日本の朝日新聞において2014年8月5日は恥辱の日だ。「慰安婦問題を考える」と言うタイトルのこの日の特集記事で朝日新聞は「吉田清治」の噓の証言を事実確認せずに報道したことに対する正式謝罪をした。

「吉田清治」は「韓国の済州島で慰安婦狩りをした」と主張した人物だ。朝日新聞は1982年9月2日の朝刊を嚆矢(こうし)として、吉田氏の主張を長期間にわたって繰り返し報道した。

特に1991年8月から1992年1月までは集中して、吉田氏の主張を含む慰安婦関連のくだりを大々的に報道した。元慰安婦キム・ハクスン(金学順)氏の主張が朝日新聞に記事化されたのもまさにこの時期(1991年8月11日)であった。

その後「吉田清治」の主張が嘘だという話が広がって、済州島での現場検証などを通じて「吉田清治」の主張が事実無根なものだと立証された。吉田清治氏はアヘン密輸の前科者として「職業的詐欺師」と呼ばれた。

「済州島で慰安婦狩りをした」と言う嘘の証言は、世間の耳目を引いて自身の著作を販売する目的の下に企画された。吉田証言を前面に立てて「慰安婦強制動員」記事を量産した朝日新聞はファクト(「吉田」が噓の証言をしたこと)をこれ以上無視できず、32年たった2014年8月に「虚偽報道」を認める白旗を掲げたのだ。

それでは、吉田氏の証言が何らの疑いも無く世の中に受け入れられた時期(2014年まで)に、どんなことが繰り広げられたのであろうか?

1991年から1992年に及んだ朝日新聞の大々的な慰安婦関連報道によって、当時の韓国は大騒ぎとなった。日本を非難する韓国国内の世論は次第に沸騰した。当惑した日本政府は実態把握の為に韓国の元慰安婦(16人)に対する聞き取り調査に着手することとなった。

そして調査を進めた日本側は元慰安婦らの証言に信ぴょう性が無いという理由で調査を中断しようとした。ところが韓国政府が「強制性が有ったということのみ認めてくれれば、金銭的補償の要求はしないつもりだ」と言う提案をし、日本は受け入れた。日本はこのようなやり方の「政治的妥協」を通してでも頭の痛い問題から早く抜け出すのがマシだという判断であった。

このように韓国と日本の利害がぴったりと一致して誕生したのがまさに「河野談話」だ。河野談話は「強制連行」と言う表現は入らなかったが、事実上、日本軍や官憲による「強制」のニュアンスを強く漂わす内容となっている。

その後、金大中政権も日本に向かって「過去の歴史問題は清算された。二度と過去の歴史問題を問題提起しないつもりだ」と約束した。

1991年8月から集中的に繰り広げられた朝日新聞の慰安婦関連報道で、元慰安婦らは本格的な訴訟に乗り出した。金学順元慰安婦などは1991年12月に日本で「アジア太平洋韓国人犠牲者補償請求」訴訟を提起し、2003年に最高裁判所で敗訴判決を下された。

1992年には「釜山従軍慰安婦・女子挺身隊請求訴訟」(所謂「関釜裁判」)が提起され、一審(山口地方裁判所)で一部勝訴したが、2003年に最高裁判所で敗訴した。

1993年の「在日韓国人従軍慰安婦補償請求」訴訟も、2003年に最高裁判所で敗訴の結論が出た。1997年の「韓国人女子挺身隊損害賠償訴訟」は一審(静岡地方裁判所)で棄却された。

2000年には韓国と中国の元慰安婦15人が舞台を米国に移して、ワシントン連邦地方裁判所で日本政府を相手に損害賠償請求訴訟を起こした。この時、原告(元慰安婦)らは「慰安婦活動は商業性を帯びたものだった」と主張した。

米国で他国民(韓国人など)が他国(日本)を相手に訴訟をするのは「外国主権者免責法」によって不可能だが、例外的に問題の行為が商業性を帯び、これが米国に影響を及ぼす場合、訴訟が可能なので、このような状況(「慰安婦は商業性を帯びたもの」)が演出されたのだ。この訴訟は棄却された。

