■「金英蘭法」とは何か
もともと韓国社会では接待文化が強烈に根づいていた。特に公務員は、出入りの業者から接待を受けるのが当たり前だった。そんな風潮が、贈収賄という負の側面を持っていたことは否めなかった。
しかし、接待文化が今後はガラリと変わる。9月28日から「不正請託および金品授受の禁止関係法」が施行されたからだ。
この法律は、推進した政府組織の委員長の姓名にあやかって「金英蘭(キム・ヨンラン)法」とも呼ばれている。
新法の骨子は高額接待の禁止。たとえば、公務員・報道関係者・私立学校職員たちは、1年間に300万ウォン(約28万円)以上、1回に100万ウォン(約9万3千円)以上の金品を本人または配偶者が受け取ると、刑事処罰される。具体的に金額が示されているところが生々しい。
■接待漬けの公務員
接待での会食や贈り物にも厳しい制限がある。
たとえば、3万ウォン以上の会食と、5万ウォン以上の贈り物を受けると罪に問われることになる。
3万ウォン以上の会食、という点が厳しい。夜に飲食をすれば、3万ウォンを越えてしまうのもザラ。それが処罰の対象となるならば、事実上、夜に飲食の接待を受けられなくなる。
さらに、対象者が「金英蘭法」に戦々恐々としているのは、密告制度があること。なにしろ、誰かの違反行為を知らせた申告者には褒賞金が出るのだ。このお金を目当てに、内部告発が増えるのも必然だろう。
なぜ、このような法律ができたのだろうか。韓国社会における接待漬けがあまりに深刻だったからだ。
韓国では公務員が高級品を贈られたり、高級飲食店で接待されたりすることが当たり前だった。不正を暴くはずの検事までもが、高級車を贈られる始末なのだ。
■危機感を強める飲食店
公務員だけではない。
これまでの韓国では、新聞社の記者が取材相手から小遣いをもらったり、食事代を融通してもらったりすることがあまりに多かった。特に、要職にある者は記事に手心を加えてほしくて記者を優遇した。
こうした現実が国民から批判を受け、ついに「金英蘭法」が成立するに至ったのである。果たして、これで韓国社会の病巣が一掃できるだろうか。
一方で、困り果てているのが飲食店である。「金英蘭法」の対象者は400万人もいると推定されている。この人たちが接待の飲食を控えるようになったら、お店としても大打撃であろう。
そこで、飲食店側も知恵をしぼった。法律で禁止される会食は3万ウォン以上。そこで、法律内の3万ウォン未満のコースメニューを作る高級飲食店が続出した。今までより大幅な価格ダウンだが、背に腹はかえられない。生き残りに必死なのだ。
いよいよ施行された新法によって韓国社会はどう変わるか。どんな法律にもウラがあるものなのだが……。
文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)
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