元慰安婦を象徴する「平和の少女像」の制作者としても知られるキム・ウンソン、キム・ソギョン夫妻は、2016年に徴用工をモチーフにした像を制作。
像は韓国の労働組合である全国民主労働組合総連盟と韓国労働組合総連盟の幹部によって、京都にある記念館の鉱山の坑道に設置された。その後、ソウルや中部のテジョン(大田)、南部のチェジュ(済州)、プサン(釜山)にも設置され、韓国では像は徴用工を象徴する彫刻作品とされてきた。
しかし、この像について、朝鮮半島の経済史の観点から日本統治時代の研究などを行っている、ナクソンデ(落星台)経済研究所の学者イ・ウヨン研究員が、1920年代の日本人労働者の写真をSNSに投稿し、「像のモデルは日本人」と主張した。
イ研究員は、「親日は悪であり、反日こそが善だ」という意識が韓国内ではびこっていることを批判したベストセラー本「反日種族主義」の著者の一人としても知られる。
イ研究員の主張に彫刻家夫妻は名誉を傷つけられたとして、6000万ウォン(約566万7000円)の賠償を求める訴訟を起こしていた。
ソウル地裁は30日、「被告の主張の根拠は推測に過ぎず、やせた体つきや短い服のほかに労働者像と日本人の写真の間にこれといった類似点は見当たらない」と指摘。イ研究員に対し、夫妻に計100万ウォンを支払うよう命じた。
一方、夫妻は、中部のテジョン(大田)市の市庁舎前の公園に設置されている像について、「韓国人徴用工ではなく日本人をモデルに制作された」と主張する元テジョン市議に対しても2019年に提訴した。
この訴訟では今年5月、ウィジョンブ(議政府)地裁コヤン(高陽)支部が夫妻の訴えを棄却している。つまり、徴用工像のモデルが日本人であるか否かをめぐって、2つの裁判所によって判断が分かれた訳だ。
韓国では2019年、韓国の小学6年生の歴史教科書に「徴用工」として掲載された写真が日本人労働者であることが分かり、この写真と夫妻が制作した像の特徴が似ているとして、ウィジョンブ地裁は「モデルが日本人だと信じる相当な理由がある」と認定した。
写真は上半身が裸で、あばら骨が突き出てやせ細った複数人の男性を写しており、韓国メディアは2019年、この写真について、北海道の旭川新聞が1926年9月に道路建設現場での労働者虐待致死事件を報じた際に掲載したものではないかと指摘した。
事件を伝える記事に朝鮮人の存在をうかがわせる記述は見られず、1944年9月に始まった法的強制力を持つ「徴用」と時期も離れていることから、この写真は徴用工とは無関係なものだとされた。
日韓の歴史問題、いや、「歴史戦争」が絡む訴訟では、慰安婦訴訟や元徴用工訴訟でも韓国の司法判断が分かれる事態となっている。
一方、慰安婦に比べて徴用工問題は太平洋戦争末期の1年間に満たない期間に行われた。韓国は当時の「徴用」そのものが違法行為だと主張し、1965年の日韓国交正常化の補償内容に違法行為に対する補償は含まれていなかったと主張している。
近代史に詳しい一部の韓国学者はこのような主張を恥ずべきこととし、また徴用工だと被害を主張する人々の中には募集工も含まれていると見ている。
Copyrights(C)wowkorea.jp 6