行軍は肉体的にも精神的にもきつい訓練だ(写真/韓国陸軍公式サイトより)
行軍は肉体的にも精神的にもきつい訓練だ(写真/韓国陸軍公式サイトより)
■重装備で歩き続ける訓練
 新兵訓練の5週目に行なわれるのが行軍だ。たとえば、20キログラムのザックを背負って20~30キロメートルを早足で歩くのである。

 通常の歩行よりも速い時速4・5キロで歩かなければならない。戦時中に前線へ早く駆けつけるという意味でも、素早い歩行が義務付けられている。

 とにかく20キロを背負ってみれば、それがどれだけ重いかがわかるだろう。しかも、隊列を組んで全員早足で歩くので、「自分だけが落伍してしまうんじゃないか」という不安に襲われる。

 新兵にとっては大変プレッシャーのかかる訓練だ。人によっては、20キログラムという重い装備を背負うと、歩いてすぐ両肩に大変な痛みを伴い、時間の経過とともに水ぶくれができてしまう。

 これは、とてもつらい。教官もそういう事態を想定し、すぐ応急処置ができるように準備している。

 行軍はおよそ5~6時間で目的地に到着しなければならないため、休憩時間もそれほど多くは取れない。歩き詰めになるのが普通だ。

 しかし、途中で若干の休憩やカップラーメンを食べる時間が取れるときもある。そのときのラーメンはありがたい。苦しく緊張している中で食べるのだが、その旨さが忘れられないと語る人も多い。

■ゴールするまで気が抜けない
 いざ戦争が始まれば、軍人たちが長い距離を移動することはとても多い。そういう意味でも、行軍はとても重要だ。

 まさに、新兵訓練の試金石とも言える。みんなと歩調を合わせてこの訓練を乗り越えないと、その先には進めない。

 逆に言えば、これをやり遂げることによって、ほぼ新兵訓練が終わる。つまり、最後の関門なのだ。

「行軍を成功させればすべてが終わる」

 そういう目標にもなる。みんな、家族や恋人の顔を思い浮かべながら必死にがんばるのである。

 しかし、ゴールが近くなると、それだけで緊張が緩んでドッと疲れが出て倒れ込んでしまう新兵もいる。

 そんなときは、小隊長が「最後まで緊張感を持ってやり抜くんだ。すぐにゴールだと思ってはいけない」と新兵を激励する。

 その末に、ようやく行軍が終わる。およそ500人から600人くらいが一度に行軍から帰ってきてゴールする姿は壮観である。

 新兵たちの顔には「やり遂げた」という充実感がある。まさに、新兵訓練のクライマックスが行軍なのだ。


文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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