中国のTPP加盟への動きは、アメリカ主導の対中国包囲網を無力化する目的以外に、台湾の普通国家化阻止という目的を持っている。世界の半導体産業の分野において存在感を高めていっている台湾のTPP加盟は、台湾の「普通国家化」に大きく役立つ。しかしこれは「一つの中国」という原則を固守する中国の立場としては、非常に不快なこととなる。しかもTPP創設メンバーの11か国の中で、中国の原則(一つの中国)に同調して台湾のTPP加盟に拒否権を行使するだけの国家が全くないため、中国はさらに神経をとがらせるしかないのだ。

 結局、中国の立場では、台湾のTPP加盟を防ぐための唯一の方法は、中国自身が先にTPPに加盟して「拒否権」を行使するしかない状況なのだ。このような事情で中国はTPP加盟をこれ以上遅らせるわけにいかず、このような中国の“魂胆”を知る台湾も中国より先に加盟手続きを終わらせるため、すぐに反応したのだ。

 これに反して、韓国が見せているTPPへのスタンスは、明白な原則のない状態でまごついている。本来、韓国はTPPに関心がなかった。そこには理由がある。2008年にアメリカがTPPに加わり、大きな関心を集め始めた。ところがその時は、米韓間にFTA(自由貿易協定)が妥結した直後で、韓国で大きな事件が起きた時期に当たる。すなわち、大多数の韓国人はアメリカ産牛肉が狂牛病を起こすと扇動され、国家レベルで大々的な騒動を起こした時だ。当時の韓国は騒動によって、数か月間、国家機能が事実上まひ状態だった。デマに踊らされて数か月も国家が混乱に陥る事例は、21世紀の文明国家の中で韓国が唯一だろう。狂牛病デモは事実上、反米デモだった。

 韓国政府はこのような「狂牛病」のトラウマのせいで、当時アメリカが主導していたTPPに関心を寄せられる状況ではなかった。その後、韓国はTPPの代案として中国主導のRCEP構築に積極的に関与することになった。

 こうしてTPPに消極的だった韓国は、2013年11月29日に突然、公開的にTPPに対する「関心表明」をした。関心表明は、TPP加盟の最初の段階である。その後、「事前協議」、「加盟意思の公式発表」、「加盟国の承認」という手続きが進んでいく。当時、韓国がTPPへの関心を表明したのは、表面的にはTPP加盟を通じた経済的利得の確保だというが、事実上はアメリカによる相当の圧力が掛かっていたのだ。

 ところがアメリカの圧力より大きく作用したものがあった。それは日本に対する嫉妬だ。2013年4月に日本が加盟国による満場一致での賛成を得てTPP加盟を完了したことは、韓国にとっては大きな刺激になった。韓国の固執的な日本に対する嫉妬心が、再び発動したとみることができる。

 日本に対する嫉妬心とアメリカの圧力により、いったん「関心表明」はしたが、韓国は中国の顔色をうかがい、正式加盟のための次の手続きを踏むことができなかった。

 そしたら今度は9月16日に中国がTPPに加盟すると公式発表したことにより、韓国は「中国の顔色」という足かせから解放され、12月13日に安心して正式発表することになったのだ。1000年以上続いている韓国の小中華思想(=中国の臣下を自認して中国を崇拝する思想)が改めて確認できた瞬間だったとみることができる。

 小中華(=韓国)は中華(=中国)が動かない限り、動かない。中華が動きさえすれば、小中華も初めて動くことになる。韓国はこのように小中華思想が深く根付いた国家なのだ。

 TPPを主導する日本の立場では、中国、台湾、韓国の順に加盟レースを繰り広げる状況は注視する必要がある。日本が取るべきスタンスは「台湾の受容/中国・韓国の拒否」というのが望ましい。

 TSMCなどのグローバルサプライヤーとしての台湾の経済的地位は、どんどん高まっている。同時に台湾は信頼できる自由民主国家だ。さらに台湾はTPPが要求する高いレベルの規定を満たすだけの実力を持っている。台湾はTPPメンバーになる資格が十分にある。

(つづく)

※この記事は韓国の保守論客ファンドビルダー氏の寄稿文を日本語に翻訳したものです。翻訳の正確さに対する責任は当社にあります。

※ファンドビルダー氏:ソウル出身。高麗大学卒。韓国人が幼い頃から学び、聞き、見てきた日本関連情報の大部分が歪曲、誇張、捏造などで汚染された状態であることを残念に思い、真実を知らせる趣旨でコラムを書いている。慰安婦、徴用、外交・安保、経済など様々な分野を扱う。

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