パク・ヨンソン(朴映宣)ソウル市長選挙立候補者とK注射器メーカーの副社長(画像提供:wowkorea)
パク・ヨンソン(朴映宣)ソウル市長選挙立候補者とK注射器メーカーの副社長(画像提供:wowkorea)
韓国の革新系執権与党「共に民主党」のパク・ヨンソン(朴映宣)ソウル市長選挙立候補者の言葉が日韓両国で話題だ。

「日本に注射器を送るべきかどうか?」

この言葉は、朴候補のSNS内容。日本にとっては訳のわからない、大きなお世話だ。

韓国は素早い。新型コロナウイルス感染症が蔓延している世の中、ワクチン接種用の最小残余型(LDS)「特殊注射器」を素早く量産し始めた。そしていつもの通り「K注射器」の通称名が付く。ワクチン接種が始まった日本が8000万個の「K注射器」輸入を打診したと報道されている。

韓国では日本の様々の反応が報道され、日本では韓国の様々な反応が報道されている。朴候補は「特殊注射器を製造している韓国プンリムファーマテック社のチョ・ミヒ副社長とも、今までの苦労話をしながら 日本に関する話も交わしたが、皆さんの意見はどうですか?」と韓国民に挑発的に尋ねた。

K注射器は日本から8000万個、日本にコロナワクチンを供給しているファイザー(Pfyzer)社から1億8000万個の要請があったそうだ。

韓国からは「輸出規制をしておきながら、注射器だけを輸入するの?」、「独島(日本名:竹島)注射器と名前を変えよう」など、呆れるほどの「反日反応」もある。また「生命と直結する問題なので、当然 送るべきだ」、「人の命に関することだから、悩む必要はない」などの常識的な反応もある。

このような反応を誘導した朴候補は1960年生まれの60歳。韓国の地上波テレビ局「MBC」の記者やニュースアンカーとして活躍した後、国会議員となった女性政治家。3選の経歴と所属政党の院内代表の経験もある。

2019年4月からはムン・ジェイン(文在寅)政権で「中小ベンチャー企業部」(部は日本の省に相当)の長官を務めた。昨年、セクハラ問題でパク・ウォンスン(朴元淳)前市長が自殺し、空席となっているソウル市長の補欠選挙に挑戦するため長官を辞任したばかり。

朴候補が長官として最後に取り込んだ仕事が今回のK注射器の米国FDA(食品医薬局)承認であった。中小医療器具メーカ「プンリムファーマテック」社を説得し、サムスン(SAMSUNG)グループの生産技術支援を受け入れるようにしたとの事。そして、その結果、1か月で大量生産を可能にしたとの事が彼女の自慢である。

今回の「K注射器」は日本政府に比べてワクチン確保に遅れをとったと非難されてきた文政権の「体面」を守った。そのためか、数日前、文大統領は急遽自ら「プンリムファーマテック」の工場を訪問していた。

工場の位置する場所も絶好のところだ。地方都市クンサン(群山)であり、日本の半島統治時代、“内地”日本に米を輸出する事で栄えた都市である。韓国の歴史教科書が「日本が朝鮮から米を“收奪”した」と表現しているその歴史の場所だ。

朴候補が公開したこのメーカーの副社長との談話写真とSNS発言は、ソウル市長選挙に王手をかける手段ともなっている。

普通に考えると日本からの発注に対してメーカーに生産余力があれば「K注射器」を供給すればいいだけの話である。わざわざSNSを通じて日本に対してマウントをとっているかのような言い方は日韓関係を巧みに扱う韓国政治家らしい。

この企業に対しては引き合いの情報を漏らした事になり、アップルカー騒動が再現される可能性すらあるので気の毒だ。

韓国の首都ソウルも第二の都市プサン(釜山)も、両方の市長が性的問題で空席になってしまったのは去年。そして、その2人の前市長は革新系の執権与党の政治家だった。

普通なら莫大な補欠選挙の準備費用を発生させた与党が不利になるはずである。しかし、K注射器の件は日本でも有名な「韓国人の自尊心」とも関係があり、ソウル市長選挙では与党の優勢が予測される。

韓国大衆に対しては一昨年、日本からの半導体素材の「輸出管理強化」は、韓国の徴用工判決に報復する「輸出規制」と解釈されてきた。そして、韓国では日本製品の不買運動「NO JAPAN」が勃発。

1年半が過ぎた今、不買運動は逆に韓国のプライドを傷つけている。昨年、任天堂のゲーム「あつまれどうぶつの森」やSONYの新型ゲーム機「PS5」が韓国で大行列を作りながら大ブームを巻き起こした。それに日本のアニメ「鬼滅の刃」も大人気。

また、不買運動の主なターゲットだった日本製品の代表格「TOYOTA」や「UNIQLO」は韓国での不買運動とは関係なく世界のマーケットで勢いを増している。

その中、韓国民に対して“76年前の統治者”日本に、いくら頑張っても”追い越せられない“日本に、”不買運動すらうまく出来ない相手”の日本に対して、韓国が逆に「輸出規制」「輸出管理強化」できるものがやっと現れたのだ。それが今回の「K注射器」だ。

昨年、その可能性を潜めていた「Kコロナ診断キット」は日本に対しては不発で終わった。今年、丁度ワクチンの接種が始まった日本に「K注射器」の大量輸出ができることは「韓国の自尊心」対しては絶好の回復チャンスかもしれない。

それを「反日」や「自己満足」や「政治利用」に使うのか、「日韓友好」や「国際協力」や「普遍的価値」として使うのかは韓国民の選択次第だ。

日本の医療機器メーカー「TERUMO」や「NIPRO」による特殊注射器(J注射器?)の大量生産準備は数か月で終わるだろうし、新しいソウル市長の選挙も4月初旬には終わる。日本にはワクチンの余裕があり、韓国には未だワクチンの余裕がない。

状況は常に変わる。どちらかが困っているなら、お互いが助けるべきである。政治や選挙に利用されてはいけない。
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