革新系の執権与党「共に民主党」公認イ・ジェミョン(李在明)候補 vs 保守系の最大野党「国民の力」公認ユン・ソギョル(尹錫悦)候補(画像提供:wowkorea)
革新系の執権与党「共に民主党」公認イ・ジェミョン(李在明)候補 vs 保守系の最大野党「国民の力」公認ユン・ソギョル(尹錫悦)候補(画像提供:wowkorea)
来年3月9日に行われる韓国大統領選挙。革新系の執権与党「共に民主党」公認イ・ジェミョン(李在明)候補は25日、ソウル外信記者クラブ主催の討論会に出席し、日韓関係に言及した。

イ候補は「『金大中・小渕宣言』が表明したように、過去を直視し、相互理解と信頼に基づいた関係を発展させていくことにあると思う」と述べた。その上で、「韓日関係改善にも積極的に乗り出す」とし、「韓国の高まった地位と国の格に見合うよう、韓日関係を改めて確立し、実用的なアプローチを通じて未来志向的な韓日関係を構築していきたい」との考えを示した。

イ候補が取り上げた「金大中・小渕宣言」は日本では「日韓共同宣言」との名称で呼ばれる。1998年10月、訪日したキム・デジュン(金大中)大統領が、小渕恵三首相(肩書はいずれも当時)と共に署名した。両国における緊密な友好協力関係を高い次元で発展させ、21世紀に向けた未来志向的な関係を構築することで認識を共有。その後の日韓交流の礎となり、経済や文化、人的交流は活性化した。

しかし、その後2002年に執権した韓国のノ・ムヒョン(盧武鉉)政権、日本の小泉純一郎政権から歴史問題や領土問題などの対立要因が前面に出て、両国の関係は悪化。「失われた20年」とも言われる時をたどることとなった。

イ候補はこれまで日本に対して厳しい発言を続けてきた。イ候補は大統領選への出馬を表明した際、「私は日本を憎んだり、日本国民に反感を持ったりはしていない」と述べる一方、朝鮮半島の分断状況について「侵略国家である日本が分断されるべきだった」と発言した。

今月10日に開かれた討論会では「日本は確固たる、いつでも信用できる友好国なのか」と疑問を投げかけた。これまで示してきた対日観から、日本メディアはイ候補についてしばしば「対日強硬派」と報じていた。

ここに来て「金大中・小渕宣言」について言及したのは、対日強硬姿勢が若干和らいだと見るべきなのだろうか。

1998年の「金大中・小渕宣言」については、イ候補に先立ち対立候補である保守系最大野党「国民の力」公認のユン・ソギョル(尹錫悦、ユン・ソンニョル、ユン・ソクヨル)候補が今月11日に言及している。

ユン候補は同日、同宣言について自身のフェイスブックで「共同宣言には韓日関係を発展的な方向に導けるほぼすべての原則が盛り込まれている」と評価。「この精神と趣旨を継承し、韓日関係を発展させれば、両国の未来は明るいはずだ」とした。その上で、「懸案は容易ではないが、前向きにアプローチすれば、いくらでも解決できる」とし、同宣言を基盤に関係改善を図る考えを示した。 

保守系のユン候補が、革新系のキム・デジュン元大統領の日韓関係の功績を強調する場面は、珍しいことだった。しかし、保守系は日米関係を強調し、革新系は北朝鮮との関係を重視してきたことは変わらない基調である。むしろ、革新系なのに日本との関係を強調していたキム・デジュン元大統領が例外的だったとも言える。

ユン候補は25日に出席したフォーラムでも改めて「日韓関係を未来志向的な関係へと築き上げていく」と決意を示した。また、「国内政治に外交は利用しない」「私は国民を『親日』と『反日』に分けて日韓関係を過去に縛り付けるような過ちは繰り返さない」と従来よりも踏み込んだ発言もした。

大統領選は事実上、イ候補とユン候補の一騎打ちとなるものと見られている。25日発表の世論調査の結果では、保守系ユン候補の支持率が35%、革新系イ候補の支持率が32%と拮抗(きっこう)している。

23年前の「日韓共同宣言」の価値を再発見した候補たち。特にイ候補の「方向旋回」には期待が膨らむ。保守系・革新系のどちらが次期大統領になっても、「金大中・小渕宣言」の相互理解の精神を実践するなら、日韓関係は時間がかかってもいずれ正常に戻る。

その実践は、1965年と2015年の約束を守ることから始まる。そして、その約束を破った政治・外交責任をきちんと追及することで実践が進み、約束を破る権力者が二度と現れないようにすることで完成する。

革新系執権与党のイ候補の「日韓共同宣言」に対する評価と「未来志向的な韓日関係」発言は大歓迎だ。しかし、そのためイ候補はまず、政治信念の同志であるムン・ジェイン(文在寅)大統領の対日政策の過ちを認めないといけない。

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