ムン・ジェイン(文在寅)大統領は6日、ウィズコロナ形式の防疫体系に転換する可能性を示唆。ムン大統領はこの日、大統領府で開かれた会議で「ワクチン接種が進んでいることから、コロナの状況が落ち着いていけば、防疫と日常を調和する新たな防疫体系への転換を模索することができる」と述べた。
韓国のコロナ対策の司令塔「疾病管理庁」のチョン・ウンギョン(鄭銀敬)庁長は7日、10月末からウィズコロナへの切り替え検討も可能との見方を示した。
保健福祉部(部は日本の省に相当)が先月30日から3日間、成人男女1000人を対象に実施した調査では、ウィズコロナへの転換に「賛成する」と答えた人は73.3%に上った。
しかし、大統領府は「ウィズコロナ」への国民の過度な期待を懸念している。韓国紙「ヘラルド経済」によると、大統領府の関係者は同紙のインタビューに「ウィズコロナに移行しても、すぐに2020年以前の水準に戻るわけではない」と述べた。また、「マスクの着用義務が無くなったり、防疫の決まりの順守義務が解除されたりするわけではない」と語った。
大統領府や政府が、ウィズコロナへの移行を慎重に進めているのには理由がある。韓国政府の中央防疫対策本部は5月下旬、ワクチンインセンティブを盛り込んだ「予防接種完了者の日常回復支援案」を発表。
ワクチン接種を促そうと、1回目の接種を終えた市民に限り、屋外でのマスク着用の義務を7月1日から一度は解除したが、感染拡大を受け、首都圏ではわずか4日で撤回。緩和されていた防疫レベルもまた引き上げられた。政府の緩和策により、国民の感染対策への意識が緩んだことは否めない。
7月から感染の勢いは増し、8月には新規感染者が初めて2000人を超えた。現在も首都圏を中心に感染者が多い状況が続いており、7日の新規感染者は2050人と7日ぶりに2000人を上回った。
こうした状況下でも国民から待望する声が高まる「ウィズコロナ」への移行だが、ヘラルド経済の取材に応じた大統領府関係者は「ウィズコロナに対する国民の期待が大きいほど、移行した場合、失望も大きくなり得る」と述べた。
韓国政府は現在のところ、ウィズコロナ移行に伴う具体的な内容を打ち出すまでには至っていない。同紙によると、政府はマスク着用義務を維持したままウィズコロナを宣言し、成功モデルとして評価されているシンガポールの例を参考に検討を進めているとみられるという。
いずれにしても、ワクチンの接種率や感染状況などから慎重に判断することになる。
一方、日本も、ワクチン接種の進展を前提に11月にも行動制限を緩和する方向で政府が検討を進めている。ワクチンを接種済みであることなどを条件に、感染拡大地域でも県をまたぐ移動や大規模のイベントの開催、飲食店での酒類の提供を認める方針だ。
しかし、懸念の声も出ており、日本医師会の中川俊男会長は8日、記者会見で「この時期に発表することで、どうしても(国民の意識が)緩むのではないかと心配だ。(感染)再拡大のきっかけになってはいけない」と述べた。緩和策の提言には「必ずしも反対ではない」としながらも、「今の時期にするのかという問題がある」と語った。
感染が減少傾向になると国民の意識が緩み、再び感染が拡大するというサイクルが繰り返されてきたのは韓国も日本も同様だ。一方で、緊張ある生活が限界点に達しつつあるという現実も日韓同様だ。
隣国とは言え、コロナのまん延の波までも奇妙に酷似している韓国と日本。両国政府とも難しい判断が求められている。
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