結論は雇用の促進。アメリカ人の雇用を促進するため、国内で公共事業などの仕事を創出し、職に就けない人を減らす政策を強力に実施した。結果、この政策は見事に成功し、雇用促進と経済回復につながることとなった。「ニューディール政策」の話である。
2020年、世界は新型コロナウイルスの影響で、大恐慌のような危機に嵌っている。90年前の1930年代の状況と似ているとも言われている。日本にも韓国にも失業が続出し、この問題をどのように解決していくのかが両国の最優先課題となっている。
2017年5月の執権後、最低賃金を急ピッチで上げていく奇抜な経済政策を推進してきたムン・ジェイン(文在寅)大統領。それが裏目に出て韓国経済は疲弊していたのは周知の事実である。2020年の1月まではその経済政策の失敗が原因で、2020年4月の総選挙は大統領の執権与党が惨敗すると予測されていた。
2月からのコロナ禍。5年前の2015年、中東呼吸器症候群「マーズ(MERS)」の防疫失敗でパク・クネ(朴槿恵)前大統領により左遷されていたチョン・ウンギョン(鄭銀敬)氏が大復活を果たす。彼女の陣頭指揮は見事に機能し、韓国の防疫システムは「K防疫」と言われることになった。
これで2年以上の経済政策が失敗していた文大統領も復活した。「経済失敗」より「防疫成功」をより高く評価した韓国民は、総選挙で300席の議席の中、60%を文大統領の進歩系与党に与えた。そして、文大統領には2022年の任期満了の前にもう一回、大きく経済政策にドライブをかけるチャンスが訪れたのだ。
そのタイミングで登場したのが「韓国版ニューディール」と名づけられた政策である。そう「言われている政策」ではなく、そう「名づけられた政策」である。文大統領は自らこれを新しい経済戦略として活用していく姿勢を表明している。
「韓国版ニューディール」は、160兆ウォン(約14兆円)を5年間投入していくという巨大経済政策。190万の雇用を創出するとのことだ。この政策は大きく3つに分類なされている。
1)デジタル・ニューディール、
2)グリーン・ニューディール、
3)セーフティネットの強化、
がそれだ。
1つ目の「デジタルニューディール」は主に「5G通信」を基盤とし、学校や道路など社会的インフラ管理のデジタル化を柱としており、これはどちらかといえば通信事業に関連しているところが大きい。
しかし、既に影が見えてきている。野心満々に「世界初」を宣言していた韓国の5G通信であるが、そのインフラの拡張が予想より進まない。また5G通信がまだ「キラーコンテンツ」を見つけられないまま、通信料金のアップに対する反感も大きくなっている。4G通信を導入した時代のように、新しい通信規格のスムーズな定着はまだ見られていない。
ただ、米国の中国けん制は追い風となっている。世界の5Gインフラ需要を吸収すると思われていた中国企業が欧米や日本などで排除されているからだ。関連機器を製造する韓国企業はチャンス迎えている。今週サムスン(SAMSUNG)電子の株が歴代最高価を更新したことにはこのような背景もある。
2つ目の「グリーン・ニューディール」はその名の通り、風力・太陽光発電を活用した「再生可能エネルギー」をさらに普及させることがキーポイントである。電気自動車・水素自動車を導入して環境に配慮している姿勢を見せる革新系らしい意図もあると思われる。
しかし、電気自動車においては、既に問題が発生している。韓国を代表する「現代自動車」の電気自動車「コナEV」の出火事故が相次いでいるのだ。2017年から既に推進してきた「原子力発電の放棄政策」や「太陽光発電の推進政策」も当然ながら緑地破壊などの副作用や事業推進に関する疑惑で大変な状況になっている。
3つ目の「セーフティネットの強化」は雇用や社会のセーフティネットを構築することをその主な内容としている。特に雇用セーフティネットに関しては、「自営業者に対する雇用保険」など、またも奇抜な政策の話が出ている。傷病手当の導入なども政府が推進したり、就職の支援を強化していくという。
2017年、米国の「オバマケア(医療保険制度改革)」の影響から名付けられた「文在寅ケア」は、韓国の国民健康保険の財政依存度を劇的に高めている。パク・クネ(朴槿恵)前大統領の父親である故パク・ジョンヒ(朴正煕)元大統領の時代、日本の国民医療保険制度をほぼそのまま韓国に導入し、数十年間を健全に運用してきた経緯のある制度だ。
文大統領は自ら「韓国版ニューディールは進化を繰り返し、構想の段階をすぎて本格的な実行段階に入った」と言ったり、「デジタル革命とグリーン革命は文明史的な大転換で、理念と政派は勿論、国境を超越した時代的課題」と言っている。また、これらに対して「避けることができず、他の選択はあり得ない。」と強調している。
文大統領はこれらの政策について「韓国の未来を開く鍵」と発言しており、この政策にかける思いは大きいようだ。彼は2年後の退任の後、「韓国のルーズベルト」になるのか、逆に「元大統領の前轍」を踏むのか。「韓国版ニューディール政策」は彼自身を救えるのか、気になるところである。
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