文大統領(資料写真)=(聯合ニュース)
文大統領(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】2022年3月の韓国大統領選を控え、任期5年目となった文在寅(ムン・ジェイン)政権のこの1年を振り返ると、国政運営に大きな影響を及ぼしたのはやはり新型コロナウイルスだった。 コロナ禍2年目に入った今年の初め、文大統領は感染防止に注力するとともに、国民の暮らしと経済を立て直すという目標を掲げた。日常生活と力強い経済の回復を目指しながら、国際秩序の転換期の今、世界をリードする国としてプレゼンスを発揮したいという意思のあらわれだった。 そのためにワクチン接種率を高めようと、文大統領自らが陣頭指揮を執った。他の先進国に比べ接種の開始が遅いという世論の突き上げもあった。文大統領はワクチンの生産現場に足を運び、海外からのワクチン輸送の訓練も視察するほどの力の入れ方だった。 その結果、9月には1回目のワクチン接種を受けた人の割合が70%に達した。政府の感染防止策「社会的距離の確保」の効果もあり、感染状況はある程度落ち着き始めた。 「K(韓国)防疫」の成果に力を得た文大統領は、停滞する経済の本格回復に向け、11月に「段階的な日常生活の回復(ウィズコロナ)」に移行した。ところが、社会経済活動の増加とともに感染者数と重症患者数が急速に増加。加えてコロナの変異株「オミクロン株」という新たな脅威も出現した。 文大統領は11月29日の特別防疫点検会議で「どうにか始めた段階的な日常生活の回復から引き返し、過去に後戻りすることはできない」と述べた。だが感染者の増加に歯止めがかからず、ついに防疫当局はウィズコロナの歩みを一旦止め、再び規制強化に踏み切ることになった。 政界からは、これまで政府が掲げてきた「K防疫」への信頼がぐらつけば、任期末の国政推進力が低下するとの懸念が出始めている。ほかにも、国政の優先順位がコロナ対策と経済回復に置かれたために、それ以外の課題への取り組みが不十分だったと指摘する声もある。 その代表が不動産問題だ。 韓国では不動産価格の高騰が続いている。文大統領は昨年末、不動産問題で批判を浴びた当時の盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領秘書室長に代えて兪英民(ユ・ヨンミン)前科学技術情報通信部長官を任命するなど、現状打破を図った。ところが間もなく、青瓦台(大統領府)で経済政策を担当する金尚祖(キム・サンジョ)政策室長(閣僚級)自身の不動産問題が明るみとなった。昨年7月、住宅賃貸料の値上げ幅を従来の賃貸料の5%以内に定めた住宅賃貸借保護法の改正案が施行されているが、金氏はその直前に、保有するソウル市内マンションの「伝貰」(家賃の代わりに入居時に高額を預ける賃貸方式)の保証金を大幅に引き上げる内容で賃借人と契約を更新していた。同氏は今年3月に更迭された。 不動産問題は4月のソウル、釜山の2大都市の市長選にも影響を及ぼした。与党「共に民主党」は両選挙で惨敗を喫し、文大統領は翌日、「国民の叱責(しっせき)を重く受け止める」とうなだれた。1カ月後、就任から丸4年を迎えた際の記者会見でも「審判を受けた」と言及。11月の「国民との対話」では、「今考えると、住宅供給にもっと努力を傾けていればよかったと思う」と述べ、事実上、政策の失敗を認めた。 苦戦する内政に突破口を開くための一手として、文大統領は5月、文政権初代の行政安全部長官だった金富謙(キム・ブギョム)氏を首相に任命した。青瓦台政務首席秘書官の李哲熙(イ・チョルヒ)氏もあわせ、文在寅派ではない人物を起用することで、中間層を中心に民心の離反を食い止め、任期終盤の国政掌握力の持ち直しを図る狙いだった。金氏はコロナ対応の一方で、大企業と協力して若者の雇用創出プロジェクトに着手するなど、独自の存在感を示したと評価されている。 一方、外交面では、任期のぎりぎりまで「朝鮮半島平和プロセス」の進展に望みをつなごうとしている。1月のバイデン米大統領の就任により、トランプ前政権と足並みをそろえてきた朝鮮半島平和プロセスの失速も懸念されたが、文大統領は積極的に懸念の払拭(ふっしょく)に動いた。前米政権の成果を継承しつつも、新政権発足を機に、現在は膠着(こうちゃく)状態に陥っている南北と米の3者間対話を再開させたい考えだった。 そのために5月に米ワシントンを訪問し、バイデン氏との首脳会談に臨んだ。両首脳は、南北首脳による2018年の板門店宣言を土台に、対話と外交を通じて朝鮮半島問題を解決していくとの原則を確認した。 文大統領はこれを踏まえ、9月の国連総会で朝鮮半島の終戦宣言をあらためて提案した。ただ、米国に敵視政策の撤回を要求する北朝鮮と、無条件での対話を求める米国との間には深い溝があり、今もこれといった進展はない。 また、終戦宣言の実現には中国の協力も欠かせないが、米中対立の先鋭化も足かせとなっている。文大統領としてはバランスの取れた外交戦略に頭を悩ませる状況が続いている。 一方、5月の韓米首脳会談では韓米ミサイル指針の撤廃が成果に挙げられている。指針の撤廃にこぎつけたことで、韓国軍はミサイルの最大射程や弾頭の重量などの制限が取り払われ、「ミサイル主権」を確保することになった。
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