韓国「政権交代」の象徴キム・デジュン(金大中)元大統領。ノーベル賞の「平和賞」を受賞した。(画像提供:wowkorea)
韓国「政権交代」の象徴キム・デジュン(金大中)元大統領。ノーベル賞の「平和賞」を受賞した。(画像提供:wowkorea)
韓国が日本に対して持っている「優越感」と「劣等感」の混乱には歴史的な「序列意識」が背景にある事を解説してきた。そして未だに日本を「序列の下」と見下す様々な分野が有る。

 それらをまとめると(1)国際的にも認められるランキング表上の順位が根拠となっており、(2)そのランキング上で韓国が日本よりも高順位にランキングされている場合、また(3)そのランキング・順位の基準において日本が短期的に韓国を上回る可能性が低い場合に、しばしば見られると言えよう。

  以前は「英語力」、就中、TOEICと言う英語力の平均点を挙げたが、今回は明確なランキング表は無いものの、1990年代の「民主化」以降に韓国が「日本には政権交代が無い」と言って日本を見下す事を指摘したい。

 大統領制では米国、議院内閣制では英国が自由民主主義の諸国において、理想的で先導的なモデルとしての政治体制を持つと看做される国であるのは日韓両国において相違は無い。

 しかし韓国においては、米国でも英国でも、大統領選挙や議会の総選挙を通して何度も政権交代をしており、「韓国も同様だ」と言う認識がある。これが「政治的な成熟度」と言う基準と同一視されている。つまり「自由民主主義の政治体制=政権交代が有る」と言う認識で、これが基準化されているのだ。

 政治学者の評価であるが、1980年代までの韓国人留学生は日本を始めとした自由民主主義の政治体制、西側諸国の政治体制をよく学び、いずれ韓国でも導入実現したいと謙遜な姿勢で日本の政治体制も学んでいたそうだ。

 ところが1990年代から、民主化を成し遂げた韓国は、日本の未熟・未開な政治からは学ぶものは無いと言う態度に一変してしまい、釈然としないものを感じたと言う。

 言い換えれば、韓国人にとって自由民主主義の政治体制下での政治的な成熟度とは「政権交代が有る」か否かであって、その頻度が低かったり、皆無であったりするのは、「未熟・未開な政治・国民の証」か、実際には「自由民主主義ではないのだ」と言う認識の反映であったのだろう。

 そして、アジアで選挙による平和的な政権交代に関しては、韓国が最も進んでいるとの「アジア自由民主主義の盟主論」が韓国を支配することとなった。それは韓国を統治していた日本を追い越した珍しい成果でもある。その論理によって「世界自由民主主義の盟主」米国の次に、「アジア自由民主主義の盟主」韓国が「序列」入りして「安心」できるようになる。

 日韓の政治に関する会話は数多く経験して来たが、確かに日本の政治を見下す韓国人は皆押し並べて、政権交代の無い日本は中国や北朝鮮同様の自民党一党独裁とか、国民の政治意識が低いとか、未熟・未開だとか言う。

 故に2009年9月、日本に民主党政権が誕生して、与野党間での政権交代が起こった際、韓国人の多くが、「日本政治が一歩前進したが、定着するまでは様子見だ」と、所謂「上から目線」で日本の成長を期待する等と言っていたものだ。

 こうした会話を通して感じたのは、「英語力」ランキング同様、外形的に見えるもので「上下関係」や「序列」を設定し、日本や日本人との相対的な順位を確定し、韓国・韓国人が上位・優位にあるとした場合には「マウンティング」を取って、見下しているのだなぁと感じた。

 しかし問題なのは、外形の重要さは否定しないものの、内実の重要性である。この間にも指摘して来た事だが、「法の支配」に基づく「法治」、国家や社会に対する信頼(ソーシャル・キャピタル)、政策の効率性やパフォーマンス、社会経済的な安定性、と言ったなかなか外形的に見えづらく、ランキング評価しづらい要素についてだ。

 韓国人の多くが自分もしくは自分の子供は移民して、韓国ではなく外国で生きたいと考えているのは、しばしば指摘されている事実だ。何故ならば、韓国政治とそれによってもたらされている韓国社会と経済の実態には、ウンザリしている人が多いからだろう。

 自由民主主義の体制では政権交代が付き物なのに、日本にはそれが無いといった態度で他国・他民族を見下す前に、外形的な順位や基準ではなく、内実の重要性に目を向ける姿勢と態度が必要なのではないかと考えた。

 そして、その「自由民主主義の政治体制=政権交代が有る」と言う認識の出発点自体が果たして正しいものなのか。他の事柄においてもランキング表の基準や尺度自体が正しく相応しいものなのか。

 そう言った疑う姿勢やリテラシーと、現実の内実を直視する態度が韓国にとって必要なのではないかと思った。「日本には政権交代が無い」と思う韓国の優越感が「アジア自由民主主義の盟主論」に繋がっているからだ。

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