山になった島、ソウル「ハヌル公園」で眺める「IZ*ONE」誕生の地(提供:WoW!Korea)
山になった島、ソウル「ハヌル公園」で眺める「IZ*ONE」誕生の地(提供:WoW!Korea)
産業化と都市化の時代。社会の急激な変化の中、夢を求め故郷から都市に集まってきた若者たちは苦労して仕事を探す。やっと仕事が見つかり、少しずつ生活に余裕ができ、家族を作ったり、子供が生まれたり、都市の人口は急増する。それは東京もソウルも同じだった。

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 時間が流れ、若者の「夢」は都市の「欲望」に変わっていく。豊かに成るほど生活は大量の消費を求め、また大量のゴミを生む。1950年代から東京のゴミを埋め立ててきた「夢の島」はその名前から夢と欲望とゴミの関係が潜んでいる。

 東京の欲望が埋め立てられた「夢の島」が公園となった1978年、ソウル西部の「蘭芝島」(ナンジド)にはソウルの欲望の埋め立てが始まる。ソウルを流れる漢江(ハンガン)に囲まれた小さな島。名前のとおり、蘭の花が香っていたここにゴミが積もられ、悪臭の島と化けていく。埋め立ての予定量を超えても、他の埋立地が決まらない。都市の欲望の大きさに比例して、ゴミの山は段々高くなっていくばかりだ。

 15年後の1993年になると、高さ98mのゴミの山が出来てしまった。ゴミの山としては世界記録である。ゴミを運ぶ2トンのトラックを基準にすると、5,500万台分のゴミの山だ。韓国の人口が約5,500万人であり、一人一人が2トンのトラック一杯のゴミを出した計算になる。1,000万人のソウル市民だけならば一人一人が10トン以上のゴミをこの島に捨てたこととなる。

 巨大なゴミの山に化けてしまった「蘭芝島」は物凄く嫌な匂いを発する「都市の問題児」となった。何とか手を打たないといけない。1996年からは安定化の工事が始まった。

 日韓共催のワールドカップが開かれた2002年にまで続いた工事の結果、ゴミの山には土が被せられ、4つの公園が出来た。最も空に近い公園には「ハヌル公園」(空の公園)という名前が付けられた。

 高度成長期には黙認されるしかなかったこの場所に対する「申し訳ない」気持ちの表れなのか、今は環境生態の空間として数々の植物が栽培されている。あちこちにゴミからのメタンガスの利用や自然エネルギーの発電も行われている。これは「夢の島」に巨大な温室を助成した東京の気持ちと同じだろう。

 この「ハヌル公園」に登ると、ソウルの名所が一望できる。遠くに北漢山、南山、漢江などが見えてくる。近くには気になるビル群が見えてくる。ワールドカップの競技場やメディア企業が集まる上岩(サンアム)地区である。

 この地区を代表するビルの一つが「CJ ENMメディアセンター」である。日本の「AKB48」で活躍していた若者たちが韓国に渡り、熾烈な競争を通じて選抜されていた場所だ。今や「IZ*ONE」として世界進出を狙う日韓連合の女性アイドルグループの発祥の地である。

 夢を求めて都市に集まった若者たちの挑戦、夢を求めて海まで渡る若者たちの挑戦。
いつかその夢は現実になり、またいつかは欲望に変わったり、それがまた時代を越えて再生されたりするのだろう。その夢に関する物語が埋もれているここ「ハヌル公園」で、AKBを超えて新たな夢を求め自らを再生していきたい日本の若い女性3人を思い出す。

ソウルの旅は続く。
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