イ・ミンホの所属事務所「MYMエンタテインメント」が、彼が兵役の検査で公益判定を受けたと明らかにした。(写真提供:news1)
イ・ミンホの所属事務所「MYMエンタテインメント」が、彼が兵役の検査で公益判定を受けたと明らかにした。(写真提供:news1)
イ・ミンホの所属事務所「MYMエンタテインメント」が、彼が兵役の検査で公益判定を受けたと明らかにした。つまり、軍隊ではなく役所勤務などで兵役を履行することが決まったようだ。これに対して、韓国のネットユーザーから批判の声が起こった。その背景を見てみよう。

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■非常に敏感な兵役問題

 韓国のネットユーザーがイ・ミンホの兵役問題に関して批判しているのは、主に次の二点だ。

「一般人であれば身体に問題があっても3級判定で現役兵になるのに、芸能界のスターなら4級判定で社会服務要員(公益勤務要員)になれるのか」
「公益判定になるくらいなら、なぜもっと早く兵役に入らないのか。あまりに長く延期しすぎている」

 こうした批判が起きるのは、仕方がない面がある。日本からは窺うことができないが、韓国においては男子の兵役問題が非常にデリケートだからだ。端的に言うと、不公平感が出やすい問題なのである。

 一般人の兵役免除率は5%程度なのに、特権階級(大企業の役員、高位公職者、富裕層)の息子たちになると、一時は30%近くに上昇したというデータもある。国民が兵役問題に敏感になるのは、「意図的な兵役のがれ」や「楽な服務で兵役履行」ということが日常的に行なわれていると疑っているからである。

 とはいえ、「批判のための批判」になっている場合も多い。イ・ミンホのケースはどうなのか。


■軍務の代替制度の充実

 イ・ミンホが今回、兵役を司る兵務庁から公益判定(軍務の代替制度を使って役所勤務などで兵役を履行するということ)を受けたのは、過去の交通事故による古傷が理由だった。

 彼は2006年8月、乗っていた車が飲酒運転の車と正面衝突するという大事故に巻き込まれた。その際にイ・ミンホは、内腿と足首の骨折、右膝軟骨破損などで全治7か月の重傷を負った。今でも矯正用のボルトが脚に埋め込まれているというから大変なケガであった。

 これでは、現役兵として21か月(陸軍の場合)の軍務に耐えるのは厳しいと判断されたのも必然であろう。

 しかし、こうした公益判定に対して、「一般人であれば身体に問題があっても3級判定で現役兵になるのに」という批判が起きたが、これはいかにも的外れと思われる。なぜなら、現在の徴兵検査は、身体と精神の健康状態を把握する精度が上がっており、複数の専門医によって総合的に判定するシステムに信頼が置けるからである。

 今は、兵役だからといって「誰でも軍隊に入れてしまえ」という時代ではない。現実的には兵士の数が余っていて、むしろ国防省は韓国軍の兵士の数を大幅に減らす計画を立てている。しかし、北朝鮮と激しく対峙している現実を見据えて、徴兵制そのものを廃止することができないだけなのである。

 その代わり、軍務の代替制度を充実させるのが韓国政府の方針である。その結果として、義務警察隊員や社会服務要員が増えているのだ。これは、若い人材を適材適所に配置するという意味でも社会の要請に合致している。


■芸能活動は兵役延期の理由になる?

 繰り返すが、イ・ミンホが交通事故で重傷を負った経緯を勘案されて公益判定を受けたのは、理にかなった決定であった。

 今の韓国軍は、「いまだ脚にボルトを埋め込んだ若者を軍隊に入れる」という状況ではない。むしろ、役所で勤務することによって社会奉仕に貢献するほうが、本人のためにも国のためにも良い選択なのである。

 公益判定というと、軍務を回避していると見られる風潮が残っていることは否定しないが、以前の感覚で兵役を捉えるのは実情に合っていない。「徴兵検査の精度が上がっている」「韓国軍は大幅な兵士削減が予定されている」という変化を認めなければ、現状を正しく認識することはできないのだ。

 次に、「公益判定なら、もっと早く兵役に入るべし。長く延期しすぎている」という批判について考えてみよう。

 韓国の兵役法によると、「30歳を越えて兵役の延期はできない」と規定されている。文面をよく読むと、30歳までは延期ができるということがわかる。イ・ミンホの兵役計算年齢は今年いっぱいは「29歳」。彼はまだ十分に兵役が延期できる状況にある。

 ただし、韓国で想定している兵役延期の正当な理由は主に「学問のため」。つまり、「在学中」が大きな条件になる。多くの芸能人が「大学や大学院に在学中」を理由にして兵役を延期しているのは、まぎれもない事実だ。

 では、芸能活動は延期の理由にならないのだろうか。

 法律の規定には入っていない。あくまでも兵務庁が、芸能人の活動を評価して兵役延期を認めているのである。逆に言えば、もし兵務庁が認めなければ、対象者はすみやかに兵役入りしなければならない。


■感情論ではなく現実論を!

 イ・ミンホの場合は、韓流ブームの牽引者としての立場を兵務庁が高く評価して兵役延期申請が認められている。いわば、兵務庁のお墨付きだ。

 そうであるならば、一部のネットユーザーが「公益判定なら早く兵役入りすべき」という批判も当たらない。

 イ・ミンホのような人気スターであれば、山のようなオファーの中から適切に判断して次の作品を決めている。

 からだが1つしかない以上は、その活動は限定的にならざるをえないし、タイミングの上でも兵役入りが遅れてしまうのもやむをえないと私(康熙奉〔カン・ヒボン〕)は考える。まさに現実は、「意図的に遅らせているわけではなく、空白期間を作れないほど芸能活動が過密で、結果として兵役入りが遅れている」ということだ。

 一般の人と事情が違うのは当然であり、イ・ミンホなりに最善を尽くそうと努力している。そのことはファンも理解しているはずだ。

 人気スターという立場上、いろいろと言われてしまうのは仕方がないが、感情論ではなく現実論で語ってあげないと、スターも立つ瀬がない。

 兵役問題が韓国で敏感であることは承知しているが、早く兵役入りをしたくてもできない事情を考えてあげれば、スターの側もプレッシャーが幾分かは緩和されるのではないだろうか。


文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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