■事前にお墓の草刈りを行なう
韓国は今でも正月とお盆を旧暦で行なう。
特にお盆は「秋夕」と呼ばれていて、墓参りがともなうので、どの家族でも故郷に帰って大忙しとなる。
それでは、どんな風に秋夕を過ごすのかを説明していこう。
韓国では先祖を祀るチェサ(祭祀)の儀式がとても多いのだが、あくまでも家で祭壇にご馳走を並べて行なうのが普通で、意外にも墓参りにはあまり行かない。
その代わり、秋夕は一族総出で墓参りに行く重要な日になっている。
お墓の多くはお椀を引っ繰り返したような「まんじゅう型」なのだが、夏には雑草が丈長く生えるので、秋夕の前に草刈りをする必要がある。それをポルチョ(伐草)と言う。おそらく、韓国のどの地方でも、今月の上旬に大々的なポルチョが行なわれていたことだろう。
■先祖のためにご馳走を用意!
秋夕の日は墓参りに行く重要なお盆ということで、その前日は民族大移動となる。ソウルからは帰郷ラッシュとなり、高速道路は大渋滞して列車は超満員となる。いつもながらの風景だ。
秋夕の当日は、朝に一族が集まってチェサが行なわれる。
前日に一族の女性たちが作っておいたご馳走を祭壇に並べ、秋夕に合わせて地上に戻ってきた先祖たちに、たっぷり食べてもらうのである。
実際に先祖がしっかり食べると想定して、子孫が箸を何度も動かしてご馳走を取る動作を繰り返す。
また、お酒の杯を何度も捧げる。
30分ほどでチェサの儀式が終わると、先祖に捧げたご馳走を列席者たちでいただく。酒も入るので、朝から豪華な宴席となる。
それが終わると、いよいよ墓参りに出掛ける。韓国のお墓は風水の関係で山の中腹や遠方にある場合が多く、出掛けるのも一苦労なのである。
■秋夕の日は「中秋の明月」
ようやくお墓にたどりついたら、ここでもお酒の杯を捧げる儀式があり、子孫がチョル(目上の人に対する挨拶のことで、跪〔ひざまず〕いて頭を下げる動作を繰り返す)を行なう。
韓国の家庭には仏壇がないので、年に1回のお墓参りが本当に貴重なのである。このときに、先祖にしっかりと「孝」を尽くさなければならない。
こうしてお墓参りが終わったら、家に戻って家族が団欒の時間を過ごす。男の場合は、たいていは酔いつぶれることになるのだが……。
そして、秋夕の翌日(3連休の3日目)に、都会の家族は実家を離れ、現在の居住地に戻って行って秋夕が終わる。
なお、秋夕の日は日本でいえば「中秋の明月」である。月がとても美しい日だけに、日本でも月見酒を楽しんでいる人が多いのではないだろうか。
文・写真=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)
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