことの一つが「割り勘」ではないでしょうか。会社勤めをすると、特によくわかります。昼食の後、列をなして各自が自分の食べた分を支払う習慣に慣れるまで、かなり時間がかかりました。韓国では誰か一人が全員分を支払い、次の機会に他の人が支払うのが一般的なので、日本の「合理主義」になかなか慣れませんでした。
韓国では「割り勘」はなじまないので、会計カウンターの前でいつも揉めます。「俺が払う」「いや俺が払う」という光景がよく見られます。参考までに、会社の関係者が飲みに行った場合に誰が払うかというと、上司、年長者、誘った者の順です。
昨年十一月、ソウルで同窓会がありました。もう皆年配なので、現役は私を含めて四人でしたが、支払いは会費制でなく当然のごとく収入のある者が出します。四人で分担するのではなく誰か一人が全額支払います。四人が前後して、支払おうとカウンターに行ったのですが、既にその場で一番金持ちの社長が支払った後でした。他の人たちは当然のように受け入れ、特に感謝の言葉はありません。韓国では、これがごく普通のことです。
●もっと韓国を知るためのことば
ウリガ ナミガ!我々は仲間だろう!
慶尚道で流行った仲間意識を強調した言葉で直訳すると、「我々は他人じゃないだろう」。親しみを込めて肩に手を回されて言われたら「うん、そうそう」とついうなずいてしまいますよね。
※文=権鎔大(ゴン・ヨンデ)韓日気質比較研究会代表の寄稿。ソウル大学史学科卒業、同新聞大学院修了。出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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