加えて、韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)などの慰安婦団体のロビー活動で、慰安婦イシューは国連にまで移って行った。その結果として、「吉田清治」の証言(「慰安婦狩り」)を根拠として1996年に国連人権委員会が日本政府に向けて慰安婦に対する補償を勧告する報告書(「クマラスワミ報告書」)を発表することとなり、1998年にも類似した内容を盛り込んだ報告書(「マクドゥーガル報告書」)を発表した。

「性奴隷」と言う表現が国際的に使用され始めたのはこの時からだ。韓国の慰安婦団体及び米国の韓国系政治家らが主導して成し遂げた「日本糾弾決議」も続々登場した。

カリフォルニア州下院の慰安婦決議案(1999年)、連邦議会の慰安婦決議案(2007年)、ニューヨーク州議会の慰安婦決議案(2013年)、ニュージャージー州議会の慰安婦決議案(2013年)、慰安婦決議案の上下両院通過(2014年)などが相次いだ。

一方、日本と米国での訴訟で相次いで敗訴した一部の元慰安婦が「挺対協」等の団体の支援の下に2006年に韓国の憲法裁判所に「我が国政府が日本に対して慰安婦に関連する措置を要求しないのは違憲」だという趣旨で憲法判断を請求し、2011年に憲法裁判所は原告の側に立ってやることとなった。

このような憲法裁判所の決定に従って、当時のイ・ミョンバク(李明博)大統領は日本に向かって謝罪と補償を強く要求し始め、韓日関係は瞬時に凍り付くこととなった。

日本側から特に反応が無いと、憤激した李明博大統領は独島を訪問し、天皇に関する強硬な発言まですることとなった。そしてこのような李明博政権のスタンスをそのまま引き継いだ朴槿恵政権は任期の初めから慰安婦問題にほぼオールインして、日本を強く圧迫したのだ。

河野談話発表に従って1995年にアジア女性基金が発足し、日本の総理大臣名義で謝罪の手紙と共に、元慰安婦らに一人当たり500万円(約5000万ウォン)ほどの金額が支給された。

アジア女性基金は2007年に解散されたが、韓国の元慰安婦61人が基金を受領した。当時、挺対協等の慰安婦団体は勿論、韓国政府、メディアまでアジア女性基金に対して否定的であった。

韓国人の受領者61人中7人の身元がリークされたが、彼女らは韓国社会から殆ど生き埋め水準の苦痛を味あわされなければならなかった。「挺対協」とほぼ一体となった韓国政府はアジア女性基金を受領しないと宣言した元慰安婦らに対してのみ、一人当たり3100万ウォンの支援金と毎月所定の補助金を支給すると決定した。

おまけに挺対協は「日本のカネを受け取れば公娼」だと言い、元慰安婦らを圧迫した。アジア女性基金の受領者61人中、身元がリークされた7人を除き、残りの54人はアジア女性基金を受領後、韓国政府が与えた支援金まで全て受領した。

台湾出身の元慰安婦13人、フィリピン出身の元慰安婦211人、オランダ出身の元慰安婦79人もアジア女性基金を受領した。オランダやフィリピン出身の慰安婦の場合、中国出身の慰安婦らと同様、「強制連行」された蓋然(がいぜん)性が存在する。

彼女らは太平洋戦争当時、日本の敵国(中国・オランダ)、さもなければ戦場地域(フィリピン)居住の女性として、一線の日本軍が慰安婦生活を強要した可能性が有るという話だ。軍法を違反(敵国女性を脅迫して慰安婦になることを強要)した一部の日本軍は終戦後に軍事裁判を通じて処罰(死刑など)された。

慰安婦全体の規模は2万人前後と推定される。この中で最も多い60%(1万2千人)が日本人女性であり、20%(4千人)ほどが朝鮮人女性だった。残りの20%は台湾、中国、フィリピン、オランダなど出身の女性だ。

