広島県に本社を置く「ツネイシクラフト&ファシリティーズ」が最近 話題となっている。常石造船の支社として、日本初の水素燃料フェリー「ハイドロびんご」を先月 披露(ひろう)した。重さ19トン・82人乗りの小型遊覧船である。最高速度は時速40キロメートルで、同様の大きさの船舶に劣らないスピードである。
1903年 海運業として出発した常石造船は、1917年 木船建造を始めることで造船業に進出した。重量8万2000トン級のばら積み貨物船(バルクキャリア)「Kamsarmax」は、関連市場の占有率で世界1位であり、中国・フィリピンなどに海外生産拠点を置いている。
「ツネイシクラフト&ファシリティーズ」は、2011年3月に発生した東日本大地震をきっかけに 環境にやさしい船舶開発に乗り出した。ここ10年の間 新たな電気モーター船も4隻建造した実績がある。しかし 電気モーター船は大型バッテリーが必要で、乗客を多く乗せることができず走行速度が遅いことが難点である。
その代案として注目されたのが水素燃料である。「水素」は燃焼時 二酸化炭素を排出しない究極の「クリーンエネルギー」と呼ばれているが、技術適用が難しい。船舶用水素燃料エンジンはまだ実用化されていなかった。そこで この企業は、水素と軽油をいっしょに燃やす「混合燃料」方式を選んだ。場所をとる水素を多く貯蔵せずタンクの面積を減らし、乗客のスペースを多く確保するためである。水素なしに軽油だけでも走行できることから、水素供給のインフラが足りていない現在の状況において柔軟な対応が可能となっている。
ただ 水素燃料の旅客船が大量に普及するかについては「もう少し見守らなければならない」というのが現地の業界の見方である。
造船企業たちが水素燃料旅客船の開発に乗り出したのは、日本政府の「脱炭素方針」によるものである。日本・米国・ヨーロッパなどの先進国は、2050年を「脱炭素社会」の目標年度としている。また 日本は2030年に温室ガスの排出量を、2013年対比で46%削減するという計画を立てている。
新型コロナウイルス感染症とともに訪れた2020年代が「新エネルギー革命」の出発点となっている。脱炭素時代を迎え、グローバル生存ゲームが幕を開けた。
韓国 時事アカデミーのチェ・インハン日本経済社会研究所長
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