外交上のあつれきが深刻な水準に達していることから、経済への影響を懸念する声が高まっている。状況がさらに悪化すれば、実体経済や金融部門の損失にとどまらず、韓国への反発が2次被害を引き起こす恐れもある。
◇日中への経済依存度高い韓国
日本経済新聞が読者を対象に意識調査を実施したところ、90%が李明博(イ・ミョンバク)大統領の独島上陸を許せないと回答し、33%は関税など経済分野で対抗措置が必要とした。
日本や中国が韓国に経済的な報復措置を取れば、韓国経済には致命的な打撃となる。韓国の輸出は、日本から先端技術・部品を持ち込み、中国で組み立て、米国などに販売するという構造のためだ。
今年1~6月期、韓国の日本からの輸入は311億ドル(約2兆4655億円)と、輸入全体の12.4%を占めた。その大半が、韓国の主力輸出品である船舶や自動車、半導体などに必要な部品・素材で、中核部品の対日依存も少なくない。
現代経済研究院のイム・ヒジョン研究委員は「日本が露骨に輸出を減らすことはできなくても、新製品や追加分の輸出などで非協力的になる可能性もある」と指摘した。
一方、中国は韓国にとって最大の輸出先であると同時に生産拠点でもある。1~6月の対中輸出は全体の23.2%にあたる594億ドルだった。韓国経済の成長を支える輸出の相当部分が、中国の影響力下にある。韓中のあつれきが強まれば、中国が「実力行使」に乗り出すこともあり得る。
LG経済研究院のイ・グンテ研究委員は「貿易報復の可能性は日本より中国のほうが大きい」と指摘。しかし、サムスン経済研究所のパン・テソプ主席研究員は「現在は韓日中とも経済が良くないため、貿易報復などには慎重だろう」と話した。
◇金融分野に心理的な動揺
3カ国の外交面の摩擦で、金融分野にも混乱が予想される。代表的な例が、韓日が緊急時に外貨を融通し合う通貨スワップ協定だ。日本の読売新聞は、李大統領の独島訪問と天皇に関連する発言への対応として、日本政府が通貨スワップ協定の見直しを考慮していると伝えた。ただ韓国政府は、通貨スワップは日本にも利益があるため、協定を解除する可能性は小さいと見ている。
それでも協定解除の可能性による不安心理は、市場に悪影響を与えているもようだ。金融研究院のキム・ヨンド研究委員は「協定締結が外為市場に安定心理をもたらした。逆に、日本が協定を解除する可能性が示されれば、市場の不安心理を刺激することになる」と指摘した。
日本と中国から韓国に流入する資金も見過ごせない。7月末現在、韓国株式市場のうち海外からの資金は380兆ウォン(約26兆6000万円)で、このうち日本系の資本が1.7%の6兆5000億ウォン、中国系資本が1.2%の4兆4000億ウォン。債券市場でも中国は10兆9000億ウォンで12.2%を占める。比重は大きくないが、一度に動けば波紋を起こすには十分な規模といえる。キム研究委員は、現時点でのリスクは大きくないとしながらも、警戒する見方を示した。
◇韓流輸出、観光収入にも影響
外交問題は国民感情を悪化させ、2次被害も引き起こすと予想される。まず、韓流文化輸出への逆風が考えられる。上半期の国際収支で、映画やテレビ番組制作、音楽録音・制作などを含む音響映像サービスの収入は1億3700万ドルと、同期ベースで過去最高を記録した。
しかし韓国への反発が強まれば、これら韓流輸出は減少せざるを得ない。実際に日本の衛星放送局は、独島まで泳いで渡る行事に参加した韓国俳優ソン・イルグクさんが主演した韓国ドラマの放送を無期限延期した。
韓流輸出の減少は消費財輸出にも響く。輸出入銀行によると、文化商品輸出が100ドル増えれば消費財輸出は平均412ドル増えるという。
また、国内総生産(GDP)の5.2%を占める観光産業の被害も避けられない。昨年訪韓した日本人観光客は329万人、中国人観光客は222万人で、その合計は訪韓観光客の56.3%を占める。特に中国人観光客は韓国で1日平均254ドル、日本人は234ドルを使っており、米国やフランスの2倍となっている。
締結を目指し現在推進中の韓日自由貿易協定(FTA)=日本側名称:日韓経済連携協定(EPA)=、韓日中FTAの交渉にも赤信号がともりそうだ。韓国に対する国民感情が悪化すれば、国民的な同意が必要なFTA締結をつまずかせることになりかねない。
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