(画像提供:wowkorea)
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韓国では今年末から「モバイル運転免許証」が試験導入されることになった。スマートフォンにモバイル運転免許証をダウンロードすることで、従来の運転免許証と同様に使用できるという。

スマホの時代に合わせ、オフラインとオンラインの双方で利用できる「統合型身分証明書」として発行される訳だ。モバイル運転免許証の導入は、韓国の行政安全部(部は日本の省に相当)と韓国の警察庁(日本の警視庁に相当)が主体となって進めている事業だ。年末に一部地域で試験運用した後、来年から全国に拡大する計画だという。

韓国政府は2019年10月、「デジタル政府革新推進計画」を発表。偽造や変造、盗難のおそれがあるプラスチックカードから、スマートフォンにダウンロードして使うモバイル身分証明証への移行を進めようとしている。そのために駆使される技術の中には、日本で発明・開発され、世界のIT(情報技術)発展に貢献してきた「QRコード」も含まれている。

その第1段階として、韓国では今年1月からは「モバイル公務員証」の導入が始まった。既存の公務員証と同様に庁舎への出入りなどの認証機能のほか、公務員業務を行う際のシステムへのログイン機能などを備えているという。

デジタル化の流れに早い段階から対応してきた韓国だが、こうした事業の強力な後ろ盾となっているのは、ムン・ジェイン(文在寅)政権が昨年7月に発表した「韓国版ニューディール」の政策とも関係がある。

韓国政府は新型コロナウイルスの感染拡大による危機を克服し、ポストコロナ時代の世界経済をリードするための国家発展戦略としてこの構想を打ち出した。「社会安全網(セーフティーネット)の強化」を基盤に、「デジタルニューディール」、「グリーンニューディール」、「地域均衡ニューディール」を中心軸に据えている。このうち「デジタルニューディール」はデジタルインフラやビッグデータなどに関する産業の育成を掲げている。「モバイル運転免許証」をその代表的な成果として推進したい訳だ。

文政権はこの韓国版ニューディールに、2025年までに160兆ウォン(約14兆円)を投じる計画を発表。デジタルニューディールには、今年は昨年の3倍以上となる12兆7000億ウォンを投じる力の入れようだ。

日本も、菅義偉首相が社会のデジタル化を政権の最重要課題に掲げ、デジタル化の政策を推進しているが、韓国に先行を許している。国連の経済社会局(UNDESA)による「世界電子政府ランキング」で、昨年韓国が2位、日本は14位だったことからもその差が歴然としていることがわかる。

日本が、韓国に比べてこうしたデジタル化の基盤構築に遅れを取ってしまった要因の一つに、「マイナンバー制度」の導入が遅かったことがある。

韓国では既に1968年に日本のマイナンバー制度に当たる「住民登録番号制度」が導入された。当時は個人情報の保護に対する意識が今のような時代ではなかったし、番号による国民情報の統制は北朝鮮とのスパイ戦に苦しまれてきた韓国としては仕方のない選択だった訳だ。

対して日本では、マイナンバー制度が始まったのは2015年10月のことだ。韓国のそれから47年の歳月が流れた後であり、その後もマイナンバーカードはなかなか普及しない。日本の総務省は昨年9月から「マイナポイント事業」を始めるなど、国民にカードの申請を促している。

日本政府は、マイナンバーカードの「オンラインでの本人証明」機能をスマートフォンに搭載することを23年3月に実現すると目標に掲げている。さらにマイナンバーカードと運転免許証の一体化を25年3月に実現しようとしている。

こうした政策を進める上で、韓国での「モバイル運転免許証」の導入事例は大いに参考になっている。欧米に比べると日本と韓国はお互いに似ている社会文化の環境を持っているからだ。実際、運転免許試験の科目・種目から制度・運用方法、運転免許証の形・記載事項・サイズに至るまで、日韓は似ている。長い間、韓国の近代化や社会システムの構築は日本を真似てきたからだ。今度は情報化を先に進めた韓国の経験が、日本に貢献できるようになった。

今、1965年の条約や2015年の合意を反故にする文政権の判断で日韓関係は破局に近い状態である。しかし、半島と列島は相手を、その経験を、大切に活用してきた。そして、お互いを必要としてきた歴史を持っている。東北アジアにおいて、4世紀や7世紀の激変の時代にも、13世紀や16世紀の征服の時代にも、19世紀や20世紀の植民の時代にも、列島と半島はお互いを大切にしてきた。

これらの歴史を否認し、日韓関係の意味をけなしたい声もあるが、新型コロナによるこの激変の時代、日韓関係の大切さは忘れてはいけない。日韓関係を悪用する政治家の厚顔のために、断絶してはいけない。
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