■野球とサッカーの強豪国なのに……
なんと、韓国で野球の全国大会に予選から出場してくる高校は55校前後しかない。想定の1割にもはるかに届かない。それでも、韓国は2008年北京オリンピックの野球競技で金メダルを取るくらいの野球強豪国である。
その人材育成を担う高校の野球部なのに、なぜこんなに少ないのか。
わかりやすく言えば、韓国で硬式野球部がある高校が55校前後しかないということだ。サッカー部も同様で、100数校しか全国大会の予選に出てくる高校がないのだ。2002年のFIFAワールドカップでベスト4に入るほどの活躍を見せたというのに、高校のサッカー部はとても少ない。
ここが、高校の部活における日韓の大きな違いだ。
たとえば、日本の高校ならほぼどこでも、陸上部、サッカー部、バスケットボール部、水泳部、野球部(硬式あるいは軟式)、バレーボール部などの人気スポーツの運動部がしっかり揃っている。
生徒は好きなスポーツを選んでクラブ活動を行なうことができる。
しかし、韓国の高校は事情が違う。
■実績がないと高校でプレーできない
韓国の高校では、日本のように人気スポーツの運動部がズラリと揃っておらず、「この高校はサッカー部」「あの高校はバスケットボール部」という具合に、振り分けられてしまっている。
振り分ける理由は、運動部にかかる経費を抑えるためである。どの高校にも人気スポーツの運動部があれば経費がかかりすぎる、というのが韓国の学校スポーツの考え方なのである。
その結果、高校野球の全国大会をめざす学校が55校前後、という極端なことが起こってしまう。
これだけ少ないと、子供の頃から野球の素質がある生徒も必死である。たとえば、中学時代に自分が所属する野球部が全国大会でかなり優秀な成績をあげないと、高校では野球部に入れないのである。
逆に言えば、55校前後の高校野球部に入ってくるのは、中学時代に実績がある生徒ばかりである。つまり、中学までに優秀な成績を挙げておかないと、高校の野球部でプレーできない、ということになる。
このように、中学の段階から実績のない選手を早く振り落としていくのが韓国スポーツ界の現実だ。それは野球だけでなく、サッカーやバスケットボールでも同じである。
■選手層が薄い競技を狙う
日本的な競技スポーツの考え方は、裾野を広げてプレー人口を増やし、その中から優秀な選手を育成していく、というものだ。いわば、ピラミッド型である。
しかし、韓国は違う。大会を通して早い段階から選手を振るい落として、残った少数の選手を徹底的に鍛え上げて、国際大会で優秀な成績を挙げられるようにもっていく。いわば、逆ピラミッド型なのだ。
韓国では、「少数精鋭主義は少ない予算で最大の効果を得られる」と考えられている。徐々に成長していく選手をサポートするといった考えはほとんどない。オリンピックなどで国威発揚の成果を出すためには、限られた予算を特定の選手に集中させるというのが韓国スタイルなのである。
特に、韓国がオリンピックで狙うのは、世界でも競技人口が少ないマイナーなスポーツばかりだ。
たとえば、夏のオリンピックのアーチュリーや、冬のスポーツのショートトラックである。この2つの競技で獲得した韓国の金メダルは他の国を圧倒している。
世界で選手層が薄い競技を狙い、少数精鋭の選手に過大投資する……この方式によって、韓国は2012年のロンドン五輪で13個の金メダルを獲得した。ちなみに、日本がロンドン五輪で得た金メダルは7個であった。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)
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