この中で朝鮮人女性と台湾人女性は日本国籍保有者だ。すなわち当時の朝鮮人慰安婦や台湾人慰安婦の場合、日本国民だった。

以上までが朝日新聞の虚偽報道謝罪時(2014年8月5日)以前に発生した出来事だ。

吉田清治と言う人物が嘘の証言をして、朝日新聞が事実確認も無く大きく報道したことによって、韓日間の騒動を引き起こし、強制動員の客観的証拠が無い状態で両国が急いで政治的収拾(河野談話)をしたことで、後々まで両国間の対立が続いてきたことが簡単に整理された。

一言で言って、慰安婦問題の決定的な始まりは呆れたことに「ある詐欺師の嘘の証言」であった。慰安婦問題の出発点そのものが2014年の朝日新聞の謝罪により事実上の原因無効になったので、論理的に考えると、朝日新聞の謝罪の時点の以降は、慰安婦問題がこれ以上イシュー化されないことこそ正常だ。

しかし現実は全く違う。慰安婦問題は依然として生命力を持続して生きている。そうするしかないのだろう。後から見たら、一人の詐欺師の嘘の証言の為に、この30年余りの間、韓日両国は勿論、国際的にもその騒動を起こしたという「コメディーのような状況」を今になって誰が容易く受け入れられるのか?皆が余りにも遠くまで来て、今や元に戻れない状況に陥ったのだ。

朝日新聞の謝罪後、2015年には韓日慰安婦合意があった。合意に従って日本は10億円を拠出した。当時、元慰安婦の生存者47人中の36人(77%)が一人当たり1億ウォンほどの金額を受領した。

韓国政府が認定した慰安婦の人数は「238人」だ。2021年現在、この内の生存者は14人だ。韓日間の慰安婦合意にもかかわらず、元慰安婦らは2016年1月と12月に日本政府を相手にそれぞれ訴訟を提起し、被告(日本政府)の無関心(「裁判自体を認めない」)の中で裁判が進行されてきた。

最近になって、徴用及び慰安婦関連の訴訟の判決が二転三転の様相を見せている。この辺で韓国の裁判所に対して尋ねたいことがある。特に原告(元慰安婦・徴用工)の側に立つ裁判に尋ねようと思う。

裁判の判決は具体的物証(客観的証拠)を土台として下されるものだと理解しているのだが、例えば、慰安婦の案件の場合、「強制連行」の客観的証拠を確認して判決を下したのか?もしかして相手が「日本」であれば、客観的証拠が無かろうとも、判決を下すのに全く支障が無いという考えを持っているのではないか?

6月15日、日本政府に対して韓国国内の財産を公開しろと命令したソウル中央地方裁判所は、対日関係の悪化、経済報復などは行政府の固有領域であり、司法府の領域でないと明らかにした。

この発言は即ち、自身らは専ら「法理」のみを問い質して判決をしたという意味であろう。ところがこの場合、より一層、話にならない。何故ならば、彼らの発言通り法理にのみ忠実であったとしたら「国際法優先」「司法自制」「国家免除(主権免除)」などの極めて基礎的な法理もまた当然適用したという話だが、判決は180度正反対に出て来たからだ。相手が「日本」である時は、このような基礎的な法理さえ適用しなくとも支障が無いということなのか?

このような判決は「公正な判決」でもなく、「法理に忠実な判決」でもない。「不公正な判決」であると同時に、「法理に反する判決」に過ぎない。一言で言って、二流の「田舎の民族主義」判決以外の何物でもない。

現在のような韓国の裁判所の「田舎の民族主義」行動態度が繰り返されれば、韓国は韓日外交の破綻、経済への悪影響を越えて、遠からず「国際的な仲間外れの境遇」へ転落するだろう。

※この記事は韓国の保守論客ファンドビルダーさんの寄稿文を日本語に翻訳したものです。韓国メディアには既に韓国語版が公開されています。翻訳の正確さに対する責任は当社にあります。


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