チャン・グンソクも主役として魅力的な演技を披露している。(写真提供:OSEN)
チャン・グンソクも主役として魅力的な演技を披露している。(写真提供:OSEN)
5月17日に韓国で放送された『テバク』第16話は本当に面白かった。視聴率も第15話より1.2ポイント上がって9.6%(AGBニールセンの全国統計)を記録。チャン・グンソクも主役として魅力的な演技を披露している。

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■凄まじい意気込み

 最初からチャン・グンソクは『テバク』に対して並々ならぬ情熱で取り組んできた。

 振り返れば、『テバク』の主演が決まったときにこう語った。

「2年間大学院に通いながら臥薪嘗胆の姿勢で自分を振り返ってきました」

 たきぎの上に寝たり苦い肝をなめたりという故事から生まれた「臥薪嘗胆」という言葉。「大きな目標を達成するために苦労を重ねること」を意味しているが、この言葉を持ち出すほど、チャン・グンソクには期するものがあった。

 彼は『テバク』で、王子でありながら捨てられてしまったテギルを演じる。見どころは、弟に当たる英祖(ヨンジョ)と国を賭けた大勝負を行なうところ。スケールが大きいストーリーなのである。

 チャン・グンソクの意気込みが凄まじいことは、3月24日にソウルで行なわれた『テバク』の制作発表会でも察することができた。

 彼はまったく笑みを見せず、抑揚をおさえた低音で冷静にこう語った。

「この作品をのがしたくない、ぜひやってみたいと考えました。『美男(イケメン)』のようなものを追求する俳優にかぎっていたのではないか、という疑念がいつもありました。(数え歳で)30歳になります。今までのものを捨てて、新しいものを身につけられる作品になるのではないか、と思います」

 内に秘めた決意が感じられるコメントだった。


■体当たりの演技

 韓国では3月28日からSBSで『テバク』の放送が始まった。

 第1話の冒頭の場面。雪が強く降る中で、成人したテギル(チャン・グンソク)が、反乱を起こす李麟佐(イ・インジャ/チョン・グァンリョルが扮している)と厳しく対峙していた。

 このときのチャン・グンソクの演技は迫力があった。

「今までとは違う」

 多くの視聴者がそう思ったことだろう。

 何が違ったのか。一言で言えば「覚悟が備わっていた」ということだ。

「この『テバク』で評価を得られなければ俳優をやめざるをえない」

 そんな切羽詰まった“背水の陣”をチャン・グンソクが匂わせていた。ドラマでは、凍えるような寒さの中で精悍な表情を見せていたが、そのときに見せた強い意志は、チャン・グンソク自身の決意の表れだったのだ。

 このように、彼の覚悟を見せつける場面は『テバク』には随所にあった。

 たとえば、第4話のエンディング。テギルの父親が息子を守るために命を落とし、それを契機にテギルは生まれ変わり、蛇に必死に食らいついて野人のように生きていく。

 まさに極限状態に置かれたテギルをチャン・グンソクは体当たりで演じた。

 かつて「ラブコメの貴公子」と呼ばれた華麗な姿はない。

 むしろ、ドロくさくて粗野だ。しかし、そんな姿をさらしてまで、チャン・グンソクは『テバク』に賭けていた。


■名優に刺激されるチャン・グンソク

 第7話からテギルは最強の師匠のもとに弟子入りして、厳しい修業に明け暮れる。このときのチャン・グンソクも迫力満点だった。

 特に、風雪に耐えて頑張る姿には、多くの視聴者が共感したことだろう。

「華はいらない、魂がほしい」

 そう呼びかけているようなチャン・グンソクの演技。テギルの成長は、まさにチャン・グンソクの俳優としての変化でもあった。

 さらに、名優との競演が最良の刺激となっていた。

 たとえば、第9話でテギルは初めて粛宗(スクチョン)と対面する。この時点では、まだテギルは粛宗が自分の父であることを知らないのだが、王の前にいるので緊張を隠せない。このあたりの臨場感をチャン・グンソクは的確に表現した。

 一方の粛宗。素性がわからない若者を警戒していたが、同時にどこか温かく見守る部分もあった。

 2人は実の親子。そのことを粛宗はうっすらと感じていたのか。

 とにかく、粛宗を演じたチェ・ミンスには、さすがと思わせる名優の風格が備わっていた。しかし、チャン・グンソクも負けていない。感動的な場面では、2人が見事に呼吸を合わせていた。


■堂々たる演技

 韓国では5月17日の放送で『テバク』は16話を終えた。全24話なので三分の二が終わったことになる。

 それにしても、第16話は興味深いシーンが多かった。

 チャン・グンソクが演じるテギルは、自分が永寿君(ヨンスグン)という王子であったことを知る。まさに驚愕の事実だった。ということは、ヨニングン(後の英祖)は弟に当たる。

 しかし、ヨ・ジングが演じるヨニングンはテギルにこう言った。

「ヒョンニム(兄様)とは呼びません。私は王子ですから」

 ヨニングンはそっけなかったが、顔には兄に対する親愛の情が浮かんでいた。テギルにしても、自分の出自がわかったばかりで、すぐに何かを主張する気持ちはまったくなかった。

 粛宗と、母の淑嬪(スクピン)・崔(チェ)氏との面会を果たしたテギル。彼は新しい世界に入っていくことになるのだが、その前に、囚人となった李麟佐から「死んだはずの育ての父が実は生きている」と告げられる。驚いたテギルが育ての父の墓を掘り返したところで第16話は終わった。

 めまぐるしい展開になってきた。その中で、チャン・グンソクはストーリーを大きく動かす堂々たる演技を繰り広げている。

 間違いなくチャン・グンソクの代表作になる。そう実感しながら、第17話からの終盤を楽しみたい。


文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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