■法輪が語る人生哲学
もう1つ、日本との違いを実感するのは、僧侶が人生哲学を述べる本がしばしばベストセラーになることだ。
お釈迦様の誕生日が祝日(旧暦の4月8日で今の暦では5月中旬になることが多い)になる国では、僧侶の教えが国民の支持をよく受けている。
そんな僧侶の中で特に人気が高いのが法輪(ポムリュン)である。
この人が2013年10月に出した随筆集『インセン スオプ』が、今に至るまで大変なベストセラーになっている。
ちなみに、「インセン」は「人生」、「スオプ」は「授業」。原題は『人生の授業』となる。
■大事なのは「今このとき」
この『人生の授業』には、「色づいた紅葉は春の花より美しい」というキャッチフレーズが付いている。
ベストセラーになったのは、まさに、中年以降の人たちに安らぎとなる珠玉の言葉があふれているからだ。
いくつか例を挙げよう。
「年を取ると、終わった話をしながら、追憶に浸り、過ぎた歳月を懐かしむ。『あのときが良かった』と思う正にそのときは、果たして幸せだっただろうか。若いときはつらいことが多かったはずだ。過ぎた日々はすべて美しく思えるが、実際にはいつも幸せだったわけではない」
法輪はこう書いていて、過去をなんでも美化するのは、実情にそぐわないと指摘している。
大事なのは「今このとき」であって、思い出の中で美化されていく過去に固執するのは、今の美しさを見逃すことにつながってしまう。果たして、それで幸せなのか、と法輪は問い掛けている。
■鮮やかに色づく紅葉のように
さらに、『人生の授業』から法輪の言葉を抜き出してみよう。
「過去に未練をもたず、未来を恐れず、今このときに忠実に生きれば、その人は常に人生の黄金期にいる。そうすれば、年を重ねても物悲しくなく、人生の最期の瞬間まで幸せに暮らせるだろう」
若い人であれば、この言葉の意味がまだよくつかめていないだろう。
しかし、中年以降になると、「今このときに忠実に生きれば、その人は常に人生の黄金期にいる」というフレーズにしびれてしまう。
人はいつまでも「人生の黄金期」にいたいものなのだ。
さらに、法輪は書いている。
「春に咲く花だけが美しいのか。秋によく色づいた紅葉も大変美しい」
「鮮やかに色づく紅葉のように年を重ねていけば、決して物悲しくはない」
人生にとって何が本当に大切なのか。そのことに気づかせてくれるのが『人生の授業』である。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)
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