食品医薬品安全庁によると昨年、安全基準を超えてダイエット薬を処方した医師の30%が、摘発された後も同じ処方を繰り返して警告措置を受けた。しかし単なる警告措置だけでは実効性がないことから、処罰のレベルを強化すべきだという指摘が出ている。
食欲抑制剤は誤用・乱用時の記憶力低下、早期認知症などの副作用があるうえ依存症問題も深刻で、処方時には医師の注意が必要だ。韓国国内に流通している食欲抑制剤のうちの大部分は神経系を刺激して依存性を持つため、諸外国では麻薬類に分類されている。
今年2月に食品医薬品安全庁が配布した「医療用麻薬類・食欲抑制剤の安全使用基準」によると、食欲抑制剤はBMI30以上の高度肥満患者に短期間の補助療法として使用されなければならない。
さらに、食事療法及び運動療法などの減量療法で効果が表れなかった患者にのみ処方されなければならず、美容目的で処方・使用されてはならないと明示されている。副作用のリスクが高いため、「最後の手段」として用いるべきだということだ。
食品医薬品安全庁が今月22日に発表した分析資料によると、2019年11月1日から2020年10月31日の間に食欲抑制剤を処方された患者は133万人にも上った。
依存症問題も深刻だ。食欲抑制剤の服用期間は4週間以内で、医師が追加処方が必要だと判断した場合、最大3か月まで服用できる。長く服用すればするほど、薬物への耐性や依存が形成され、依存症や乱用の危険性が高まる。
しかし分析資料によると、3か月以上の長期にわたって処方された患者は全体の約40%の52万人にもなる。
カンナム(江南)のある病院で抗うつ症成分を含む食欲抑制剤の処方を受けたパク・ガウォンさん(26)は、食欲抑制剤を服用してから1週間で体重が3キロ減った。1か月後には10kgもやせた。パクさんはフルオキセチン塩酸塩成分を含む薬品を服用した。
薬の服用をやめた後再び体重が増加すると、病院側はパクさんにすでに耐性ができているとして、さらに強い薬を処方した。しかし当時パクさんはbmi20以下の正常体重の範囲内だった。
2020年に大韓民国医学連盟が発表した「薬物誤用・乱用に関する国民認識調査」によると、食欲抑制剤の依存性について知っている人は回答者全体の22.5%に過ぎず、対処方法を知っている人は8.8%にとどまった。
フェンタミン成分を含むダイエット薬ディエタミンは最も代表的な依存性食欲抑制剤だ。この成分を含む食欲抑制剤の処方件数は、全体処方件数の半分ほどの約310万件に達した。フェンタミン系薬品はドーパミンを分泌させて食欲を抑制する。
副作用としては集中力や記憶力の低下、不眠症などがあり、乱用時には呼吸の乱れ、混乱、幻覚、攻撃性、恐怖感があらわれることがある。
ディエタミンを3か月間服用したチョ・ミニョンさん(24)は「薬を服用した時もの忘れがひどく、ついさっきのことも忘れるようなことが繰り返し起こった。同じ薬を飲む友人も似たような症状を経験しているのを見て、念のため副作用について調べたところ、記憶力の低下や若年性認知症の危険があったため服用を中断した」と打ち明けた。
しかし、このような副作用にもかかわらず、食欲抑制剤の処方を簡単に受けられる点が問題となっている。
チョさんは「ある病院で薬の処方を拒否されれば、すぐ隣の病院に行く。一般的に病院を3か所回れば1か所は処方してくれる」と話した。
食品医薬品安全庁は2020年12月に第1種麻薬類医薬品事前通知情報を提供して以来、安全使用基準に準拠(じゅんきょ)せず処方をする医療機関に「警告」などの措置をしてきた。これに対し、これらの薬品を処方した医師1755人のうち、さらに処方を続けた医師567人が警告措置を受けた。
しかし、実質的な処罰規定がなく、制裁を強化しなければならないと指摘されている。
食品医薬品安全庁麻薬管理課の関係者は「誤用・乱用が発生した場合、規制をする方針」とし、「現在は第1段階のモニタリングを行っているが、第2、3段階で追跡観察後、医師免許の停止まで視野に入れている」と語った。
誤用・乱用が確認されれば、医師の麻薬類取り扱い業務停止だけが行われている現在の措置を改善する余地があるという。
関係者は「3か月以上の処方、併用処方および青少年への処方を集中的に取り締まっており、病院に対する行政措置を追加する計画だ」と伝えた。
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