<Wコラム>韓国人の見栄5・変わる結婚式、あなたは本当に「韓国」を知っている?(参考画像/画像提供:news1)
<Wコラム>韓国人の見栄5・変わる結婚式、あなたは本当に「韓国」を知っている?(参考画像/画像提供:news1)
韓国での結婚式の話です。冠婚葬祭の項でもお話ししましたが、結婚式はある意味自己顕示欲を示す格好のセレモニーです。豪華な式場に社会的著名人を集め、立派に育てた高学歴で一流会社に通う息子と家柄の良い花嫁を披露する。まさしく結婚する当事者よりも親の晴れ舞台である感がします。

 しかし、この結婚式の方程式に異変が起きたのですからお伝えする価値があるのです。前に韓国では仲人がなく、結婚式を司るのは主礼だとお話しました。社会的に成功した著名人を主礼に立てるのが慣わしで、こんな立派な人と繋がっているんだと見栄を張るのが通例ですが、何とその結婚式に、名もない現役を引退した私ごときを主礼に任せたのですから驚きです。

 この両家の背景を話しますと、新郎の父は韓国の大手新聞社の部長を歴任し、現在某マスコミ専門学校の総長です。相手方の父親は、鉄道関係の高級公務員でした。新郎は、現代の最先端を行くポータルサイトの課長であり、新婦は大手航空会社のスタッフで係長クラスです。

 このような経歴でしたら大手新聞社の社長か、新郎の会社の代表もしくは鉄道庁長官、あるいは新婦の会社の社長がふさわしい主礼です。

 ですが、なぜ私なのか。

 私は新郎の父親の大学の同級生で、新婦が勤めている航空会社の役員でしたが、彼女とは一面識もありませんでした。ソウルの新郎の父親から主礼の依頼が来たときは慌てました。
 「なぜ私なの?」
 「もし何なら新婦の会社の社長は、私の元部下だから頼んであげるよ!」
 「君も知っているように在日出身の私の韓国語は公式の場で話したら怪しくなるよ」
 「君の元上司の新聞社の社長は主礼をするのが趣味だというじゃないか!」
と、必死の抵抗を試みましたが結局受けざるを得ませんでした。

 「君とは大学から五十年近く付き合ってきたし、私の結婚式の司会もしてくれた縁だから頼む」
 「息子たちも知らない著名人に頼むより、気心が知れた形式張らない君が良いといっているよ!」
 ここまで言われたら、友達の要請を断るわけにはいきませんでした。

 結婚式当日、私は主礼の辞で「今までの韓国の慣行からしたら私ごときが主礼をすることは百%なかったはずです。こちらに列席された方の中には私より、社会的にも学識的にも人間的にも素晴らしい方がたくさんいらっしゃるのに、私がこの席にいるのは、ご両家の両親や新郎新婦が世間への面子よりも家族との縁を選んだからです。皆さんこの両家の飾らない人柄に拍手をお送りください」

 式場には五百人を超す祝賀客が来ていました。日本とは形式が違いますので一概に多いとはいえませんが、日本の基準からしたら驚かれるかもしれません。質素にしたかった両家ですが、人との繋がりを大切にする韓国社会にとって、また新郎の父親の社会的地位からして、決して豪華とは言えない最低限の人数と式場だったに違いありません。


文=権 鎔大(ゴン ヨンデ)
出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)

Copyrights(C)wowkorea.jp 0