「越後屋おぬしも悪よの」「この印籠が目に入らぬか!」などのフレーズで有名な「水戸黄門」、桜吹雪の「遠山の金さん」、「必殺仕事人」の主水もんど、「暴れん坊将軍」のように日本には身分を隠し最後にその正体を現して悪を懲らしめる映画やドラマが多いですが、韓国にはこのようなパターンの物語はほとんどありません。
韓国には「暗行御史(あんこうぎょし)」という制度があって、身分を隠して地方の代官の悪事を暴く行政官がいます。身分を隠し最後に悪を成敗するパターンは似ていても、これはあくまでも公式的な制度に則って行っていますので日本のそれとは違います。
ではなぜ日本にあって韓国にはないのでしょうか。
それは多分に国民性だと思われます。日本では歴史上異民族に攻められ本土が蹂躙されたことがほとんどありません。蒙古が攻めてきたときもせいぜい九州に上陸したに過ぎなく、太平洋戦争でも本土に直接アメリカの軍隊が攻めてくることはありませんでした。このように日本は平和が続き外国人「異質の者」と争うより、自国民同士の和を保ち譲り合って過ごしてきました。
反面、韓国は歴史的に北や南から攻められ本土が蹂躙され炎上してきたので、日本のようにたくさんの文化財が残っていません。現代史においても日本からの独立、左右イデオロギーの対立、同族同士が争う韓国戦争(朝鮮戦争一九五〇-一九五三)、独裁政権を打倒した学生革命、軍事革命、民主化運動など約半世紀の間に天地がひっくり返る出来事が目白押しでした。
ですから日本のように和を保ち譲り合う暇がありません。如何に生存するかが問題ですから、他を押しのけても自分の食いぶちを確保しなければならないので、相手を気づかったり配慮するよりも自己主張をし続けてきました。我を通すしかなかったのです。いつ何が起こるかわからないので仮の姿なんて悠長なことを言っていられない状況でしたから韓国人は日本人よりもストレートですし、我が強いと思います。
「水戸黄門」や「遠山の金さん」を見て韓国人は何でそんなまどろっこしいことをするのかと訝しがりますが、日本人はドラマの主人公から「弱い仮の姿は普段の自分だが、実は強いんだ」という代理満足を味わっているのではないでしょうか。
※文=権鎔大(ゴン・ヨンデ)韓日気質比較研究会代表の寄稿。ソウル大学史学科卒業、同新聞大学院修了。出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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