(画像提供:wowkorea)
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日本の統治時代を通じて近代化された韓国。軍隊の兵役制度もその例外ではない。

 太平洋戦争の間、朝鮮半島出身の大勢の若者が日本の軍人となった。当時、半島出身が日本の軍人になることは、社会的な出世の方法であり、経済的に困窮な家族を救う方法でもあった。

 大勢の朝鮮の若者が日本軍に入ることは、永遠に続くと思われた帝国の中で、朝鮮民族が認められる良いチャンスだと思っていた朝鮮の知識人もいた。神風特別攻撃隊として亡くなった若者もいたし、終戦後に”戦犯”として裁かれ死刑になった若者もいる。

 無事に故郷に帰ってきた若者は、5年後、朝鮮戦争に巻き込まれる。ソ連の武器を持つ北朝鮮軍に対して、韓国軍は米軍の武器で対抗した。その中、日本軍として訓練され、日本軍の制度を学び、日本軍として戦争を経験した大勢の若者の存在は大きかった。

 その後、70年の歳月が流れた。韓国軍の隅々には日本軍の名残がある。軍隊が無くなった”本家”日本には残っていないものもある。

 北朝鮮との”休戦”状態で韓国は徴兵制を維持するしかなかったが、服務期間は段々短くなってきた。しかし、まだ2年余りの時間を社会と隔離される若者の負担は大きい。

 職業キャリアの中、20代に2年間の空白期間を持つことが致命的な場合もある。スポーツ分野や音楽分野の場合、20代にその最大の成果が出る場合が多い。しかも、その仕事を続けることが、軍人として働くことより、圧倒的な「国威宣揚」になる場合もある。

 日本の名曲「上を向いて歩こう」。坂本 九のこの曲は「Sukiyaki」という題名で米国でも発売された。1963年6月15日にはビルボード「Hot 100」1位の偉業を成し遂げる。そのビルボード1位を2020年9月、韓国のアイドルグループ「BTS(防弾少年団)」の「Dynamite」が成し遂げた。しかし、この曲は韓国の兵役制度に対しても「ダイナマイト」になっている。

 この1か月の間、余りにも「国威宣揚」が続くために、スポーツ選手や純粋芸術分野に限って制度化されていた兵役特例を「BTS(防弾少年団)」にも与えるべきとの声が出ている。若い女性ファンの声ではない。韓国の与党から上がっている声だ。

 徴兵制は「公平性」が担保されないかぎり、維持が出来ない。しかし、2年間の空白は世界的に人気絶頂のこの若者たちに対して計り切れないマイナスになり、それは韓国の「国威宣揚」に対しても大きな”機会損失”となる。

 ここで韓国政治ならではの素早い「法を変える」試みが起きている。世界的なブームを巻き起こしているこの若者たちを、韓国の政治家が利用したいのかもしれない。

 現在、韓国国会では「大衆文化芸術」分野における優秀者の場合、満30歳まで入営が延期できるようになる法案がある議員によって発議中である。

 与党「共に民主党」の最高委員は「BTS(防弾少年団)は1兆7千億ウォン(約1550億円)もの経済的な波及効果をもたらしている。韓流ブームの拡散・国威宣揚の価値は予測できないのではないか」、「これから兵役の特例を論議しなければならないだろう」と5日の党最高委員会議で発言した。

 委員は「今は新しい時代。(文化芸術には)様々なアーティストの分野があり、区分しにくい場合もあるだろう。この時代に一部(BTSのような大衆文化芸術)だけ兵役特例から除外するのはいかがなものだろうか」という趣旨の発言をした。さらに兵役法改正案を準備しているとも述べた。

 もし兵役法改正案が実行されたとしても、それに立ちはだかるハードルは極めて高い。韓国の若い有権者にとっては公正性の問題は大変敏感な問題である。「タマネギ男」チョ・グク前法相の騒動も、「タマネギ女」チュ・ミエ現法相の騒動も、それぞれ20代の息子や娘が自分の努力ではなく、親の能力で”特別な待遇”を受けたとされることが問題の発端である。「兵役特例」になると、それに直結する問題でもあり、なかなか結論を下すことが難しいはずだ。

 若者の反発を織り込み済みで改正とするか、慎重に判断して結局は改正をやめるか。アーティストと一般人の間で、大きな問題が揺れ動いている。やはり「ダイナマイト」のパワーは凄い。

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