私も食事は早いほうですが、そのスピードにはとても太刀打ちできません。特にそばを食べるときは、味わって食べているのか流し込んでいるのか区別が付かないほどです。
私が半分ほど食べ終わっているかいないかなのに、彼らはすでに食べ終わっていますので、ゆっくり昼食を味わえません。一人、二人がそうなら個人の習慣の差だと言えますが、ほとんどのスタッフがそうです。年も四十代から五十代後半ですから、もう少し落ちついて食べるのかと思ったのですが、若いころの習性で早く食べてしまうとのことです。
彼ら曰く、若かりし頃団体旅行の添乗員を経験していたためで、悠長にご飯を食べていたのでは仕事にならないからだったそうです。添乗員がお客様と同じように食べていたのではスムーズな引率ができません。
このような食事の早さは韓国でよく見られる現象で、何も旅行社のスタッフだけの問題ではありません。全般的に男性なら食事を済ます速度が速いのが特徴です。
これは軍隊生活を経験しているからです。兵役のある韓国では、成人になった男性は体の障害などの特別な理由がない限り兵役に就きます。
訓練所に入ると、はじめのうちは配給された食事が食べられません。臭い匂いがしたり、おかずも満足のいくものではありませんので、だいたい食べ残します。
けれども日が経つにつれ、一日中キツイ訓練を強いられエネルギーを消耗するのでお腹が減り、臭いのなんのといっていられなくなりガツガツ食べはじめます。
一般社会のように、ゆっくり食べていられないのが軍隊での食事です。いつ何時敵から攻められるかわからない状況を想定して食事を取るわけですから、お腹を満たすのみの時間しか与えられず、食事が早くなるのは当然です。
時間内に食べられなければ自分がひもじい思いするだけですから、必死に流し込みます。
今は軍隊の食事も大部改善されたそうです。念のために。
文=権 鎔大(ゴン ヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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