旭日旗は現在、韓国人の間では「日本の侵略を受けた歴史の傷を想起させる象徴」とされ、反発が強い。
今回、物議を醸しているのはクーパンが、旭日旗がデザインされた傘やステッカー、ネックレスなどを販売したこと。いずれも海外配送商品で、クーパンによる直接販売ではなく、外部の販売者が商品登録した物だという。
しかし、ネット上では「親日企業だ」、「日本の手先のようなクーパンはもう利用しない」、「金になるのなら戦犯旗でも売るんだなあ」、「売国奴クーパン」などとクーパンに批判の目が向けられている。
クーパンの関係者は「旭日旗が描かれたステッカーや傘などの製品は、直ちに販売中止の措置を取った」と説明している。クーパンをめぐっては、このところ問題が続出している。
17日、ソウル近郊のキョンギド(京畿道)イチョン(利川)にある物流センターで火災が発生。救助活動に当たっていた消防士1人が死亡した。消防の調べで火災当時、スプリンクラーなど消火装置の作動が8分間停止していたことがわかった。現場では誤作動が多いことを受け、日常的に作動しないようにしていたとする従業員の証言も上がっている。
また、昨年から配達員の過労死も相次いで起きており、劣悪な労働環境が社会問題となっている。日本でいう「ブラック企業」問題と同じ現象である。
度重なる問題の発生を受け、とうとう韓国人消費者の怒りが爆発。現在、韓国では「クーパン不買・会員脱退」の動きが広がり始めている。SNS上では、「#クーパン脱退」、「#クーパン不買」などのハッシュタグとともに、クーパンの会員退会画面を撮影した「証明写真」が続々とアップされる事態となっている。また、ツイッターでは、「クーパン脱退」が「大韓民国リアルタイムトレンド」で一時、1位となったという。
クーパンは、当時、米ハーバード大学MBAに在学中だったキム・ボンソク氏が2010年に設立した。14年から始めた、24時間以内に荷物を届ける「ロケット配送」という名のサービスが最大の武器。
クーパンは「韓国版アマゾン」とも呼ばれているが、アマゾンは、当日配送が可能な地域や商品が限られるのに対し、クーパンのロケット配送は、100万種類以上の商品を当日または、翌日未明に韓国全土の消費者に届けることが可能という。
クーパンは、こうした画期的なサービスが韓国人消費者をつかみ、電子商取引市場の拡大の波にも乗って急成長。今や、食料品から日用品、ファッション、コスメ、家電、家具など様々な商品を取り扱う、韓国最大のオンライン小売業者・通信販売の最大手となった。今年3月には、韓国企業として初めてニューヨーク証券取引所に上場を果たした。
結果、クーパンは「LG電子」を抜き、韓国企業で雇用数3位の企業と成長した。1位の「サムスン電子(10万4千人)」や2位の「現代自動車(6万8千人)」に続き、クーパンは4万3千人を雇用している。韓国経済を失業問題から救った企業の一つになったのだ。
これを後押ししたのが韓国系の日本人投資家・孫正義氏だった。最大手になったものの赤字が続いたクーパンに変わらなく投資を続け、米国上場まで導いた。クーパン上場成功は結局、日本のソフトバンク・グループに莫大な投資利益も与え、実績の好転に大きく貢献した。
インターネットやスマホの黎明(れいめい)期にYahooやiPhoneなどを日本に導入させ、日本で革新を起こしてきた孫氏の力量が祖先の国、韓国でも通じていたのだ。クーパンはまた、今月1日からは日本にも進出。東京・品川区をエリアに、通販事業の試験運用を開始した。
急成長の一方で、それに伴うひずみが出てきているクーパン。そんな中、創業者のキム氏は火災が発生した17日の当日、「グローバル経営に専念するため」として韓国クーパンの役員を辞任した。
クーパン側は、これは火災に関係なく、それ以前から決まっていたことだと説明しているが、一部では、韓国内での法的責任を回避するためではないかとの見方も出ている。この発表も、韓国人消費者の怒りを増幅させる要因となっている。
その背景には、「人災」が続く韓国では今年1月、「重大災害法」が可決されたことがあると言われている。産業現場での災害で死亡事故が起きた場合、経営責任者が1年以上の懲役や10億ウォン(約9800万円)以下の罰金など、刑事処罰されることになった。革新系の執権与党が国会議席300席の中、180席を占めている状態で可決された。
顧客離れが続出するという創業以来、最大の危機に、クーパンが今後どう対処していくのか。日本と韓国を誰より知り尽くしている投資家の孫氏は、これからどうするのか。また、在日や韓国系日本人に対する韓国人の根強い差別意識はどうなるのか。
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