その中でも、独自に緊急対応タスクフォース(TF、作業部会)を立ち上げるなど、過剰ともいえる対応に乗り出した韓国の知事がいる。ソウル郊外に位置するキョンギド(京畿道)のイ・ジェミョン(李在明)知事(57)だ。
ソウル特別市と京畿道との関係は、東京都と神奈川県の関係だと言えば分かりやすい。首都圏ならではの人口とそれに伴う経済力を持つ地方自治体である。
来年の次期大統領選挙に出馬すると言われている人物としても名を連ねている李知事。文大統領を継ぐ革新系の執権与党の候補として、今のところ、支持率1位から2位の世論調査の結果である。彼はどんな人物なのだろうか。
李知事は1964年に韓国の南東部・キョンサンプクド(慶尚北道)で生まれた。貧しい家庭に育ち、小学校卒業後は少年工として働きながら検定考試に合格、中学・高校の卒業資格を得た。1986年に韓国の中央大学を卒業し、弁護士となった。
その後、2010年に京畿道ソンナム(城南)市の市長に就任。保守系のパク・クネ(朴槿恵)大統領の弾劾で行われた2017年の大統領選では、所属する革新系政党「共に民主党」の公認候補を選ぶ党内予備選挙に立候補した。ムン・ジェイン(文在寅)現大統領に敗れたものの、2018年から京畿道知事を務めている。
過激な言動がトランプ前米国大統領に似ていることから、韓国メディアは李知事をしばしば「韓国のトランプ」と呼ぶ。
また、これまで、反日的な発言を繰り返しており、最近では、3月31日、日本の教科書に竹島(韓国名・独島)が「日本固有の領土」と記載されたことについて、フェイスブックに「日本が過去を否定し、歴史をわい曲して、自ら孤立を招いた場合、間もなく後進国に転落することになるだろう」と書き込んだ。
そんな李知事が、日本に対して次に反発したのは、日本政府が東京電力福島第1原発の処理水を海洋放出することを決定したことについてだ。
先月25日、フェイスブックで「まず京畿道は、日本の一方的な放流決定を糾弾する」とし、「一方的な放流決定の前に、汚染水処理過程の透明な公開と国際社会の客観的検証が先行されなければならなかった。今からでもこれを受け入れよ」と求めた。
処理水の放出について「1380万人の京畿道民はもちろん、大韓民国の国民の生命と安全を脅かすものだ」と懸念を示した上で、「政府の外交的解決策と同時に、さまざまな方法で積極的に対応していくことが必要な時だ。じっとしている場合ではない」とした。
さらに28日には、「日本の福島汚染水放流、京畿道31の市・郡の共同宣言」とのタイトルで、「1つになって行動しよう」と呼び掛け、「実質的な共同行動に出る」として「市・郡と共に水産物の安全性検査の強化、沿岸放射能物質の現況調査など、総合的な対応に乗り出す予定」と明らかにした。
対日強硬策を強めている李知事だが、反日教育に馴染んでいる若者を中心に支持を得ている。エムブレインパブリック、ケイスタットリサーチ、コリアリサーチ、韓国リサーチの世論調査会社4社が先月29日に発表した「次期大統領にふさわしい人物」を問う世論調査の結果によると、李知事は前週の調査に比べ1ポイント下落したものの、24%でトップの支持を得ている。
彼だけでなく、韓国の政治家は簡単に支持率をアップさせるため、「反日感情」を悪用したくなる誘惑に遭うものだ。彼は既に有力な次期大統領候補となっており、今後も日本に対する言動、政策とともに大統領選に向けた動きが注目される。
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