(画像提供:wowkorea)
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昨年、韓国の高校教師が同僚教師の支援を得て、同じ高校に通う自身の子供の定期試験の答案を修正したとして、親子共に逮捕摘発される事件があった。

同僚教師までを巻き込んで答案を修正すると言うのは珍しい事例だが、親が教師で、同じ高校に通う子供の成績を上げようと、試験問題を事前に入手して子供に漏らして懲戒処分となったと言うのは、韓国でしばしば耳にする事件だ。

この事件が特異だったのは、同僚教師を巻き込んで答案を修正したと言う悪質さも然る事ながら、露見の切っ掛けがなんとその息子のクラスメートだったことだ。教師の息子の答案をカンニングして同じ回答・答案を作成したにも拘らず、そのクラスメートは自分の点数だけが低過ぎるので採点ミスではないかとの異議を申し立てたことが事件発覚の切っ掛けだった。

つまり当事者の生徒(息子)の関与や認知如何については分からないが、教師(親と親の同僚)が試験終了後に答案を改竄修正したので、同じ内容の回答・答案作成をしたカンニングした生徒が自分の点数が低過ぎるので採点ミスだとの異議申し立てをしたと言う、漫画や冗談のような事件だったのだ。

なお成人においても、海外就学・就業の為の、あるいは国内就職のスペックとして重要な英語の試験で、しばしばカンニングや試験問題の流出等が国際的にも問題視されているのが、韓国の現住所だ。

恐らく日本人の多くにとって疑問なのは、英語の試験や入試本番の大学修学能力試験(修能試験、日本のセンター試験に相当)ではなく、所詮は高校内部の定期試験にも拘らず、何故こうした事件が頻発しているかだろう。

最大の理由は、英語の資格試験や修能試験などの公的な試験では、日本人の想像を超越した水準のカンニング対策が徹底されているからだろう。そしてもう一つが、現在、韓国の大学入試の制度上、大学入試において「高校の定期試験」が合否判定に非常に大きな比重を占めてしまうからだ。

ここで簡潔に韓国の大学入試制度をまとめると、(1)(定員の3割ほどを選抜する)定時募集と、(2)(定員の7割ほどを選抜する)随時募集、の二つに分かれ、前者が日本の大学入試同様の修能と言う筆記試験中心の選考・選抜なのに対して、後者は米国の大学入試を模倣した推薦書と生活記録簿(日本での内申書に相当)中心の選考・選抜なのだ。

そして両者の試験における一次試験合格者に面接試験を科すのが一般的なのだ。日本でも所謂「推薦入試・選抜」での入学者の比率が高くなった所為で、学科面での水準低下が問題視されて、推薦枠の定員の割合を抑えようと大学も社会も動いたのは周知の事だ。

ここで重要なのは、韓国の場合、筆記試験中心の学生選抜の弊害を改めようと米国の大学入試を模倣したかった所為で、日本の推薦入試に相当する随時募集の定員の割合が7割と高くし、必然的に生活記録簿、すなわち高校での定期試験の成績が入試の合否を左右する程、日本人が考える以上に大きな比重を占めるのだ。

また優秀な学生ほど、生活記録簿に差がつかず、結果的に教師との相性に左右されがちな推薦書、また所謂「スペック」が重要になってしまうのだ。

例えばパク・クネ(朴槿恵)前大統領の事実上の「身内」扱いをされたチェ・スンシル(崔順実、現在はチェ・ソウォンに改名)氏の娘は、アジア大会での乗馬代表選出で政治的圧力を加えてもらったり、また金メダルを取れるように財閥サムスンが購入した名馬を貸すなど便宜を図ってもらったりと言った行為がイファ(梨花)女子大入試合格に寄与したとされている。これが2014年のセウォル号沈没事件と並んで朴槿恵前大統領の弾劾・致命傷につながったのは記憶に新しい。

また”タマネギ男”として有名なチョ・グク(曹国)元法相とその妻チョン・ギョンシム(鄭慶心)氏が、高校生の娘が学術論文の筆頭著者になれるように斡旋したり、表彰状を偽造したりして、生活記録簿に業績として記載させ大学や大学院入学に成功させたと言う疑惑は裁判中だ。

こうした所謂「上級国民」の子弟でない場合、最も有効な生活記録簿上の「スペック」は、まさかの「反日活動」なのだ。

竹島(韓国名:独島)に上陸し、韓国人なら誰もが知っている歌「独島、我らが領土」を歌っている姿や、日本大使館前の慰安婦像を背景に日本を糾弾する姿、水曜集会に参加する姿等を動画としてSNSで公開したりすることだ。

また、日本や第三国の関係機関に対して地図作成時には「東海」を記載しろとの要求文書を送りつけたり、ナヌムの家を始めとした慰安婦関連機関で奉仕活動をしたりと言った行動等が、「社会参加」や「リーダーシップ」等との名目で、推薦書・生活記録簿において高得点となってしまうのだ。

こうした事実を知れば、韓国のデモ、就中、反日デモで子供が参加しているのを見て驚き、その「愛国心」や反日の強さを実感させられた等と言う日本人が散見されるが、このような裏事情に対する無知に基づく誤解だと言えよう。

事実、マトモな生徒ならばこうした反日活動参加が推薦書・生活記録簿において有利になるからと割り切っている。ただ若い分、義憤にかられた場合には、ソウル大学の近所に位置するインホン(仁憲)高校の一部生徒らのように、生記簿作成が終わったので勇気を出せるようになったとして、反日偏向教育は止めろと全教組(日本の日教組に相当)系の教師らを批判するデモを起こした事件も有った。

こうして見ると、試験会場での筆記試験のみで合否が判定される日本の入試は、問題が無いわけではないものの、国家や多数派によって定められた「大きな物語・擬制(リーガル・フィクション/ポリティカル・フィクション)」を強要され、また面接や推薦書・生活記録簿と言った教師や担当者の主観によって左右されてしまう入試よりは、意外と公平・公正なものではないかと思われる。

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