韓国ロックバンド「Nell」
韓国ロックバンド「Nell」
韓国のモダンロックバンド「Nell」(キム・ジョンワン、イ・ジェギョン、イ・ジョンフン、チョン・ジェウォン)の音楽は、どこか陰があり幻想的だが、ゆっくりと燃えるような感情を引き出すような叙情性がある。歌謡界では、このような音楽に触れるたびに「Nellらしい」と言うらしい。

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 いつ、どこで聞いても「あ、Nellだな」と浮かび上がるだけでなく、類似したサウンドに彼らの名前を代名詞として当てるのは、「Nell」が一本の道をしっかり着実に歩んできた証拠ともいえるだろう。

 1999年にグループを結成し、2001年にデビューアルバムを発表した「Nell」が12年間リリースしてきた音楽は、重心がはっきりしたものだった。韓国の「Coldplay」と呼ばれ、美声のボーカルとヒーリングを与えてくれるサウンドが特徴だ。

 今月発表したミニアルバム「Escaping Gravity」も、彼らの長所がそのままに出ている。このアルバムは、昨年12月に発表した「Holding Onto Gravity」に続く”重力”3部作中の2作品目だ。

 先ごろ、ソウル市内でインタビューに応じた「Nell」は「僕たちが拒否できない代表作なのが、重力」とし「普段は感じることができませんが、全てのことに影響を及ぼしているのではないでしょうか。僕たちは悲しみ、寂しさ、喜びなど様々な感情をいつも感じていますが、存在の実体は認識することができません。人生の中の感情を重力に例えて、音楽の中に溶け込ませたかったのです」と説明した。

 人間の様々な感情に精密に接近するため、収録曲に合わせて映画のワンシーンのように特定の状況に主人公を登場させた。全曲を作詞、作曲したボーカルのキム・ジョンワンは「短編映画に興味があり、ふと浮かぶシナリオをメモしておきます。今回も曲を書くとき、頭の中に漠然とした映像が浮かんできました」と語る。

 1曲目「Boy-X」は銃乱射事件、殺人など絶望感に怒りを露わにしている人が主人公であり、「Haven」では薬物に依存し現実逃避している男が自身を愛する恋人に対して泣くな、と対話するシーンを演出したという。

 タイトル曲「Ocean of Light」では、自身を閉じ込める壁を壊し、楽観的な思考で夢を成し遂げる主人公が登場し、「Bum」では戦闘的な暗闇に立ち向かうキャラクターが描かれている。

 メンバーたちは「挫折、切望感からどのように脱出するのかを語るようなアルバム」とし「一貫したテーマの中で過程と方式が異なるキャラクターが登場する」と紹介した。

 そのため、今回のアルバムは前作とは少し異なる次元の”慰め”が込められている。

 「僕たちの音楽が、以前はどん底から這い上がろうという慰めのメッセージだったとすれば今回は『Ocean of Light』のようにポジティブな気持ちで頑張ろうと、より明るい気持ちを込めました」(キム・ジョンワン、イ・ジェギョン)

 毎回、このように感度の高い音楽作業は簡単なものではない。地元の友人、同窓生など1980年生まれの同い年4人が友情で集まったというが、時には情熱が冷める瞬間、スランプに陥ることもあるのだ。

 キム・ジョンワンは「4人が同じように情熱で漲っているときもあれば、そうでないときもあります」とし「メンバーによって異なった情熱のサイクルがあり、それがバンドのスランプといえるでしょう。気持ちを引き締めなければならないときは、メンバー全員で意気投合して話し合い、そうでないときは、みんなで緩く作業しますよ」と話し笑った。

 「このような過程が、今ではとても自然に感じていますが、情熱がないのならばアルバムは出せませんよね。上手くなりたい、という欲があるためストレスも感じますが、音楽はいつも楽しい”過程”です。だからこそ、喜びも大きいのです」(イ・ジェギョン)

 結成当時、「Nell」の出発はインディーズだった。以降、彼らは2002年ソ・テジが手掛けたレーベルに入ることとなり、ロックファンより注目を浴びる。2004年の2ndアルバムを出した後、ソ・テジの手から離れ2006年3rdアルバムからは、響きエンターテインメントに移って大衆的な領域を構築したのだ。

 そのため、彼らはインディーズと主流の境界にいるチームともいえる。

 「最近は、インディーズの概念が曖昧になりましたよね。『Nell』は音楽を直接作り、大型レーベルにいた経験もありません。しかし、外部資本でアルバムを作り、弘大でクラブ中心の公演に邁進することもありませんでした。いつもアンダーグラウンドとメジャーの境界にいたような気がします」(キム・ジョンワン)

 イ・ジェギョンとチョン・ジェウォンは「『Nell』のポジションは、国内音楽界でまさに”真ん中”」とし「僕たちが決定するのは音楽だけ、位置を決めるのは僕たちではない、その次は”運”ですから」と付け加えた。

 キム・ジョンワンは、旅行をする度に「Nell」の音楽をもう一度聞きながら軌跡をなぞってみるのだという。

 「初期の音楽は率直で、いきいきとした感情がありましたが、それを表現する老練美が足りなかった。それから、27歳に出したアルバムまでは、ぶつかるのが難しい痛み、悲しみ、喪失感に関する内容が多く、若かったなと感じます。でも、30代に入ってからはサウンド的に何か入れ込まなければならない、と悟ったようです。以前は密度があるように曲を作ったとすれば、30代からは空間と余白を持たせるサウンドに魅力を感じるようになりました」(キム・ジョンワン)

 このように「Nell」の音楽記録はメンバーたちの若い日々でもある。全ての曲が当時のメンバーたちが置かれた状況を表しているのだ。

 イ・ジェギョンは「『Nell』は、僕のユートピアを表現する出口だった」とし、チョン・ジェウォンは「幼い頃の夢を実現してくれた」と表現した。

 またキム・ジョンワンは「20代以降、人生の鮮やかな足跡」とし「僕の青春の軌跡はアルバムと公演しかない。誰にでも平等に与えられた青春の時間を歩んできた証拠です」と強調した。

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