韓国政府は来年までに交通事故死者数を2000人台までに減少させることを目標に掲げている。今回の改正道路交通法施行規則「安全速度5030」の全面施行が、目標達成のための切り札となるか注目される。
これまで韓国では、都市部の一般道の制限速度は片側1車線の道路が時速60キロ、片側2車線以上は時速80キロだった。生活道路は、子ども保護区域は時速30キロに制限されていたが、住民保護区域は時速40~50キロと一定でなかった。
昨年の韓国の交通事故死者数は3081人で前年(3349人)比8.0%減。1991年の1万3429人をピークに、その後は増減を繰り返し、近年は減少傾向にある。
しかし、人口10万人当たりの死者数は昨年5.9人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均5.6人を上回っている。とりわけ、死者のうち歩行者が占める割合は約40%(2017~19年)と高く、OECDの平均(20.5%)の倍となっている。
一方、日本は昨年、死者が2839人で前年比12%減。統計が残る1948年以降最少となり、初めて2000人台にまで減少した。人口10万人当たりの死者数は昨年2.25人で、5年連続で減少となった。先進国の中でも、交通事故に遭う確率が最も低い国の一つだ。
これまで韓国政府は1995年の「子ども保護区域指定」や1997年の「無人速度超過取り締まりカメラ導入」、2001年の「運転中の携帯電話使用禁止」、2013年の「DMB(日本のワンセグに相当)視聴禁止」など、様々な交通政策を行ってきた。近年、交通死亡事故件数が減少傾向にあることからも一定の成果を上げていると言える。
交通事故死者数を減らすには、歩行者が犠牲となる事故を減少させることが喫緊の課題だ。今回施行された「安全速度5030」は、「歩行者中心の交通文化をつくろう」との趣旨のもと導入された。「韓国の大阪」と言われているプサン(釜山)市では、ひと足早く2019年11月から「安全速度5030」を全面施行。昨年の歩行者の死者数は47人と前年(71人)比33.8%減少させる成果を見せた。
ソウルでの施行初日、街では様々な声が聞かれた。「歩行者の立場からすれば、はるかに安全になった」「制限速度が低くなればドライバーの意識が高まり、交通事故が減るだろう」などと肯定的に受け止める声がある一方、「車があまり通らない時間帯にも制限速度に従ってゆっくり走行することに何の意味があるのか」「スポーツカーならば、アクセルを1回踏んだだけで速度違反になってしまう」などと不満の声も上がった。
施行に伴い、警察はソウル市や釜山市などから取り締まりに着手したが、周知不足により「安全速度5030」を知らない人もいたほか、速度制限表示板の整備が完了していない地域もあるという。
1965年、日韓国交正常化の以降、日本の資金と新日鉄の技術は韓国に渡り、ポハン(浦項)製鉄が鉄を作った。三菱自動車の技術は韓国に渡り、現代自動車が浦項製鉄の鉄で車を作った。日本の資金はまたソウルと釜山を結ぶ京釜高速道路の建設に使われ、その道路の上を現代自動車の車が走った。
それ以降、約50年間「車中心の社会」を作り上げてきた韓国。今度は歩行者の安全を第一に考える交通環境になっている日本を追っている。「安全速度5030」導入の趣旨が広く市民に受け入れられ、浸透することで「歩行者中心の社会」へと移行できるかが問われている。最大の敵はダイナミック過ぎる韓国で根強い「パリパリ(速く速く)」の文化である。
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