韓国映画「高速道路家族」のキャスト、公開日、あらすじ
ファンの大きな拍手に迎えられたチョン・イルは隠し持ったカンニングペーパーをチラ見しつつ「みなさん、こんばんは。映画『高速道路家族』でギウ役を演じましたチョン・イルです」と流ちょうな日本語であいさつ。当初、来日の予定はなかったものの、日本での公開に合わせて自費で日本にやってきたというイ監督は「この映画を見て、みなさんがいま生きている世の中や周りの人々のことを考え直す時間を持っていただければうれしいです」と満員の観客に語りかけた。
7年ぶりの映画復帰作で、これまでのイメージを覆すような、ホームレスの男性ギウという役を選んだ理由を問われたチョン・イルは「久しぶりということで、一般的なキャラクターではない役柄を演じられたらと思っていたところ、贈り物のようなこの映画に出会いました。このギウという役柄は、私でなくとも誰もが演じてみたいと思う役だと思います。感情の幅がダイナミックで、これまでに見せたことのない私の姿が見せられるだろうと思い、すぐに出ることを決断しました」と明かす。
イ監督は本作のチョン・イルについて「精神的にも肉体的にも、渾身の力を込めて、この役に向き合ってくれました。それを見るだけでもこの映画を鑑賞する意味があると思いますし、2時間後、みなさんもきっと私の言葉に同意していただけると思います」と称賛を送る。
映画に出てくる家族の姿を通して「幸せとは何か?」と考えさせられる本作だが、チョン・イルは自身が感じる“幸せ”について「若い頃は、自分が他人からどう見えるか? 自分に対する他人の評価がどうであるか? というところに幸せを見出していたかもしれません。でもいまは、まず自分を愛し、自分を顧みることが大切だと感じています。だから、全く知らない他人と過ごすよりも、自分の時間を持ち、自分自身に近づいていくことに楽しみを見出し、幸せを感じるようになったと思います」と変化を口にする。
また、本作の衝撃のラストにちなんで「最近、衝撃を受けた出来事は?」という質問には「映画とは全く別のプライベートなことなんですが…最近、ゴルフをプレイしたところ、スコアが最悪で衝撃を受けました…」と苦笑交じりに明かし、会場は笑いに包まれた。
そして、ここからチョン・イルとイ監督が客席で手を挙げたファンの中から5人を選び、彼女たちの質問に直接答えるというサービスを実施。
最初の質問者の「いままではイケメンでさわやかな役が多かったですが、今回、このギウという役を演じる上で大変だったところは?」という質問には「私は俳優というものは、いまの地位に安住せず、絶えず変化しないといけないと思っています。そういう意味で、みなさんがチョン・イルという俳優に対し持っているイメージから脱皮したいと思っており、このギウという役を選びました。感情の起伏が激しく、心に痛みを抱えたキャラクターを演じるというのは、難しくもありましたが、監督が横でいつも助けてくれました」とふり返った。
続いての「この役を演じる前と演じた後で、自身の気持ちや俳優として目標などは変わりましたか? いま、どんな目標を掲げられていますか?」という質問には「韓国でこの作品が封切られた後、いろんな人から『チョン・イルはこんな演技ができるのか!』という評価をいただけてうれしかったです。ただ、私は俳優を始めた当初から目標は変わっていません。まず柔軟性のある俳優でありたいということ。そして、当然ですが、演技のうまい俳優でありたいということ。そして、みなさんに良い影響力を与えられる俳優でありたいというのが目標です」と力強く語ってくれた。
また、既に映画を見て、劇中のチョン・イルの“汚れっぷり”に驚いたというファンからは、衣装や髪の毛などの“汚し”をどのようにしたのかという質問が。チョン・イルは「まず、劇中で着ている衣装は監督が自ら出向いて買ってきたものです。そして、履いているスニーカーは、20年以上も僕が持っていた私物です。映画の中では高速道路のサービスエリアでの撮影が多かったのですが、撮影のカメラが回ってない時も、僕はあちこちに座り込んで、何か食べたりしていましたが、誰も僕だと気づくことはなかったので、これは成功だと思いました(笑)」と明かし、客席は笑いと驚きに包まれていた。
また、続いての「いろんな側面を持つギウを演じる上で、1番大切にしたことは?」という質問には「彼にとって、世の中で家族こそが全てであり、生きる理由です。いろんな経験の末、社会に対して門を閉ざし、自分の中の世界で生きており、頼れるのは家族だけという男です」とギウという男のパーソナリティについて指摘する。
イ監督もチョン・イルの言葉にうなずき「ギウを通してみなさんに世の中を見直してほしいと思っています。韓国にもセーフティネットはありますが、そこからも落ちてしまった人、資本主義に適応できないという人たちがたくさんいます。様々な不安や恐怖を抱えていますが、その極限に達したのがギウという男だと思います。だから、常に何かから逃げ、世の中から遠ざかろうとしている姿が描かれています」と説明した。
そして、最後の5人目の質問は、ギウの子どもたちを演じた子役の俳優たちと現場でどのように接していたのかというもの。チョン・イルは「子どもたちと仲良くなるには、彼らの視線でものを見て、彼らの行動を考え、彼らの話を聞いて受け入れる。その準備することが大切だと思っていました。簡単に言うと、おいしいおやつを食べてもらって仲良くなるということです(笑)。一緒に遊んだり、彼らの視線で触れ合うようにしていました」と笑顔で明かしてくれた。
舞台あいさつの最後にチョン・イルは「日本での公開のためにご尽力いただいたみなさん、そしてファンのみなさんに心から感謝したいと思います。この映画は、家族の意味をもう1度考えさせてくれる作品です。それ以外にもたくさんのメッセージが含まれています。そして、結末はみなさんが判断して決めていただければと思います。いま、僕はこうしてきちんとした恰好でここにいますが、これからこの映画のギウを見ていただくと、もしかしたらみなさん、そっちの姿のほうがよく似合うと感じるかもしれません(笑)。ぜひ楽しんでください」と優しく呼びかけ、温かい拍手の中で舞台あいさつは幕を閉じた。
報道陣向けの写真撮影では、映画のポスターが倒れるハプニングもあったが、チョン・イルは自ら、ポスターを手に抱えてカメラマンに向けてポーズを取るという“神対応”を見せ、ファンに向かっても最後まで手を振り続けていた。
Copyrights(C)wowkorea.jp 3