北朝鮮側は男性の遺体を焼却していないとしている中、韓国国防部(防衛省に相当)が情報の再分析に着手したという。
29日、韓国国防部のムン・ホンシク副報道官が定例会見で明らかにした。韓国国防部は既に沢山の情報を分析した。国防部は北朝鮮側が男性を銃撃した後、遺体に油をまいて燃やしたと24日に説明。
これは南北関係の改善をモットーとし、「終戦宣言」を業績とする現政権に致命的な結果となる。
北朝鮮は韓国大統領府「青瓦台」に通知文を送ったとされている。事件について、海上にいた男性に射撃を実施、その後、遺体は見つからず、男性が使っていた”浮遊物”を焼却したと説明している。遺体を焼却したとのことではない。
両方の経緯を踏まえれば、南北双方の説明に食い違いがあるのは明らかだ。
韓国国防部のムン副報道官は「24日の当時に発表した内容は情報を一つにまとめたものを説明したものである」とした。また通知文と一部内容が違うか所があり、関連資料を再調査中だと言及した。
国防部のムン副報道官が会見した同日、韓国海洋警察庁もこの事件につき、中間捜査結果を発表した。
海洋警察庁のユン・ソンヒョン(尹晟鉉)捜査情報局長は「男性の個人情報(名前、年齢、身長、出身地など)を北朝鮮が細かく把握していた。男性が北朝鮮側への越境の意思を示した状況なども確認した」と発言した。
海洋警察庁は発表の中で、男性がライフジャケットを着ていたこともあり、自殺を図った可能性や足を滑らせて海上に落ちた可能性は非常に低いと判断。
会見では男性が北朝鮮側海域で発見された当時、ライフジャケットを着用し、放心状態で浮遊物につかまっていたことも確認したとした。
局長は、男性が延坪島周辺海域のことを熟知していたとした上で、「今までの捜査結果から、北朝鮮に越境したものと判断した」とも述べている。確証はないが、事故よりは「脱南越北」(北朝鮮への亡命)と判断している訳だ。
射殺された男性は海洋水産部(省に該当)所属の国家公務員。9月21日、韓国北西部・小延坪島付近で漁業指導船乗船中に行方不明となり、22日に北朝鮮軍に射殺された。
中間報告書では今までの発表通りの情報であるが、遺体の焼却についてはやはり食い違いが生じている。射殺もそうだが遺体を焼却することも大変許しがたい行為である。
なぜこの食い違いが生じたのか。それは、北朝鮮が韓国側に送った謝罪の通知文には含まれていない内容を韓国軍や駐韓米軍が把握していたからだ。
実際、韓国軍と米軍は射殺・焼却の状況をリアルタイムに把握していたようだ。報道の初期、韓国軍の関係者から「本当に射殺するとは思わなかった」との表現もこぼれていた。韓国軍は常に北朝鮮軍の命令系統の無線を傍受(盗聴)していて、射殺と焼却の瞬間、黄海の上空には米軍の情報収集機が飛んでいたとの説に説得力がある。
この事件はまだ疑惑が多い。不況の韓国、職業として国家公務員は大勢の韓国青年の夢である。その公務員が賭博をしたとしても、3000万円ほどの借金を抱えていたとしても、少し前に妻と離婚したとしても、「脱南越北」はなかなか選択肢にならない。家族らに退職金や年金をまともに残せないからだ。
公務員証を船に残したことも、疑惑が抱かれている。もし「脱南越北」ならば北朝鮮当局が最も歓迎するはずの証明書であるからだ。
出航当時には問題なかった防犯カメラが故障したことも、「陰謀論」の根拠になっている。普段は「ON」になっていた日本製の船舶自動識別装置船「AIS」が男性の失踪当時には何故か「OFF」になっていたとの証言もある。
今回の事件は南北関係に大きな意味を持つ事件である。日本人拉致被害者の一部が帰国した時、北朝鮮との関係改善の寸前に拉致日本人の遺骨が違っていたように、その後の時代に大きな影響があり得る事件である。
射殺の経緯や焼却の対象に対して北朝鮮が偽りの謝罪をしたならば、南北関係は深刻な状態になる。その「謝罪文」が都合の良い解釈になっていたならば、政権に深刻なダメージとなる。何か「陰謀」があるならば、韓国社会はまたも大変な混乱を経験することになる。
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