仁川国際空港に並ぶ大韓航空機とアシアナ航空機=15日、仁川(聯合ニュース)
仁川国際空港に並ぶ大韓航空機とアシアナ航空機=15日、仁川(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】政府系の韓国産業銀行は16日、国内航空最大手の大韓航空と経営再建中のアシアナ航空の統合に向け、大韓航空を中核とする韓進グループの持ち株会社である韓進KALに8000億ウォン(約750億円)を投資すると発表した。大韓航空は今週中に買収意向書をアシアナ航空に提出すると予想される。 これにより、1988年のアシアナ航空設立以来32年間続いた韓国航空業界の2強体制から大韓航空の独走体制となり、世界7位の「メガキャリア(巨大航空会社)」が誕生する見通しだ。◇アシアナの負債も背負う大韓航空 国際航空運送協会(IATA)の統計によると、昨年の旅客・貨物輸送実績で大韓航空は世界19位、アシアナ航空は29位だった。両社の輸送量を合計すると、単純計算で世界7位に浮上する。 旅客数に輸送距離を乗じた「旅客キロ」では大韓航空が18位、アシアナ航空は32位で、両社を合わせると10位のアメリカン航空に並ぶ。 国際旅客輸送では大韓航空が19位、アシアナ航空が36位で合わせると10位。国際貨物輸送では大韓航空が5位、アシアナ航空が23位で、合わせるとキャセイパシフィックを抜いて3位に上昇する。 昨年の売上高は大韓航空(12兆2000億ウォン)とアシアナ航空(6兆9000億ウォン)を合わせて約20兆ウォンで、資産は40兆ウォンになる。 大韓航空がアシアナ航空を買収すれば、整備や操縦士の教育・訓練などを一元化することでコストが削減でき、重複路線の簡素化によって収益性も改善すると期待される。 また、乗り継ぎ便やマイレージの統合など、消費者にとってもメリットが増すとみられる。 一方で、前向きな見通しのみが示されているわけではない。 新型コロナウイルスの影響で売り上げが減少し、今年1~6月の大韓航空の売上高は4兆ウォン、アシアナ航空の売上高は1兆9000億ウォンに落ち込んだ。 重複する路線は買収後に統廃合されるため、両社の昨年業績の合計額が買収後もそのまま維持される可能性は低そうだ。 また、アシアナ航空の負債を引き受けることは大韓航空にとって負担になる。大韓航空の負債額は計23兆ウォンで、アシアナ航空は約12兆ウォンだ。 問題は、アシアナ航空の資本浸食率が4~6月期基準で56.3%と深刻な水準にある点だ。年末時点で資本浸食率が50%を上回ると株式は監理銘柄に指定され、2年以上50%以上なら上場廃止の審査が行われる。 貨物輸送の拡大によりかろうじて赤字を免れた大韓航空としては、負債比率が2291%に達するアシアナ航空を買収することは大きな負担だ。 政府はこれまでに大韓航空とアシアナ航空に計約5兆ウォンの金融支援を行っており、買収のために税金を追加投入することは論争を招く可能性がある。 9月に韓国建設大手のHDC現代産業開発によるアシアナ航空の買収が白紙に戻ってから、アシアナ航空は政府系の韓国産業銀行と韓国輸出入銀行による管理体制に入った。両行から支援を受けた3兆3000億ウォンは既に底をつき、先ごろ基幹産業安定基金から2400億ウォンの新たな支援を受けた。 大韓航空も4月に産業銀行と輸出入銀行から1兆2000億ウォンの支援を受け、年末には約1兆ウォンの基幹産業安定基金も申請する計画だ。◇買収までに難題山積 独占・寡占懸念に労組の反発も  今回の買収においては、新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立たされている航空業界の状況がネックになるとみられる。業界では、自らの身を守るのも難しい大韓航空がさらに経営が厳しいアシアナ航空を買収すること自体が賭けだとの懸念も出ている。 大韓航空は現在、国際線110路線のうち30%に当たる33路線のみ運航している。アシアナ航空も、国際線100路線のうち26路線のみ運航している。 早ければ来年にも新型コロナウイルスのワクチンが開発され、貨物輸送が増えると予想されるが、旅客需要が回復するまでには数年かかる見通しだ。 大韓航空とアシアナ航空は中国や日本路線の運航を順次再開しているが、米州・欧州路線は運休が続いており、国際線の運航状況は改善していない。 特に北半球では新型コロナ感染が再拡大しており、今年10~12月期の見通しも芳しくない。韓国政府が義務付ける入国後2週間の隔離措置も当分の間続く見通しで、中国は再び外国人の入国制限を強化している。 ビジネス関係者の往来円滑化に向けて韓中政府が導入した「ファストトラック」制度もこの影響を受け、サムスン電子の社員らを乗せて中国に出発予定だったチャーター機の運航が取り消された。 このほか、大韓航空とアシアナ航空の統合による独占・寡占の懸念も買収過程で問題になる可能性がある。 大韓航空とアシアナ航空の国内線搭乗客のシェアは、子会社も合わせると5割を超える。昨年末の国内線のシェアは大韓航空が22.9%、アシアナ航空が19.3%だった。両社の子会社の格安航空会社(LCC)、ジンエアー、エアプサン、エアソウルも合わせると62.5%に上る。 公正取引委員会が企業合併審査で独占・寡占を理由に買収に反対意見を示す可能性もある。ただ、公取委はアシアナ航空について企業再生が不可能と判断するとみられ、両社の統合が不許可となる可能性は低い見通しだ。 外資系航空会社と競争しなければならない韓国航空会社の状況を踏まえると、国内線シェアが50%を超えるという理由だけで独占・寡占とするには無理があるとの分析も出ている。 買収過程では、社員や株主の反発も見込まれる。 買収されるアシアナ航空だけでなく大韓航空も一部部門でリストラが行われると予想され、特にアシアナ航空の客室乗務員は路線の統廃合により大規模なリストラが行われる可能性が高い。 両社の操縦士労組など六つの労組は買収関連の情報共有、労組の買収手続きへの参加などを会社側に求める方針だ。六つの労組は16日、会議を開いて対策を議論する予定だ。 韓進グループの経営権を巡って趙源泰(チョ・ウォンテ)会長と対立してきたアクティビスト(物言う株主)ファンドのKCGIが、アシアナ航空の買収に反対することも不安要素だ。韓進KAL株の45.23%を保有するKCGIと趙顕娥(チョ・ヒョナ)大韓航空元副社長の連合などが仮処分申請を求めて訴訟を起こし、韓国産業銀行による韓進KALへの資金投入などを阻止する可能性も持ち上がっている。 KCGIは韓国産業銀行が韓進KALの第三者割当増資を引き受けることに反対しており、強行すればKCGIをはじめとする株主連合が先に増資に参加すると表明している。
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