同じテレビドラマでも、日本と韓国では違いが多い。
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いくつか列挙してみよう。
・日本の連続ドラマは週1だが、韓国は2夜連続が常識。「月火」「水木」「土日」という具合だ。
・韓国ではCMが入るのはドラマの最初と最後だけ。途中には入らない。日本はいいところでひんぱんにCMが入る。
・日本の連続ドラマは10話終了が多い。韓国は最短でも20話。50話前後も多い。
・韓国のドラマには中学生以下が視聴不可となる作品がある。暴力シーンが多かったり、
倫理観に問題がある作品だったり……。日本にはそういうドラマはない。
以上のとおりだが、制作スタイルでも明らかな違いがある。
それは何か。
「事前制作」と「生放送型制作」の違いだ。
日本は事前制作。放送前に撮影の多くが終了していて余裕を持ってドラマの放送ができる。
一方の韓国は、生放送型制作がほとんどだ。
ドラマの放送が始まった段階では、まだ数話分しか撮影が終わっていない。ストック分がすぐに底をつき、以後は「撮影しては放送、撮影しては放送」の繰り返し。最後のほうになると、「ほぼ生放送」と揶揄(やゆ)される。俳優も制作陣も疲労困憊となる。
■「始めれば半分」
なぜ韓国では、俳優や制作陣が助かる事前制作をやらないのか。
ひとえに制作費の問題である。
日本のように事前制作をやると、俳優やスタッフの拘束時間がとても長くなる。それだけ余計に報酬が必要というわけだ。
もう1つは、韓国人の性格が関係している。なにごとも直前にならないと始めない、という国民性がある。「始めれば半分」ということわざが幅をきかせているのが韓国という国なのだ。
これは「始めてしまえば半分終わったも同然」という意味だが、日本なら「八割終わってもまだ半分」と考える人が多いのではないだろうか。日本に事前制作が多くて、韓国にないのはお国柄も関係しているのだ。
こうした制作スタイルの違いは内容にも影響を与えている。
日本では放送時にあらかた撮影を終えているので、ドラマの評判がどうであろうと、内容を変更することはできない。
しかし、韓国では生放送に近い形でドラマが放送されるので、視聴者の意見によって迅速に内容を変更できる。それだけ、ドラマの展開が視聴者の意向に左右されるわけだ。
臨機応変と言えば聞こえはいいが、要するにプロデューサーも監督も視聴者の顔色に敏感にならざるをえない。その結果、シナリオの書き直しも行なわれ、その度に撮影現場が混乱する。
■ストーリーが逆になってしまう
いよいよ、放送事故の話に移ろう。
韓国の主要なテレビドラマは地上波の3局(KBS、MBC、SBS)で午後10時に一斉に放送される。しかし、放送の直前まで撮影をしている場合が多く、編集が間に合わなくて午後10時に穴をあけてしまうこともある。たとえば、15分遅れでドラマの放送が始まったりする。
ただし、地上波の3局はドラマの前は午後9時からニュースを放送しているので、たとえ午後10時からのドラマ放送ができなくても、生放送のニュースを流して対応する。そんな放送を何回も見てきた。これは、事前制作でない弊害の1つだ。
弊害はまだある。
短時間にあわてて編集をしているので、ときには大きなミスがある。たとえば、話の筋が逆になること。時間の流れで後に入れる場面を前に持ってきてしまって、ストーリーの辻褄(つじつま)が合わなくなってしまったりする。これは致命的なミスだが、編集に余裕がないから仕方がない。
こんなミスは日本のドラマでは考えられないのだが……。
なお、韓国ドラマに回想シーンが多いのも、撮影の分量を少なくして放送時間を確保するための苦肉の策なのだ。
■あの傑作の場合はどうだったのか
韓国ドラマがいかに放送直前まで撮影をしているか。
「冬のソナタ」を例にあげてみよう。
あのドラマで有名なクライマックス。チュンサンとユジンが劇的に再会して、夕日をバックに抱き合う場面がある。
このシーンが撮影されたのは放送最終日の前日。撮影場所がソウルからはるかに遠い外島(ウェド)という小さな島だったので、俳優もスタッフも帰りの飛行機を気にしながらの撮影だった。
果たして、集中できたかどうか。
しかし、撮影はこれで終わりではなかった。放送最終日の夕方にも、ソウルでまだ撮りおえていないシーンの撮影をしていた。
その日の夜にはKBSで「ドラマの成功を祝うパーティー」が開かれたが、ユン・ソクホ監督にのんびりしている余裕はなかった。まだ編集作業が残っていたからである。それでも、午後10時の放送開始に間に合ってホッとしたことだろう。
こんな綱渡りがいつも行なわれている。それでも、あれほどの傑作になるのだ。土壇場で底力を発揮するのも、いかにも韓国らしい。
ところで、最近は韓国でも少しずつ事前制作のドラマが出てきている。いま爆発的な人気を獲得している「太陽の末裔」もその1つ。中国と同時放送をするために、あえて事前制作に踏み切ったが、こういう特別な理由がないかぎり、韓国ではまだまだ「生放送型」の撮影が圧倒的に多い。
(文=康 熙奉〔カン ヒボン〕)
(ロコレ提供)
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