(画像提供:wowkorea)
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日本では1980年の「光州事件」として知られている韓国南西部のクァンジュ(光州)。9日、解体作業中の5階建ての建物が倒壊した。建物の前のバス停に停車していた市内バス1台が下敷きになり、乗客9人が死亡、運転手を含む8人が重傷を負った。

事故を受けて韓国の警察は10日、合同捜査チームを捜査本部に格上げし、事故原因の究明に全力を挙げている。

また、施工業者のHDC現代産業開発のチョン・モンギュ(鄭夢奎:現代グループ創業者・鄭周永氏の甥、現代自動車を育てた鄭世永氏の息子)会長は同日、会見を開き、犠牲者や遺族、負傷者に謝罪。「こうした事故が二度と起こらないように、再発防止策に全力を挙げる」と述べた。

さらにムン・ジェイン(文在寅)大統領は同日、遺憾の意を示し、迅速かつ徹底した事故調査を行うとともに、責任の所在を明らかにするよう指示した。

韓国では、過去にも建物の崩壊事故やビルが傾くトラブルが起きている。1995年には、首都・ソウルにあったサンプン(三豊)百貨店が営業中に突然崩壊。死者502人、負傷者937人、行方不明者6人を出す大惨事となった。この事故は防火シャッター設置のため、建物中央部の柱を一部撤去したことによる強度不足などが原因とされていた。

また、事故の前日に従業員が天井のひび割れに気づき上司に報告。経営陣による緊急会議が開かれたものの、事故当日は通常通り営業が行われていたことが判明。その後、同百貨店の会長と社長ら幹部3人が業務上過失致死傷容疑で逮捕、起訴された。会長は懲役10年6か月の実刑判決を受けたが、2003年に病死した。

2014年5月には、中部のアサン(牙山)で建設中の7階建てのビルが突然、約20度傾いた。けが人はいなかったが、その後の調査では、使用する鉄柱の数を設計より10本少なくするなど、基礎工事の手抜きが原因であることが分かった。

その直前の4月には乗員、乗客、捜索作業員の計307人の死者と5人の行方不明者を出した大型旅客船セウォル号の沈没事故が起きており、ずさんな管理が再び発覚したことで、当時、批判の声が多く上がった。しかも、この事故は政治的に利用され、保守政権が大統領弾劾に崩れ、左派のムン・ジェイン(文在寅)政権が発足するきっかけにもなった。

2017年1月には、ソウル中心部にあるチョンノ(鍾路)区ナグォンドン(楽園洞)のホテルの解体工事現場で建物が崩壊し、生き埋めになった作業員2人が死亡した。その後の調査で、現場での作業は作業計画書に沿っておらず、作業員の経験によって行われていたことが分かり、事故の原因の一つとされた。

最近では2019年7月に、ソウルの副都心として位置づけられているソチョ(瑞草)区のチャムウォンドン(蚕院洞)にある5階建てビルの撤去作業中にビルが崩壊する事故が起きた。

約30トンのがれきが通りがかった車を押しつぶし、女性1人が死亡、3人が負傷した。死亡した女性は婚約者と結婚指輪を見に行くため家を出たところ、事故に巻き込まれた。事故が起きたビルは1996年に建てられたものだったという。今回の事故と極めて類似している。

安全対策の不備による工事現場などでの死傷事故が多発したことを受け、韓国国会はことし1月、労災に関する企業と経営者の罰則を強化した「重大災害法」を成立させた。

同法では、産業現場で労働者が死亡する事故が発生した場合、事業主や経営責任者を1年以上の懲役または10億ウォン(約9800万円)以下の罰金を科すことができる。また、当該企業には50億ウォン以下の罰金が科されることとなっている。しかし、同法の施行が来年1月からのため、今回の崩壊事故には適用されない。

今回の事故でも、現場で安全規則の順守や計画通りに作業が行われているかを確認する現場監理者が常駐していなかったことが明らかになるなど、またしても管理体制の不備が指摘されている。

また、韓国では老朽化した建築物が近年、増加傾向にあり、今回事故が起きた現場周辺も老朽住宅密集地だったという。管理体制の強化とともに、老朽化した建物の徹底した点検も求められる。

地震・台風・大雨・大雪などの天災に苦しみ、自然との戦いに備えてマニュアルや法を作る日本に比べると、韓国はルールを守らない人や政敵を牽制するために法を作っている。

日韓関係を自然環境の違いと社会文化の比較で分析したことで有名なゴン・ヨンデ(権鎔大)氏。彼は著書『あなたは本当に「韓国」を知っている?』で、日本を「天災の国」、韓国を「人災の国」と分析している。権氏の慧眼が身に染みる。

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