抗ガン治療で髪の毛が全部抜けてしまったスヒョン(チェ・ミンソ)。今日は退院日だが、実は病気が治ったわけではない。逆に病状は悪化する一方。姉ジヒョン(ユソン)はスヒョンにこの事実を隠していた。悲しい表情を隠し、ジヒョンが用意したプレゼントは“かつら”。艶があるこのかつらに妙な雰囲気が漂っている。

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来たる12日に公開されるホラー映画『かつら』(制作:コリアエンターテイメント)の出発はかなり魅力的だ。精一杯声を張り上げるべきヒロイン(ユソン)は、不慮の交通事故で声を失ってしまっており、かわいい女優(チェ・ミンソ)は坊主頭にかつらをかぶり、血まみれになることにも躊躇しない。ここに、映画の素材は東洋ホラーとして頻繁に登場する核心アイコンの髪の毛である。

声がない人物のリアクションは、表情でしか表現できない独特感を持っており、髪の毛が見せるホラーの要素はやはり豊富だ。その上、かつらに血まみれのヒロインの姿で、表現の余地ははるかに広がっている。

家に帰ってきた2人。衰弱した腕でかつらを手にするスヒョンに、次から次へとおかしな出来事が起こる。まるで他人になったかのように、かつらをかぶったスヒョンの容姿は目に見えて健康になっていく。絶望的だった病状もやはりどんどん良くなっていくが、理解しがたい言葉を発するようになり、ジヒョンの昔の恋人ギソク(ムンス)を誘惑するなど、徐々に奇怪な行動が増えていく。

そこへ、かつらを借りて使っていたジヒョンの友達キョンジュが、無残な死体で発見されると、恐怖は劇的に走りだす。かつらに何かがあることを直感したジヒョン。しかし人々は彼女の言葉を信じようとせず、愛らしい妹スヒョンは段々異質的な恐怖を感じ始める。

魅力的な要素ばかりで出発した映画に、監督は姉妹間の絆と反目、記憶と愛情など、色々な話を織り込み、パズル合わせのような楽しみを提供する。過去と現在を行ったり来たりしながら進められる映画のパズルはかなり精巧。しかし、ぎっしりと連結されているだけで有機的に流れないという理由で、恐怖や悲しみの感興が出てくることは難しい。既存の他ホラー映画のように、色んな話が一度に溢れ出て重なり、最後の破局は多少無理矢理な設定で、状況理解を強要しているように思えるところが、この映画の惜しいところだ。

ストーリーの強弱と長短の差が平易で、若干は長くなるような感じと共に、恐怖が映画の流れに乗りきれず、効果的によく練られたシーンではあっと驚かせ、そのシーンだけでくるくる回るのみで、ストーリー全体には活かされず空回りする。たった一言のセリフもなく、感情の変化や恐怖を表情と体だけで見せ熱演したユソンと、1人2役をこなしたチェ・ミンソの渾身の演技だけが、その新しい可能性として映画を支えている。

短編『パンと牛乳』を作ったウォン・シヨン監督の長編デビュー作として『桃色の靴』『女子高怪談4』に続く、今年の夏3番目にお目見えする韓国産ホラー映画である。

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