19年7月、青瓦台で文大統領(左)が検事総長に抜てきした尹氏に任命状を手渡し、懇談会場に移動している=(聯合ニュース)
19年7月、青瓦台で文大統領(左)が検事総長に抜てきした尹氏に任命状を手渡し、懇談会場に移動している=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領が10日、文政権で検事総長を務めた保守系最大野党「国民の力」の大統領選(3月9日投開票)候補、尹錫悦(ユン・ソギョル)氏を公に批判し、終盤に差し掛かった大統領選に影響を与えるか注目される。

 尹氏は2019年、検事総長に抜てきされたが、文政権と対立。21年に任期途中で辞任した。

 文大統領は政治的中立性を保つため、大統領選を巡って沈黙を続けてきたが、尹氏が大統領に就任すれば前政権の「積弊(積み重なった弊害)」を捜査すると述べたことに激怒し、選挙構図が革新系与党「共に民主党」候補、李在明(イ・ジェミョン)氏と尹氏の対決から文大統領と尹氏の対決に移った格好だ。

 共に民主党は与党陣営の結集を期待し、尹氏への攻勢を強める構えだ。一方、国民の力は現職大統領による「選挙介入」と強く反発している。

 発端になったのは尹氏が9日に掲載された中央日報とのインタビューで前政権の積弊を捜査するとした発言だった。尹氏は「(文)政権が検察を利用し、どれほど多くの犯罪を犯したのか。それ相応の責任を取らなければならない」とも述べた。

 これに対し、文大統領は10日の秘書官らとの会議で、「(文政権で尹氏が)ソウル中央地検長、検事総長を務めていた時は現政権の積弊を見ないふりをしていたというのか」として、「現政権を根拠もなく積弊捜査の対象、違法に追いやったことに強い怒りを表す」と述べ、謝罪を要求した。

 現職大統領が野党の大統領候補に「強い怒り」を表し、謝罪を要求するのは異例。

 青瓦台(大統領府)は尹氏を巡る疑惑が取り沙汰されても選挙介入を懸念し、言及を避けてきた。だが、尹氏が現政権を「積弊政権」と規定したのは、朴槿恵(パク・クネ)前政権の積弊清算を掲げて発足した文政権の本質を否定するものと見なし、強力に対応したものとみられる。

 国民の力は即座に反発した。選挙対策本部の首席報道官は文大統領の謝罪要求について、「不当な選挙介入であり、遺憾の意を表す」との論評を出した。同党の李俊錫(イ・ジュンソク)代表もフェイスブックに「野党候補を傷つけようとする行為は明白な選挙介入に該当する」と批判した。

 共に民主党は尹氏への攻勢を強めている。選対の首席報道官は会見で、尹氏の発言を「政治報復の宣言」と指摘。文大統領の側近で、選対の政務室長を務める尹建永(ユン・ゴニョン)氏は「公開的な政治報復の宣言であり、歴代大統領選で例のない事件」として、「常識のない妄言で傲慢極まりない」と非難した。


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