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旧海軍の輸送船、浮島丸は、日本に徴用され、青森県の下北半島で鉄道敷設工事などに従事していた朝鮮人労働者とその家族ら3735人を乗せ、青森県むつ市の大湊から韓国のプサン(釜山)に向かっていた。しかし、寄港した京都府舞鶴市の下佐波賀沖の舞鶴湾で突如、爆発して沈没した。
日本側の発表では、朝鮮人524人と日本人25人が死亡した。しかし、生存者や犠牲者の遺族らは、死者が数千人に上ると主張している。東京・中目黒の祐天寺には、引き取られていない遺骨が現在も安置されている。
この出来事は、当初、日本では報道されず、翌月、韓国の報道によって明らかになった。
浮島丸が爆発した原因は、米軍が設置した機雷によるものとされているが、韓国や北朝鮮は、今もなお日本側が意図的に爆破したと主張している。韓国人の生存者や遺族ら80人は1992年、日本政府に約28億円の賠償などを求めて集団訴訟を起こした。
2004年11月、最高裁第3小法廷が原告側の上告を棄却する決定を出し、原告側が逆転全面敗訴した大阪高裁判決(2003年5月)が確定した。
北朝鮮の「朝鮮人強制連行被害者・遺族協会」の報道官は、事故(または事件)から75年となった昨年8月、談話を発表した。「われわれは日本が犯した未曾有の朝鮮人大虐殺犯罪を絶対に忘れない」とし、「日本は浮島丸事件の真相を解明して犠牲者や遺族に謝罪し、賠償しなければならない」と求めた。
今年は、北朝鮮の労働新聞が「浮島丸事件」についての記事を掲載し、「故国に戻る喜びを抱き浮島丸に乗った朝鮮の人々を海の中に葬った張本人は日本の軍国主義者たち」などと記した。
一方、舞鶴市とむつ市では、地元住民らでつくる会によって追悼集会が開かれている。京都新聞によると、今年も24日、舞鶴市佐波賀の殉難の碑公園で追悼集会が行われた。新型コロナウイルスの感染対策のため、規模を縮小し、約30人が参列した。
追悼集会は、市民らでつくる「浮島丸殉職者を追悼する会」が1978年に殉難の碑を建立して以降、毎年催している。参列者は、追悼歌が流れる中、舞鶴湾に献花し、平和を願った。
一方、浮島丸事件を扱った映画が、日本、韓国、さらには北朝鮮でそれぞれ制作されている。日本では京都市民のグループが「エイジアン・ブルー 浮島丸サコン」と題する映画を制作し、1995年に上映した。同作品は2004年の韓国・クァンジュ(光州)国際映画祭で参加作品に選ばれた。
韓国では2019年9月にドキュメンタリー映画「浮島号」が公開。北朝鮮は2000年に「ソウルズ・プロテスト」と題した映画が制作された。この2作品は、いずれも日本側による船の爆破だと描かれている。
浮島丸が爆発した原因について、日本と韓国・北朝鮮の見解が異なっている状況は、事件を扱った作品にも反映される形となっている。北朝鮮側からの痛烈な記事もある中、日本では今年も静かな祈りが捧げられた。
「事故」なのか「事件」なのか、歴史の真相は陰謀論と共に錯綜するばかりだ。
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